2020年に向け新たなビジネス機会創出を支援するマイクロソフトIT Leaders xChange サミット 2015 Springレポート

2015年5月19日、日本マイクロソフト主催の「IT Leaders xChange サミット 2015 Spring」が開催された。IoTと2020年に向けたビジネス創出をテーマに、大手企業のCIOやマイクロソフト本社のキーマンから、数々の貴重な提言がなされた。

» 2015年06月30日 10時00分 公開
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 2015年5月19日、日本マイクロソフト主催の「IT Leaders xChange サミット 2015 Spring:2020年を目指した社会とテクノロジーの飛躍に向けて」が開催された。企業のCIOや、IT部門のマネジャーなど企業のリーダー層を対象に、2014年10月に開催された第1回に続き、今回が2回目となる。

 マイクロソフトのイベントというと、技術者向けのイメージが強いが、本サミットには企業のマネジメント層が約150人が来場し、セッションの内容に熱心に耳を傾けたり、また参加者同士の交流を積極的に図っていた。

エンタープライズへの取り組みをさらに強化

日本マイクロソフト
執行役専務
エンタープライズビジネス担当
小原琢哉氏

 冒頭の開会挨拶には、日本マイクロソフト執行役専務 エンタープライズビジネス担当の小原琢哉氏が登壇した。

 「昨年10月に、米本社CEOのサティア・ナデラを招いて第1回 IT Leaders xChange サミットを開催したが、それから今日までの間に、マイクロソフトのビジネスにはさまざまなアップデートがあった。その内容を紹介したい」

 近年の最大のイベントとして同氏は、2015年1月に発表された「Windows 10」を挙げる。デバイス種別を問わず統一されたユーザー体験を横断的に提供できるOSとして大々的に発表されたWindows 10だが、セキュリティ機能を大幅に強化したことで、エンタープライズ向けクライアントOSとしても高い注目を集めている。

 また、Office 365とCRM Onlineが日本データセンターでの提供を開始し、これにMicrosoft Azureを加えた「エンタープライズ向けクラウド3本柱」のすべてが日本データセンターから提供される体制が整った点も強調。そのほかにも、サイバークライムセンター日本サテライトオフィスの開設によるセキュリティ対策支援の強化、Skype for Businessのサービス提供開始など、ここ半年間でエンタープライズ向けサービスが強化されている。

ソニー
業務執行役員
SVP/CIO
堺文亮氏

 続いて、IT Leaders xChange会長であるソニーの業務執行役員 SVP/CIO 堺文亮氏が挨拶した。

 「かつてITの役目はバックオフィスを支えることでしたが、今やITが新たなビジネス機会を創出する時代となった。皆さんの会社が今後ITを使ってどんなチャレンジに乗り出すのかヒントを得る、またこのような場で横のつながりを持つなどして、ITインダストリーが発展することを願っている」

ヤマトホールディングス社長が語る「ITの価値」「CIOの役割」

ヤマトホールディングス
代表取締役社長
社長執行役員
山内雅喜氏

 基調講演にはヤマトホールディングス代表取締役社長 社長執行役員 山内雅喜氏が登壇し、「"クロネコヤマト"の満足創造経営」と題して、同社におけるIT活用戦略やCIOに期待することなど経営者の目線から語った。

 「弊社の宅急便サービスは来年1月で40周年を迎え、日本全国で年間約16億個、まもなく17億個の取り扱いになろうとしている。1日にすると約450万個から500万個を取り扱うなか、"サービスが先、利益は後"の理念のもと顧客満足度の向上に日々努めている。宅急便がこれほどまでにお客さまの日常生活に根付いたサービスとして成長した理由は、まずサービスを分かりやすく商品化したこと。そして高品質にこだわったこと。そして利便性を徹底的に追求したこと。この3つの方針を貫いたことにある」(山内氏)

 これらの方針を具現化するための主な施策が、「全国ネットワークの整備」「自社社員による集配」、そして「ITの活用」の3つ。中でもIT活用に関しては、早くから業務のシステム化に取り組み、社内基幹システム「NEKOシステム」の7次に渡る刷新の過程ではシステムが担う役割も少しずつ変化してきた。

 「業務効率化はもちろん、宅急便の成長とともにシステムの役割も徐々に変わってきた。当初はサービス品質の担保が主な課題で、システムにより"品質の見える化と共有"を実現してきたが、ここ10年ほどは次のステップとして、サービスの利便性を高めるためのIT活用を追求している」(山内氏)

 また、ビジネスに真に貢献するITを実現するために、常に2つの視点を心掛けているという。ひとつは、「第一線の現場における使い勝手」。「現場のセールスドライバーにとって使いやすく、仕事の効率が上がり、ひいてはお客さまに提供するサービス品質の向上に貢献できるシステムでなければ意味がない」と指摘する。

 「企業のIT担当者は、どうしても技術の観点からシステムを考えがちだが、少なくとも流通業界では、業務の第一線の現場で使えないシステムはいくら開発しても使えない。ITは現場で使われてこそ価値が発揮できるのでCIOもITだけの視点にとらわれることなく、常に現場と経営の間を行き来する広い視野持ってほしい」(山内氏)

 そしてもうひとつ重要な観点として挙げたのが、「経営の方向性や理念に対する理解」。CIOは経営者と密にコミュニケーションを取りながら、経営の方向性や理念を深く理解し、それに沿ったシステムを実現していく必要がある。

 山内氏は、「CIOは経営と現場双方の価値観を深く理解し、この両者を高い次元で両立させたシステムの実現を目指す必要がある。場合によっては、IT担当者がテクノロジーに過度に傾倒しすぎることにブレーキを掛ける役割も求められるだろう」とCIOへ望むことで締めくくった。

2020年に向けITで新たなビジネス創出にチャレンジ

 「ITが実現する2020年に向けたビジネス機会」をテーマに行われたパネルディスカッションは日本航空常務執行役員 CIO IT企画本部長 石関佳志氏、ブリヂストン 常務執行役員 BIOC事務総長(オリンピック室担当)兼 CIO・IT担当 武濤雄一郎氏、内閣サイバーセキュリティセンター 副センター長 内閣審議官 谷脇康彦氏、モデレータとしてジャーナリストの福島敦子氏を交えて進められた。

写真右から内閣サイバーセキュリティセンター谷脇康彦氏、ブリヂストン 武濤雄一郎氏、日本航空常務執行役員 石関佳志氏、ジャーナリスト 福島敦子氏

 日本航空、ブリヂストンともに、日本の大企業としては珍しく「攻めのIT」に積極的に取り組む企業として知られている。例えば日本航空では職員にiPadを配布して、あらゆる業務で情報活用を推進するとともに、ウェアラブル端末も業界でいち早く導入して注目を集めている。

日本航空
常務執行役員 CIO IT企画本部長
石関佳志氏

 「ホノルル空港の整備部門でGoogle Glass、羽田空港のグランドスタッフ業務にスマートウォッチを導入したりといった新たな取り組みにチャレンジしている。また、マイクロソフトが先日発表された"HoloLens"の導入も検討している。こうした先進的な取り組みには失敗も多いが、チャレンジなくしては新たな価値も生まれないので、社員には決して失敗を恐れることなく果敢にチャレンジすることを推奨している」(石関氏)

 ブリヂストンも、IoT技術を活用した先進的な取り組みに、業界に先駆けていち早く乗り出している。

 「海外の鉱山などで資材を運搬するコンベヤベルト装置にセンサーを取り付け、ベルトの摩耗状態を遠隔から監視できるコンベヤベルト摩耗モニタリングシステムと鉱山オペレーション支援ソフトウェア"MONITRIX(モニトリクス)"を開発。これにより突然の操業停止による機会損失を削減し、作業の生産性向上と効率化を支援している。既にオーストラリアの鉱山でテスト運用を始めており、大きな成果を上げている」(武濤氏)

 また両社とも2020年に開催される東京オリンピックに向け、今からさまざまな施策を検討しているという。特に、IOC(国際オリンピック委員会)の公式パートナーであるブリヂストンは、2020年までにIoT技術を利用した先進サービスの実用化を目指している。

ブリヂストン
常務執行役員
BIOC事務総長(オリンピック室担当)兼 CIO・IT担当
武濤雄一郎氏

 「2020年に向けては、東京都など関係機関が、専用レーンで走るバスサービスや、シェアサイクルなど自転車を活用したサービスの計画を検討しておられる。当社はタイヤ、自転車といった製品を使い、かつこれらにセンサーなどのIT機能を付加した、新たなサービスを含めて、これらの計画に貢献できないかと考えている。2020年さらにその先をにらむと、タイヤにセンサーをつけてそれをネットワークでつなげ、タイヤの摩耗状態や路面の状況を監視できる“CAIS”と呼ぶ現在研究開発中の技術を含め、タイヤとITを併せた技術が、将来の交通インフラに役立つのではないかと考えている。これらの技術を利用すると安全なのはもちろん、タイヤを無駄なく使用するため経費が削減できるなどのメリットもある」(武濤氏)

 また日本航空でも2020年に向け、ITを活用した外国人観光客向けおもてなしサービスの取り組みを始めている。

 「機内でWi-Fi接続サービスを提供するだけではなく、旅の出発点となる空港や、日本の地に降り立った後に滞在するホテル、観光地も含め、トータルでのおもてなしサービスを提供していきたいと考えている。具体的には、日本国内で無料Wi-Fiサービスの提供なども始めている」(石関氏)

 その一方で、ITやネット技術がフル活用されることが当たり前になった今日のオリンピックにおいては、サイバーセキュリティをはじめとして、かつては見られなかった新たな課題も生じつつあると谷脇氏は指摘する。

内閣サイバーセキュリティセンター
副センター長 内閣審議官
谷脇康彦氏

 「ロンドンオリンピックは、コンテンツのデジタル配信を初めて行った"世界初のデジタルオリンピック"になった。開催期間中、公式サイトは2億件以上の攻撃を受け、1秒間に1万回以上のDOS攻撃が仕掛けれ、電力施設に対するサイバー攻撃予告もあった。結果的には事なきを得たが、オリンピックのサイバーセキュリティを考える上では、会場や施設だけでなく、電力や通信、航空といった周辺インフラを含めて、サイバー攻撃への対処に官民挙げて取り組んでいく必要がある」(谷脇氏)

 また、今後のIT活用を考える上での重要ポイントとして「人材育成」を挙げた。

 「単にITシステムを作るだけでなく、"そもそもどんな課題が存在していて、その解決のためにITをどう活用できるか"を提案できる人材が求められている。そのためには、ITの知識はもちろんのこと、場合によっては経済学や社会心理学の知識などにも長けた"ハイブリッド型人材"が今後さらに必要とされるのではないだろうか」(谷脇氏)

ジャーナリスト
福島敦子氏

最後に福島氏は「2020年に開催される東京オリンピックは決してアスリートだけの祭典ではありません。世界最大のイベントを開催できることは日本企業にとってイノベーションを起こし、新たな価値を生み、企業の持続的成長につなげていく大きなチャンスでもあります。2020年に向けて最新のITを積極果敢に活用して日本発の魅力ある製品、サービスあるいはソリューションが数多く生まれて行くことを期待しています」とエールを贈った。

マイクロソフトのテクノロジーが実現するIoTビジネス

マイクロソフトコーポレーション
コーポレートバイスプレジデント
クラウド&エンタープライズマーケティンググループ
沼本健氏

 マイクロソフトコーポレーション コーポレートバイスプレジデント クラウド&エンタープライズマーケティンググループ 沼本健氏が「IoTの活用で創造するビジネスインパクト」と題したセッションで、マイクロソフトが提供するIoTソリューションの紹介を行った。

 沼本氏は、ビジネスに真にインパクトを及ぼすIoTソリューションの条件として、「モノ」「コネクティビティ」「データ」「アナリティクス」の4つの要素がそろっていることを挙げる。

 「これらの要素に個別に対応する製品やサービスをIoTソリューションとして提供するベンダーは多いが、これら4つの要素をすべて網羅できるベンダーは極めて少ない。その点、マイクロソフトはオンプレミスとクラウドの双方に渡り、IoTに最適化した多様な製品・サービスを提供することで、1社でIoTのほぼすべての要素を満たすことができる」(沼本氏)

オムロン
インダストリアルオートメーションビジネカンパニー社 商品事業本部 コントローラ事業部長
竹内勝氏

 その好例として、オムロンによるIoTソリューション事例の紹介が行われた。現在、同社草津工場の電子部品表面実装ラインにはコントローラが取り付けられており、そこから上がってくるデータはSQL Serverに蓄積され、Excelによるビッグデータ分析が行われている。この仕組みを構築するにあたっては、日本マイクロソフトが全面的な支援を提供した。

 オムロン インダストリアルオートメーションビジネカンパニー社 商品事業本部 コントローラ事業部長 竹内勝氏によれば、この仕組みを使って、これまでベテラン社員しか知らなかった生産性向上のノウハウを広く可視化・共有できたことで、生産性が30%向上したという。

 「これほど目に見える効果が上がるとは、現場にとっても目から鱗でした。今後はさらにこの仕組みを発展させ、不良の予兆を検出しての未然防止や、同様の仕組みを他のラインや工場にも展開できればと思っている」(竹内氏)

日本マイクロソフト
クラウド&ソリューションビジネス統括本部
平井昌人氏

 さらに、日本マイクロソフト クラウド&ソリューションビジネス統括本部 平井昌人氏によるIoTアプリケーションのデモも行われた。工場の生産ラインから不良品を除去するスマホアプリから、結果データを2.5秒ごとにMicrosoft Azureのクラウド環境上の「IoTゲートウェイ」に送信。Microsot Azure側では、受け取ったデータにさまざまな付加情報を付けた上でダッシュボード画面上にリアルタイム表示させ、さらにマシンラーニングのクラウドサービスを使った不良率の将来予測をはじきだす。

 平井氏は、こうしたデモアプリケーションの機能を1つ1つ紹介しながら、「エンドポイントのデバイスからクラウド上のデータ管理基盤、さらにはマシンラーニングの処理基盤まで、マイクロソフトはIoTソリューションに必要な要素を全方位でカバーしている」と、マイクロソフトが持つIoTソリューションの網羅性を強調し講演を締めくくった。

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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2015年7月21日

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