企業のエグゼクティブは「デジタル化によるビジネス変革」をどうリードしていくべきか?IT Leaders xChange サミット 2016 Springレポート

2016年3月3日、「IT Leaders xChange サミット 2016 Spring」(日本マイクロソフト主催)が開催された。企業のCIOや情報システム部門の責任者など、ITでビジネスをリードするエグゼクティブが多数の参加し、もはや止めようがないビジネスのデジタル化について、パネルやセッションを通して活発な討議を行った。

» 2016年04月19日 10時00分 公開
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 2016年3月3日、日本マイクロソフト主催の「IT Leaders xChange サミット 2016 Spring」が開催された。テーマは「デジタル化によるビジネストランスフォーメーション――日本企業はデジタル化による破壊的変革にどう立ち向かうのか」。企業のCIOや情報システム部門の責任者など、ITでビジネスをリードするエグゼクティブが多数の参加し、各セッションを熱心に聞き、参加者同士の交流にも、積極的に取り組む姿が印象的だった。

ITによるビジネス変革を3分野で支援

日本マイクロソフト執行役専務
エンタープライズビジネス担当
小原琢哉氏

 オープニングには、日本マイクロソフト執行役 専務 エンタープライズビジネス担当 小原琢哉氏が登壇し、マイクロソフトが掲げるビジネス戦略について説明した。

 「私たちのミッションは、地球上すべての個人と組織の能力を向上して、より多くのことを達成できるための支援をすること。そのために現在、"インテリジェントクラウド""プロダクティビティとビジネスプロセス""革新的なパーソナルコンピューティング"の3つの分野に重点的に投資している」


ソニー 執行役員コーポレートエグゼクティブ CIO 堺文亮氏

 IT Leaders xChangeの発足当初から会長を務めてきたソニー 執行役員コーポレートエグゼクティブ CIO 堺文亮氏から、日本航空 常務執行役員 石関佳志氏へと会長がバトンタッチされた。両社ともITによるビジネス変革に積極的に取り組んでおり「デジタル化によるビジネストランスフォーメーション」を推進している。

 「今後もITのビジネス貢献についてぜひ皆さんとともに考えていきたい。ITの重要性は増していくだろう。クラウドを活用した効率化、IoTやアナリティクスなども積極的に取り入れていきたい」(堺氏)

日本航空 常務執行役員 石関佳志氏

 「お客様により良いサービスを提供する、社員がより良いサービスを提供できる環境を作ってゆく。そのためにデジタル化を進め、HoloLensやSurface Hubなど新しいテクノロジーにも取り組んでいる。先進テクノロジーを研究し社会に還元していくマイクロソフトの姿勢には、とても共感を覚える。今後、こうしたテクノロジーを社会に還元するために、弊社も貢献していきたいと考えている。」(石関氏)

最強棋士が語る「決断力」とは

棋士 羽生善治氏

 基調講演には棋士の羽生善治氏が登壇し、「決断力」と題した講演を行った。棋士は対局中、ただ手を読むだけでなく「直感」や「大局観」も用いながら局面ごとの決断を下していくという。考え得る無数の可能性の中から、まずは直感で2ないし3の選択肢にまで絞り込む。その上で今後の打ち手を細かく読んでいくと同時に、対局全体の流れを大局観を用いて俯瞰することで、手を読む行為を減らして最善手へ「ショートカット」するのだという。

 また羽生氏は、ITが将棋界に与えてきた影響の大きさについても次のように述べる。

 「棋譜のデータベースができたことで、誰もが情報の分析が行えるようになり、ネット対局が普及することで地域間格差がなくなり、地方から強い人が出てくるようになった。しかし一方で、誰もが情報へ簡単にアクセスできることで、オリジナリティを確立するのが難しくもなった」

 また近年、ハードウェアの演算能力の向上を背景により多くの手が読めるようになり、プロ棋士と互角に戦えるだけの実力を持つ将棋ソフトについては、「今後は深層学習といった人工知能技術を取り込んでいくことで、人間が用いる直感のような能力も獲得していくことだろう。私自身もこうした技術にキャッチアップしていくと同時に、自身のスタイルも見失わないよう肝に銘じている」と話した。

「デジタルディスラプター」の台頭に日本企業はどう立ち向かうべきか?

 パネルディスカッションには、三菱東京UFJ銀行 専務取締役 村林聡氏、ヤンマー 執行役員 矢島孝應氏、ローソン 専務執行役員 加茂正治氏がパネリストとして登壇し、モデレータのジャーナリスト 福島敦子氏の進行により、「日本企業の逆襲、デジタル化と創造的破壊に挑む」というテーマで議論を展開した。

写真右からローソン 加茂正治氏、ヤンマー 矢島孝應氏、三菱東京UFJ銀行 村林聡氏、ジャーナリスト 福島敦子氏

 デジタル化の大きな波がビジネスの世界に押し寄せる中、北米ではUberやAirbnbのように、先進ITテクノロジーを武器に伝統的な既存ビジネスの優位性を脅かす新たなプレイヤーが台頭してきている。こうした企業は創造的破壊者、いわゆる「ディスラプター」と呼ばれ、日本でも大きな影響力を行使しつつあるが、日本企業はこうした流れにどう立ち向かうべきなのか。

三菱東京UFJ銀行 専務取締役
村林聡氏

 村林氏は、伝統的な銀行のビジネスが新興企業に侵食されつつある現状に危機感を持ち、自らがディスラプターになるべく取り組んでいる。「決済サービスは、これまでは銀行やクレジットカード会社が独占してきたが、今日ではFintechに代表されるように、IT技術を駆使した新興の金融サービス企業が台頭してきている。そんな中で銀行が存在感を維持し続けるには、自社の決済サービスをクローズドな環境で提供するだけではなく、他のサービスからAPI経由で銀行の決済サービスを呼び出せるような仕組みを作っていく必要がある」と大胆にビジネスの在り方を変えていく必要性を説く。

ヤンマー 執行役員 矢島孝應氏

 一方矢島氏は、「社内のどの組織がデジタル化の取り組みを牽引するべきなのか?」という課題について、次のように話す。

 「企業は組織や職種が細分化されるにつれ、ややもすると部門に特化した仕事の遂行が目的化し、全社で横串をさした活動が難しくなってくる。デジタル化というのはまさに全社で横串をさして、新たなビジネスにチャレンジする起業のような取り組みではないだろうか。従って企業においてITを担当する者に課せられた役目は、起業家の意欲や能力を持った人材が、職能や組織をまたがって活躍できるような環境を整えることにあると考えている」

ローソン 専務執行役員 加茂正治氏

 また加茂氏は、今後のコンビニ業界にデジタル技術が及ぼす影響について、次のように述べる。

 「店舗内にカメラやセンサーを設置して、顧客の導線やスタッフの動きを分析して効率化や、よりよい店舗作りに生かす。RFIDの導入で倉庫や工場の自動化をさらに進めるなど、デジタル技術活用の可能性は尽きない。コンビニエンスストアはこれまで、さまざまな業態を統合しながら発展してきたが、今後より広い業態を取り込んでいくためにも、デジタル技術による省力化とオペレーションの見直しがますます重要になってくるだろう」

Office 365、Windows10による新しいコミュニケーション基盤でトランスフォーメーションに挑むベネッセ

ベネッセホールディングス
システム開発管理部
グループイントラプロジェクト
PJリーダー 植田省司氏

 ベネッセホールディングス システム開発管理部 グループイントラプロジェクト PJリーダー 植田省司氏が登壇し、ファシリテーターを務めた日本マイクロソフト 業務執行役員 エバンジェリスト 西脇資哲氏とともに「ビジネストランスフォーメーションを支えるコミュニケーション基盤」と題した講演を行った。

 ベネッセホールディングスでは現在、ビジネス戦略の大胆な転換に取り組んでいるという。

 「ベネッセは進研ゼミをはじめとする教育ビジネスのイメージが強いかもしれないが、シニア・介護・グローバルタレント育成などのビジネスの比率を上げていくという戦略を打ち出している。その実現には、グループを横断し情報共有が可能なグループ共通のインフラ・イントラの整備が不可欠だ」

 その目玉ともいえる施策がGoogle Apps環境をOffice 365へと移行し、かつグループ全体に展開することだった。「Officeバージョンアップ作業の簡略化」「TCO削減」「クラウド時代のITガバナンスの実現」の3つの要件を満たす新たなコミュニケーション基盤を実現する手段として、Office 365、Office 365 ProPlus、Windows 10、Enterprise Mobility Suiteの採用を決断。約1万ユーザーのアカウントデータを「クラウド to クラウド」で移管するという、国内では例のないプロジェクトに挑んだ。

 移行プロジェクトは、マイクロソフトと移行事例を持っていたソフトバンクテクノロジーの支援の下、入念な準備と事前検証作業を経て、2015年9月に無事完了した。現在では、SharePointOnlineの定着・活用をめざすとともに、「現在はオンプレミスが中心の社外向けサービスの基盤も、今後はMicrosoft Azureのクラウド環境上に移行していきたい」(植田氏)

創造性を発揮するためのワークスタイル変革には何が必要か?

岡村製作所 マーケティング本部
ソリューション戦略部
未来企画室 室長 遅野井宏氏

 岡村製作所 マーケティング本部 ソリューション戦略部 未来企画室 室長 遅野井宏氏が登壇し、日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 澤円氏とともに「ビジネスを創造するワークスタイル」と題した講演を行った。

 「マイクロソフトは現在、"クラウドファースト""モバイルファースト"を合言葉に、エンタープライズのお客様に"いつでも、どこでも活躍できる環境"を提供すべく、ビジネスモデルの変革に取り組んでいる」

 冒頭で澤氏はこう述べるとともに、日本マイクロソフトも自ら自社のワークスタイル変革に積極的に取り組んでいることを紹介する。その主たる取り組みのひとつが、オフィス環境の刷新だ。広々としたスペースの中を従業員が自由に行き来し、従業員同士の偶発的なコミュニケーションがあちこちで生まれるような空間デザインを採用している。

 遅野井氏は、こうしたオフィス環境をITツールと社内制度・ルールと組み合わせ、三位一体で取り組みを進めることがワークスタイル変革には不可欠だと話す。

 「リアルタイムなコミュニケーションと非同期なコミュニケーション、対面コミュニケーションと遠隔コミュニケーション、それぞれの状況やニーズに適したコミュニケーション手段を、ITとオフィス環境をうまく使って提供することが重要。それによって従業員のコミュニケーションと行動の様式が変わっていくことこそが、ワークスタイル変革である」

 また本セッションの最後には、Windows 10を搭載したWindows PhoneやSurface Hubのデモや、マイクロソフトが提供する注目のARデバイスMicrosoft HoloLensの紹介も行われ、参加者から高い注目を集めていた。

クラウドを武器に新ビジネスを切り拓いていくイノベーターたち

ZMP 代表取締役社長 谷口恒氏

 ZMP 代表取締役社長 谷口恒氏、bitFlyer 代表取締役 加納裕三氏、Eyes, JAPAN 代表取締役 山寺純氏が登壇し、日本マイクロソフト デベロッパーエバンジェリズム統括本部 部長 エバンジェリスト 砂金信一郎氏とともに「Intelligent Cloudで創造する革新的ビジネス」と題した講演を行った。

 ZMPは画像認識と人工知能の技術をベースに、自動車の自動運転技術や自律飛行ドローンなどの研究開発を行っている。「画像認識のための人工知能のプラットフォームとして、あるいはドローンから得られた画像およびセンサーの計量データの解析のためにクラウド技術を活用し、これまでにない斬新なサービスを提供している」(谷口氏)

bitFlyer 代表取締役 加納裕三氏

 bitFlyerは仮想通貨に関するサービスを開発・提供するスタートアップ企業。Microsoft AzureのIaaSおよびPaaSを使い、高信頼性かつセキュアなサービス基盤を実現している。「ビットコインの取り扱いにはセキュリティーが極めて重要だが、Microsoft AzureのPaaSはセキュリティレイヤーも提供しており、弊社の要件にまさに合致した」(加納氏)


Eyes, JAPAN 代表取締役 山寺純氏 当日はサンフランシスコに出張中で、ロボットの遠隔インタフェースを通じての参加。

 Eyes, JAPANは、山寺氏が中心となり会津若松市で1995年に創業したベンチャー企業。近年は医療IT分野で広く名が知られており、「現在、唾液中のたんぱく質を解析して超早期のがん発見するプロジェクトに取り組んでいる。Microsoft AzureやAzure Machine Learningが提供するクラウドテクノロジーはまさに要件にぴったり適うソリューションだ」(山寺氏)

 最後に砂金氏は「このように、クラウドをイノベーションの源として活用している企業の事例が既に出てきている。マイクロソフトは大企業とベンチャー企業のコラボレーションを通じて、新たなビジネスの可能性を切り拓くお手伝いをしたい」と締めくくった。

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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2016年5月18日