「デジタルトランスフォーメーション」の準備は整っているか?──マイクロソフトが提唱する近未来のビジネス像とは

ビジネスリーダー向けにマイクロソフトが開催したイベント「Microsoft Foresight」。キーノートセッションに登壇した日本マイクロソフト 代表取締役社長 平野拓也氏は、これからの時代を企業が勝ち残っていくために必要な「デジタルトランスフォーメーション」のビジョンと、そのためにマイクロソフトが提供するソリューションについて、さまざまな事例を交えながら紹介した。

» 2016年09月26日 10時00分 公開
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企業のデジタルトランスフォーメーションを強力に支援するマイクロソフト

 2016年9月6日、7日の2日間に渡り、ウェスティンホテル東京(東京・目黒区)にて日本マイクロソフト主催のイベント「Microsoft Foresight」が開催された。このイベントは、企業の経営層や経営企画部門といったビジネスリーダーに向け、これからのビジネス環境をICT技術を駆使して勝ち抜いていくためのさまざまな情報やヒントを提供した。

日本マイクロソフト
代表取締役社長 平野拓也氏

 初日冒頭に行われたキーノートセッションには日本マイクロソフト 代表取締役社長 平野拓也氏が登壇し、「ビジネスに新たな価値をもたらす"デジタルトランスフォーメーション"」と題したプレゼンテーションを行った。

 「今回のイベントを通じて、デジタルトランスフォーメーションに関する"洞察"や"気付き"を皆様に持ち帰っていただきたい。そんな願いを込めて、本イベントのタイトルを"Foresight"(洞察力)と名づけました」

 平野氏はこう語り、近年のデジタル化の急速な進展がビジネスに与えるインパクトの大きさを強調する。

 「人類はこれまで、三度の産業革命を経験してきました。そして現在はビッグデータや人口知能、仮想現実といった先端技術が産業や社会の在り方を大きく変えていく"第四次産業革命"の時代に差し掛かりつつあります」

 こうした時代の変化に追随していくために、企業はいかにしてデジタルトランスフォーメーションを実現し、ビジネスを成長させるのか。日本マイクロソフトでは、「お客様とつながる(Engage your customers)」「社員にパワーを(Empower your employees)」「業務を最適化(Optimize your operations)」「製品を変革(Transform your products)」という4つの領域で、それぞれ顧客のデジタルトランスフォーメーションを強力に支援していくという。

デジタルトランスフォーメーションを支援する4つの領域

お客様とつながる(Engage your customers)

 この領域の取り組みの例として、人型ロボット「Pepper」を開発するソフトバンクロボティクスとの協業の事例が紹介された。同社と日本マイクロソフトは2016年3月に提携を発表し、ソフトバンクロボティクスが持つロボティクス技術と、マイクロソフトが持つクラウド技術を組み合わせた「クラウドロボティクス」の分野における協業を、今後両社で強力に推進していくという。

 「国内では少子高齢化が進み、労働人口が減っていく一方で、海外からの観光客は今後ますます増えていくことが予想されています。そんな中、ICT技術を使って接客サービスを自動化・効率化する取り組みが各所で強く求められています」(平野氏)

接客中のPepper

 そこで両社は、PepperとマイクロソフトのクラウドサービスであるMicrosoft Azure、さらには大型タッチパネル型のPCデバイス「Surface Hub」を組み合わせた「未来の商品棚」を提案している。具体的には、来店した顧客をPepperが自動認識し、Microsoft Azureのクラウド環境と連携することでその顧客の属性や購入履歴などをリアルタイムで取得。それらに応じたお勧め商品などの情報を店頭のSurface Hubに映し出す、といった具合だ。

 同イベントでは、実際にこうした一連の「未来の商品棚」の姿がデモンストレーションで披露され、デジタルトランスフォーメーションによるこれまでにない新たな顧客体験が、既に高いレベルで実現しつつあることが示された。

社員にパワーを(Empower your employees)

 ICT技術を使った働き方改革というと、産休や介護のために職場を離れざるを得ない従業員に対する「一時的なケア」というイメージが強かったが、平野氏は「テレワークによって時間や場所を問わず働ける環境を提供できれば、従業員一人ひとりのポテンシャルを最大限発揮させ、仕事の生産性や従業員の満足度を向上し、ひいては日本全体の労働生産性を高めることができる」と、その取り組みの重要性を説く。

 その一つとして、富士通におけるOffice 365の導入事例を、ビデオを通じて、代表取締役社長 田中達也氏が紹介した。富士通では、海外も含めたグループ全社16万人の共通コミュニケーション・コラボレーション基盤としてOffice 365を全面採用した。この世界最大規模のOffice 365導入によって、富士通では国境を越えたコラボレーションを深め、グローバル市場における存在感をより一層高めることに成功したという。また自社におけるこうした成功例を生かし、今後は顧客に対してもOffice 365を使ったデジタルトランスフォーメーションのソリューションを積極的に提案していくという。

 日本マイクロソフト自身もワークスタイル変革に積極的に取り組んでおり、テレワーク制度の浸透によりワークライフバランスの40%向上、女性離職率の40%低減などの効果を上げているという。また2016年5月には、テレワーク制度をより推進するべく、就業規則の改定にまで踏み切っている。

日本マイクロソフトのワークスタイル変革の主な成果

業務を最適化(Optimize your operations)

 デジタルトランスフォーメーションによる業務最適化の先進事例として、日本航空(以下、JAL)による「HoloLens(ホロレンズ)」の導入事例が紹介された。HoloLensはマイクロソフトが開発・提供するヘッドマウント型のデバイスで、現実の風景にCGを重ねた画像を表示することでユーザーにMR(Mixed Reality)体験を提供する。

 JALでは乗務員や整備士の訓練のために航空会社として世界で初めて採用した。HoloLensを使うことで、例えばなかなか実物に触れる機会のない航空機のエンジンも、あたかも目の前に実物があるかのように見せることができる。しかも、実地訓練では見ることが難しい詳細な内部機構が確認できたり、あるいは他の部品と連動して動作する様子など、CGを駆使して実物と同じような状態を提示して、訓練や教育の効果を高められるという。

日本航空 商品・サービス企画本部 業務部 業務グループ グループ長
速水孝治氏

 JALでHoloLens導入プロジェクトのマネージャを務めた商品・サービス企画本部 業務部 業務グループ グループ長 速水孝治氏が登壇し、HoloLensがもたらしたデジタルトランスフォーメーションの成果について次のように話した。

 「導入検討当時はまだVR技術やAR技術が一般的ではなかったため、プロジェクト立ち上げの理解を社内で得るのに苦労した面もありましたが、出来上がったものを実際に試してもらうと、その技術のすごさに皆一様に驚いていました。現在は安全運行のための訓練や教育の用途で利用していますが、今後はこれにAI技術も加え、新たなカスタマーエクスペリエンスを提供できる顧客向けサービスをマイクロソフトとともに実現していきたいと考えています」

製品を変革(Transform your products)

 デジタルトランスフォーメーションによって、自社の製品やサービスにイノベーションをもたらした例として、日本を代表するグローバルカンパニー、トヨタの事例が紹介された。

 トヨタとマイクロソフトのパートナーシップ関係の歴史は古く、最近の取り組みだけを見てもクラウドベースのテレマティクスや社内のグローバルコミュニケーション基盤の構築など、数々の協業を実現してきた。これらに加え、2016年4月にはトヨタとマイクロソフトが共同で「Toyota Connected, Inc.」という新会社を米国に設立した。この会社では、トヨタが開発・販売したクルマからネットワーク経由でさまざまなデータを収集・解析し、そこで得られた知見を研究開発に随時フィードバックしてよりよい商品作りに生かすことを目指している。そのためのIT基盤としてMicrosoft Azureが全面的に採用されたほか、マイクロソフトのエンジニアが技術支援するという。

「コグニティブサービス」で誰もがAIのパワーを利用可能に

 これら4つの領域におけるデジタルトランスフォーメーションを推進していく上で、マイクロソフトがキーテクノロジーと位置付けているのがAI技術だ。一般的にAIというと、大規模なコンピューティング環境や高度な専門知識がないと使いこなせないと思われがちだが、マイクロソフトは最先端のAI技術を「コグニティブサービス」というAPIサービスを通じて公開し、誰もが利用できるようにしている。具体的には「視覚認識サービス」「音声認識サービス」「言語理解サービス」「知識サービス」「検索サービス」の5つの領域において、合計22のAPIを公開している。

 「冒頭で紹介したPepperの事例でも、このコグニティブ技術が活用されています。さまざまな分野のAI技術を、誰もが気軽に使えるようにすることで、デジタルトランスフォーメーションをさらに強力に推し進められるのではないかと考えています」(平野氏)

 デモンストレーションでは、スマートフォンのカメラで来訪者の顔を撮影すると、コグニティブサービスと連携してその人の特徴や表情、既存顧客か新規顧客かといったことを瞬時に判断し、ウェアラブルデバイスに分析結果を表示。それを基に満足度を高める適切な顧客応対を行うという一連の流れが紹介された。

リクルートキャリア 商品本部
事業開発室 執行役員 木塚敬介氏

 なお、本イベントが開催された2016年9月6日には、リクルートキャリアと日本マイクロソフトの提携が発表された。両社はコグニティブサービスを駆使することで、AI技術をふんだんに活用したHRテックの取り組みを加速させていくという。リクルートキャリア 商品本部 事業開発室 執行役員 木塚敬介氏が登壇し、マイクロソフトとの協業にかける意気込みを次のように語った。

 「弊社では現在、データから得た知見を基に個人や組織の潜在能力を最大限引き出す"Evidence-Based HRM"に取り組んでいます。今回のマイクロソフトとの協業により、互いの強みを生かしてこの取り組みをさらに前進させ、これまでにない新たなHRソリューションを生み出せるのではないかと期待しています」

JR東日本が歩むデジタルトランスフォーメーションの道

 最後に、デジタルトランスフォーメーションを積極的に推進する企業の代表として、JR東日本の取締役副会長である小縣方樹氏が登壇し、平野氏とのトークセッションを繰り広げた。

 JR東日本は、発足当初からのメイン事業である鉄道事業をビジネスの第一の柱としつつ、店舗やホテルなどの生活サービス事業やSuica事業など、時代の要請に応じてさまざまな分野のサービス業にも積極的に進出してきた。その過程においては、ICTの力を活用したデジタルトランスフォーメーションの取り組みが欠かせなかった。

 「1987年の国鉄分割民営化の直後にはわずか3つしかなかった業務システムが、現在では小さいものも含めると972個にまで増えています。またその過程においては、Windows 95やSQL Serverをいち早く導入したり、Microsoft Azureのクラウドサービスを活用したりと、常にマイクロソフトとともに歩んできました。先日はサティア・ナデラCEOとお会いする機会もいただき、大変有意義な話ができました」(小縣氏)

 また小縣氏は現在、世界中の公共交通機関や関連サプライヤー、オペレータが参画する国際公共交通連合(UITP)の会長も務める。公共交通の世界におけるデジタルトランスフォーメーションの動向や展望について、次のように話した。

 「自動車の世界では現在、自動運転技術やシェアリング型サービスの話題で持ちきりですが、鉄道やバスなどの公共交通機関の世界も同じく、今後は"自動化""シェアリング型・オンデマンド型"の方向へと進んでいくでしょう。そうした"Mobility as a Service"の時代においては、自社の技術と他社の技術がいつどこで結びつき、どんなイノベーションを引き起こすか予想が付きません。従って、私たちは常に自社のコア事業において技術を磨き、外部との出会いによるイノベーションの種を常にまいておく必要があるでしょう」

JR東日本 取締役副会長 小縣方樹氏(右)日本マイクロソフト 代表取締役社長 平野拓也氏

 最後に平野氏は「これまで紹介してきたように、長らく安心や安全といった価値を重要視してきた歴史ある大企業でも、デジタルトランスフォーメーションによって新たな世界へとどんどん踏み出しています。日本マイクロソフトでは今後、お客様の新たな取り組みを全社員挙げて支援していきたいと考えています」と締めくくった。

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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2016年9月30日