CIOの課題は迅速かつ柔軟な業務革新――デジタル化に欠かせないクラウド活用

デジタルテクノロジーの進化は留まることはなく、今後も指数関数的な進化が続くであろう。企業がデジタル変革に取り組むうえで欠かせないクラウドの活用や、デジタル変革の推進役として大きな期待が掛かるCIOの役割や課題とは。

» 2017年01月30日 10時00分 公開
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 12月13日、セールスフォース・ドットコムが主催する国内最大規模のイベント「Salesforce World Tour Tokyo 2016」において、「CIO Lodge」が開催された。CIO Lodgeでは、「業務にイノベーションをもたらす“ITのチカラ”有効活用術」をテーマに、CIOの経験談やノウハウが、事例講演やパネルディスカッションで紹介された。

「ITのチカラ」でイノベーションを

セールスフォース・ドットコム 専務執行役員 チーフ・トラステッド・パートナー 保科実氏

 開催にあたり、セールスフォース・ドットコム 専務執行役員 チーフ・トラステッド・パートナーの保科実氏は、「Salesforceでは、“お客様とともに未来を”という理念に基づいて、トラスト(信頼)、イノベーション(革新)、グロース(成長)という3つの価値の提供を目指しています」とあいさつした。

トラスト(信頼)では、顧客に価値を生み出すサービスを提供することで、信頼関係を築くことを目指している。また、テクノロジーが日々進化する現在において、年3回バージョンアップしているが、新しい機能により顧客のイノベーション(革新)を促進することを、さらに、Salesforceを利用してシステムを拡張することで、ビジネスを加速し、企業価値を高め、顧客とともにグロース(成長)していくことを目指している。

 その一環として、取り組んでいるのが「Salesforce Einstein」である。セールスフォース・ドットコム プロダクトマーケティングの伊藤哲志氏は、「Einsteinは、Salesforceプラットフォームの一部として組み込まれています。つまり、Salesforceの利用企業はデータサイエンティストなどの専門家を雇うことなく、最先端の人工知能(AI)機能をCRMや業務アプリケーション上で活用することが可能となります。つまり、Salesforceご使用の皆さまは、今後取り組むさまざまなビジネスにAIテクノロジーを利用することができるようになるのです」と話している。

Salesforce Customer Success Platform

 1つ目の導入事例セッションには、SOMPOシステムズ 執行役員の久保田和巳氏が登場。「VUCAの時代に求められるクラウド」をテーマに講演した。

SOMPOシステムズ 執行役員 久保田和巳氏

 予測困難な変化が連続するVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代に求められるIT戦略としては、柔軟性とスピードが必要になる。そこで業界に先駆けて、2004年よりSalesforceのPaaS(Platform as a Service)であるForce.comを活用して、代理店システムをスモールスタートし、2005年より戦略コールセンターに展開。2007年より全社展開を開始し、その後、基幹系システム、全社プロジェクトなど、短期間かつ低コストで展開している。

 「変化が速く、柔軟かつ迅速に対応しなければならない、お客様との関係を構築する仕組みにはSoE(Systems of Engagement)を、保険商品のライフサイクルにかかる普遍的な業務サービス領域の仕組みにはSoR(Systems of Record)を適用するのが、VUCA時代のエンタープライズ・アーキテクチャの方向性です。Salesforceを利用するツボは、(1)標準オブジェクト、標準開発を指向することで、Salesforceの進化を享受すること、(2)クラウドによりIT化の敷居が低くなり、多くの会社でITを活用した新しいビジネスが始まっています。学ぶべきは外の会社です。ユーザー会でのナレッジの共有は大変有益です」(久保田)

 2つ目の導入事例セッションには、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)IT本部 ITシステム企画第一部 部長の津川尚樹氏が登場。『我々がSalesforceを使い続ける「ワケ」と「コツ」』をテーマに講演した。

キヤノンマーケティングジャパン IT本部 ITシステム企画第一部 部長 津川尚樹氏

 キヤノンMJではすでにERPを導入してCRMとSFAを運用していたが、投資効果が感じられないという課題を抱えていたため、いくつかのソリューションを検討し、柔軟性や拡張性、安全性、将来性を評価して、2008年にSaaSである「Salesforce Sales Cloud」を導入した。目的は「増収」、目標は「商談数を上げ、期間を短く、成約率を上げる」の3つに定めた。

 当初、1,700名での利用だったが、現在では5,800名の利用に拡大している。以前は、週1回の進捗会議で2時間程度をかけて各担当営業が報告していたが、Salesforceを導入したことで、進捗状況がリアルタイムに把握できるので会議での報告が不要になり、マネージャーが管理をしやすくなった。さらに商談画面と一体化している社内SNS「Chatter」を活用し商談履歴が分かるようになったため、メンバー間の案件に関するコミュニケーションが進んだ。また朝礼や定時の連絡などもChatterで行いワークスタイル変革も促進されている。

デジタル変革は必要不可欠かつ急務の取り組み

 「CIOの新たな役割とは?」をテーマとしたパネルディスカッションでは、アイティメディア エグゼクティブプロデューサーである浅井英二をモデレーターに、SOMPOシステムズの久保田氏、キヤノンMJの津川氏、セールスフォース・ドットコムの保科氏が、業務にイノベーションをもたらす「ITのチカラ」の有効活用術について熱い議論を繰り広げた。

右から保科氏、久保田氏、津川氏、浅井

 冒頭、パネルディスカッションの背景について浅井は、「ITを活用したビジネス変革が加速しています。タクシーを1台も持たない会社が世界一になり、ホテルを1軒も持たない会社が世界一になっています。こうした変化は、今後も指数関数的に拡大していきます。シンギュラリティ(技術的特異点)の到達は遠い未来ではなく、15年先にITの性能は現在の1000倍に向上するといわれています。こうした背景のもと、デジタル変革に欠かせないクラウド活用を推進するCIOの役割や課題を議論したいと思います」とディスカッションを開始した。

 まず、1つ目のテーマである「クラウドの導入を成功に導くために大切なことは?」という問いについて津川氏は、「Salesforceに関しては、年3回のバージョンアップがあることから、その恩恵を受けるために、できる限り標準機能を利用することが最大のポイントです。それによりメリットを最大限に生かすことができます。SFAに関しては、何のために導入するのかを明確にすることです。まず考えるべきは、お客様に価値を提供することであり、標準機能特有の使い勝手や制約に関しては、乗り越えることも必要です」と話す。

 また、課題について津川氏は、「SFAは、現場にPDCAサイクルを定着させるのが難しいこと」と言う。これに対し保科氏は、「確かに、SFAは定着化が難しい分野です。そこで、2つのポイントがあります。まずは、必要な機能から少しずつ導入していくことが成功の近道だと思います。次に、いかに入力してもらうかが重要です。そこで、ワークスタイル変革など、SFAを使うメリットを明確にし、理解してもらうことが成功のカギになります」と顧客企業から学んだベストプラクティスを紹介した。

 2つ目のテーマである「基幹業務を含め、システム全体をどのようにモダナイゼーションしていくか?」という問いに対し、久保田氏は、「SoRの領域とSoEの領域を分けて考えることが必要です。SoRの領域は、メインフレームのCOBOL開発によりブラックボックス化してしまったため、Javaにより独自開発せざるを得ません。一方、SoEの領域では、Salesforceを中心に、IoTやAIなどの新しいテクノロジーをいかに活用して、ビジネスを変革させていくかを検討しています」と取り組みを紹介した。

 また、モダナイゼーションのポイントに関してコメントを求められたセールスフォース・ドットコム 顧問の岩崎氏は、「2007年の郵政民営化のときに、モダナイゼーションを担当しましたが、とにかく速く、柔軟にというのが改革のポイントでした。ユーザー側から見れば、やりたいことが実現できれば、クラウドでも、オンプレミスでも構わないのですが、スピードと柔軟性を両立できるのはクラウドしかないと考え、2008年にSalesforceを導入しました。とはいえ、SoRの領域はオンプレミスで残るので、ハイブリッド構成が現実解となります」と経験談を話した。

 3つ目のテーマは「新たなCIOの役割とデジタル変革の取り組み」について。

 「デジタル変革は、必要不可欠かつ急務であると考えています。今までは、お店に行かなければ商品は買えませんでしたが、現在はネットで情報を入手して購入できる便利な環境にみんな慣れています。その個人の経験が企業活動に生かされるわけですから、デジタルな取引などを提供できるように取り組んでいかなくてはなりません。IT部門としては、これからの時代に対応できる人材育成を進めています」(津川氏)

 「保険業界は従来の保険のサービスだけでは事業が成り立たなくなると予想され、デジタルを使っていかに進化するかに取り組み始めました。その一環でグループとして新宿とシリコンバレーにも拠点を作り、新たなテクノロジー情報を収集しながらサービス開発を進めています。“心・技・体”という言葉がありますが、デジタル戦略室の設置が“体”であり、新しいテクノロジーの習得が“技”で、最も難しいのが“心”です。現在、IT部門でシステムを管理していますが、基本はウォーターフォール型で、V字モデルです。業務でも上意下達型の組織なので、言われたことしかやらないという体質になっています。この体質を改善するために、アジャイルで自立型組織への改革を進めています。また、役員向けにアジャイル研修を行うなど、上からも意識変革を始めています」(久保田氏)

 最後に保科氏は、「3年前より、米国を中心にIgnite(イグナイト)というプログラムを実施しています。このプログラムは、2〜3カ月かけて経営層から現場の担当者まで、どのような会社になりたいのか、ビジョンや戦略を掲げ、それを実現するためには何をすべきかを検討します。米国では、すでに多くのお客様が本プログラムで成功を収めています。日本でも取り組んでいますが、最も難しいのは、慣習、慣例、文化の壁を破ることです。そのためには、ITはもちろん業務も変革しなければなりません」と締めくくった。

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提供:株式会社セールスフォース・ドットコム
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2017年2月27日