日本マイクロソフト主催の「IT Leaders xChange サミット 2017 Spring」では企業のエグゼクティブやITリーダーを招いて、「デジタルトランスフォーメーション」をテーマに多彩なセッションが繰り広げられた。
2017年3月9日、日本マイクロソフト主催の「IT Leaders xChange サミット 2017 Spring」が開催された。企業のエグゼクティブやITリーダーを招いて、「デジタルトランスフォーメーション」をテーマにAI、IoT、MRなど先進技術やその活用事例が紹介された。
オープニングセッション冒頭で日本マイクロソフト 執行役員 専務 エンタープライズビジネス担当 福島徹氏が開会挨拶を述べたのに続き、同社 代表取締役 社長 平野拓也氏が登壇し、マイクロソフトが現在進めているデジタルトランスフォーメーション戦略の概要を紹介した。
「弊社が日本を含むアジア諸国の企業リーダーに対してデジタルトランスフォーメーションに関するアンケート調査を行ったところ、その中で、『デジタルトランスフォーメーション』が重要であると回答した日本のビジネスリーダーの割合は50%に過ぎず、アジア全体の平均80%と比較して、非常に低い結果だった。こうしたギャップを埋めるためにも、私たちは日本企業のデジタルトランスフォーメーション推進を全力をあげて支援していきたい」(平野氏)
「デジタルトランスフォーメーション」を推進する上で、経営者にとって最も関心が高く、日本政府の最重要テーマの1つであり、日本社会のアジェンダとなっているのが「働き方改革」だ。
平野氏は、「弊社の『働き方改革』の経験をお客様に共有させていただきながら、ご支援する機会が多くなっている。『働き方改革』においては、AIを活用した『MyAnalytics』により、働き方に『気づき』を与えるということを軸に考えている。また、2016年1月に日本においても正式リリースされたMR(Mixed Reality)デバイス『Microsoft HoloLens』も、日本は他国よりも関心が高く、企業がデジタルトランスフォーメーションを進める上で大きな可能性を秘めている」と力説した。
続いて、IT Leaders xChange会長を務める、日本航空 常務執行役員 IT企画本部長 石関佳志氏が登壇し、同社が現在進めるデジタルトランスフォーメーション戦略の一端を紹介した。
「弊社では、お客様に『安全・安心』を提供するためにレガシーシステムを確実に運用しながら、同時に、デジタルトランスフォーメーションをいかに推進していくかは、大変悩ましい課題。この両方を同時に進めていくために、社外の力を活用していく必要があり、マイクロソフトの力を借りている。マイクロソフトは『製品ベンダー』のイメージが強いかもしれないが、私たちとともにサービスを考えてくれるパートナー企業に変わりつつある」(石関氏)
基調講演にはGEジャパン 代表取締役社長 兼 CEO 熊谷昭彦氏が登壇し、「Transforming to a Digital Industrial Company 次世代製造業に向けたGEの挑戦」と題し講演した。
かつて世界最大級のコングロマリットだったGEは、2001年よりビジネス領域の選択と集中を進めインフラに特化した企業へと変革を遂げ、さらに近年はハードウェアだけでなくソフトウェア技術を組み合わせたデジタル・インダストリアル・カンパニーへと変化している。既にシリコンバレーに大規模なR&Dセンターを構え、産業用IoT向けのクラウドプラットフォーム「Predix」を2014年10月に発表している。
「現在GEでは、『サービス・トランスフォーメーション』『サプライチェーンの変革』『カルチャーの変革』という3つの取り組みを通じて、デジタル・インダストリアル・カンパニーの実現を目指している」(熊谷氏)
サービス・トランスフォーメーションとは、ビッグデータ分析やIoTなどのソフトウェア技術を積極的に活用した次世代サービスへの変革を指す。その一例として同氏は、顧客に提供した製品に取り付けたセンサーから利用状況のデータを収集して、ソフトウェア環境上で稼働状態やメンテナンス時期のシミュレーションを行う「デジタルツイン」や、東京電力フュエル&パワーの火力発電所のオペレーション最適化の取り組みを紹介した。
またサプライチェーン変革のために、世界中に400箇所ある工場をデジタル技術でつなぎ、稼働状況の可視化や生産の効率化・スマート化を目指す「ブリリアント・ファクトリー」の取り組みを進めている。
さらにカルチャー変革に関しては、「2年前から、従来の『GE Value』にかわる『GE Beliefs』という新たな行動指針を掲げ、社内のマインド改革に取り組んでいる。また、IT産業のスピード感にならった『FastWorks』や、新たな社内評価を打ち出して新たな時代とビジネスモデルにふさわしい社内カルチャーの醸成に取り組んでいるところだ」(熊谷氏)
「デジタルトランスフォーメーションへの道筋とCIOが果たすべき役割」と題したパネルディスカッションには、大和ハウス工業(以下、大和ハウス) 執行役員 情報システム部長 加藤恭滋氏と、富士通 執行役員 CIO 松本雅義氏が登壇し、モデレータの経済ジャーナリスト 内田裕子氏の進行の下、両社が進めるデジタルトランスフォーメーションの取り組みと、その過程においてCIOが果たすべき役割や課題について討議が行われた。
パネルディスカッションの第1のテーマは「今、注目すべきテクノロジー」。加藤氏は、現在大和ハウスで進めるイノベーションにおいて特に着目している技術としてVR(仮想現実)とロボティックスの2つを挙げた。
「VRを使ってお客様に建築物のイメージをよりリアルに提示できないか、検討を進めています。その中では、マイクロソフトのHoloLensにも非常に高い関心があります。またロボット技術を活用して、ホワイトカラーの生産性を向上するための施策も検討しているところです」(加藤氏)
一方、松本氏は近年脚光を浴びるAI(人工知能)について「過去にも2回ほどAIブームがあったが、機械学習や深層学習の技術が発展した今回の第3次AIブームは、単なるブームでは終わらないだろう」と述べ、その将来性の高さを強調した。
第2のテーマは、「デジタル変革の取り組みと課題」。加藤氏からは現在大和ハウスで進めている、3D CADを中心とした工程リードタイム短縮の取り組みが、そして松本氏からは富士通社内でBIとAIを活用して構築、活用されている経営ダッシュボード基盤の紹介がそれぞれ行われた。またモバイル端末の活用やテレワーク制度など、両社で進められている働き方改革の取り組みについても紹介された。
また2008年から早くも社内システムへのプライベートクラウド移行を進めている大和ハウスでは、「これまでの取り組みで培われたノウハウを生かして、今後はOffice 365をはじめとするパブリッククラウドサービスを使ったコミュニケーション基盤を充実させていきたい」(加藤氏)
第3のディスカッションテーマ「変革に向けたCIOと情報システム部門の役割と課題」について、両氏とも「情報システム部門にはこれまでとは異なる役割が求められる」と口をそろえる。
「既存システムの安定運用だけではなく、業務現場が欲しているものをいち早く具現化できるスキルを持った人材をこれからは育成していかなくてはいけない」(加藤氏)
「弊社はICT企業なので、全社各部門で自らのデジタル革新に取り組んでいます。今後、CIOには、それらの活動を上手く“交通整理”する役割も求められるでしょう」(松本氏)
3会場に分かれて開催されたブレイクアウトセッションでは、それぞれマイクロソフトのクラウド技術やAI、IoTソリューションなどを活用してデジタルトランスフォーメーションを実現した事例が紹介された。
日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター エグゼクティブアドバイザー 小柳津篤氏と、同社 Officeマーケティング本部 シニアプロダクトマネージャー 輪島文氏からは、日本マイクロソフトにおいて進められてきた働き方改革の成果と、それに活用されるマイクロソフトのテクノロジーの紹介が行われた。
日本マイクロソフトでは2011年より社内の働き方改革の取り組みを進め、「オフィス環境」「モバイルワーク環境」「労務管理」「情報管理」の各分野において施策を講じてきた結果、現在では先進的なワークスタイルを実践する企業として広く知られるようになった。今日も取り組みは継続中で、特に働き方の「質」を向上させる目的でクラウドに蓄積した働き方データをもとにより効果的な働き方を推奨するMyAnalyticsの活用が進んでいる。
組織を超えた社員同士のコミュニケーションやコラボレーションの環境を整備するとともに、こうした仕組みを社員が安心して使えるようエンタープライズグレードのセキュリティの実装も重要だ。単なる「局所的なモバイルワーク」にとどまらない、すべての社員がいつでも、どこでも、誰とでもつながれる「モダンワークスタイル」が実現できることをマイクロソフト自身が実証している。
日本マイクロソフト マーケティング&オペレーションズ部門 プラットフォーム戦略本部 本部長 大谷健氏からは、マイクロソフトが現在展開しているIoTおよびAIのソリューションと事例の紹介が行われた。マイクロソフトは現在、「Windows 10 IoT」と「Microsoft Azure IoT Suite」を軸に、デバイスとクラウドの両面でIoTソリューションを展開している。またAIに関しても"Democratizing AI"(AIの民主化)を合言葉に、「Cognitive Services」「Azure Machine Learning」「Microsoft R」「Cognitive Toolkit(CNTK)」などさまざまなAIサービスを展開している。
これらの技術・サービスを使ったビジネス事例も次々と登場してきており、その代表として本セッションではSBIリクイディティ・マーケット 開発本部長 吉川裕太氏が登壇し、同社においてマイクロソフトのAIサービスをFX取引の管理や顧客応対の品質向上に役立てている事例を紹介した。将来的には、「金融を通してAIを身近に感じる世界を実現していきたい」(吉川氏)
日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター セキュリティアーキテクト 蔵本雄一氏がモデレータを務めた本セッションでは、まずベネッセホールディングス グループIT課 ITプロジェクト管理1課 増井一隆氏が登壇し、同社におけるクラウド利用とそのセキュリティ対策の取り組みについて紹介が行われた。
ベネッセでは、変化の早いビジネスニーズに柔軟かつ迅速に対応するために、またコスト効率を最大化するために、現在では各部門ごとにばらばらに導入、運用されているクラウドを一元管理するとともに、今後約3年をかけて現在では大部分がオンプレミスで運用されている社内システムの約半数をMicrosoft Azureのクラウド環境へ移行する予定だという。その際には、万全のセキュリティを確保するためにシステム構築のテンプレートをあらかじめ用意したり、インターネットの接続性を考慮するなど、さまざまな施策を講じている。
続いて、日本マイクロソフト 政策渉外・法務本部 弁護士 中島麻里氏が登壇し、クラウド利用において多くの企業が抱く法的な観点からの懸念点について解説した。同氏によれば、マイクロソフトのクラウドサービスは、顧客データの扱いや政府機関からの情報開示要請、個人情報保護法への対応など、コンプライアンス全般に渡って明確な方針を契約に定め、それに従って運用しているため、法的な観点から見ても安心して利用できるという。
※掲載内容は2017年3月9日開催時点のものです。
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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2017年5月19日