Special
» 2019年04月01日 10時00分 公開

IT Leaders xChange Summit 2019 レポート:「2025年の崖」を克服するポイントを最新AI活用事例で紹介

既存システムにリソースを集中し続けることで、企業の競争力低下や機会損失につながる「2025年の崖」。これを克服するためには、デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資が不可欠であり、人工知能(AI)の活用も重要になる。「IT Leaders xChange Summit 2019」(Lex)では、AIが導く業種別のDXの実現に向けた戦略や提言、実践的な事例が紹介された。

[PR/ITmedia]
PR

前身から31回目の開催となるLex Summit。今後も会員と共にDXやAIの推進へ

日本マイクロソフト 執行役員常務 エンタープライズ事業本部長 村上申次氏

 2019年3月1日、日本マイクロソフト主催の「IT Leaders xChange Summit 2019(Lex)」が、「広がるAIのビジネス活用 〜集める、創る、AIから使うAIへ〜」をテーマに開催された。

 オープニングセッションに登壇したのは、日本マイクロソフト 執行役員常務 エンタープライズ事業本部長の村上申次氏である。

 村上氏は「Lexとしては6回目の開催。16年前に“夢現会(夢を現実にする会)”としてスタートした同会は、その前身から数えると31回目の開催となる。20人程度の会員からスタートしたが、現在では300人を超える会員が参加している。今後も、会員とともにDXやAIを積極的に推進していきたい」と語った。

顧客のDXをテクノロジーで支えるマイクロソフト

 マイクロソフトセッションには、日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者(CTO)兼 マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役社長の榊原彰氏、およびマイクロソフトコーポレーション コーポレートバイスプレジデント クラウド+エンタープライズマーケティング担当の沼本健氏が登壇した。

日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者(CTO)兼 マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役社長 榊原彰氏

 マイクロソフトでは「業務を最適化」「製品を変革」「お客様とつながる」「社員にパワーを」の4つの領域でDXを支援している。この4つの領域でデータや画像などのデジタルシグナルを収集し、データを学習して洞察を得て、ビジネス成果を向上させる「デジタルフィードバックループ」を実現する。

 そのために、「Microsoft 365」「Microsoft Dynamics 365」「Microsoft Azure」の3つのクラウドを提供。3つのクラウドにAIを組み込むことで、Intelligent Edge/Cloudを実現している。榊原氏は「よくAIが人類を置き換えるという話を耳にするが、マイクロソフトではAIは人の能力を補完するものと定義し、特に“人の触れ合い、人の思いやりを支援する”ような場所にAIを積極的に活用していきたいと考えている」と話す。

 「看護師や教師など人に対する支援や、放射線治療や長距離輸送、コールセンター、機械設備点検・保守など業務に対する支援にAIを活用している例などが代表的なものだ。このときAIには、公平性、信頼性と安全性、プライバシーとセキュリティ、多様性、透明性、そして説明責任という6つの倫理原則が求められる。マイクロソフトにはお客様へのAI機能の提供の際やAI研究・開発における倫理原則のチェック機構もある」(榊原氏)

 業種別のAI活用では、小売分野において、クローガーやウォルマート、GAPなどと、Intelligent Retailに向けた提携を加速。またヘルスケア分野では、Healthcare Bot ServiceやEmpowerMD、Microsoft Teams for Healthcareなどに取り組んでいる。さらに製造業では、部分的IoTから統合型IoTへのIntelligent Manufacturingに取り組んでいる。

 榊原氏は「マイクロソフトの存在意義は、お客様のDXをテクノロジーで支える企業になること。今後もマイクロソフトとともに、イノベーションを協創してほしい」と呼びかける。

マイクロソフトは「業務を最適化」「製品を変革」「お客様とつながる」「社員にパワーを」の4つの領域でDXを支援
マイクロソフトコーポレーション コーポレートバイスプレジデント クラウド+エンタープライズマーケティング担当 沼本健氏

 榊原氏に続き登壇した沼本氏は「マイクロソフトはIntelligent Edge/Cloudというビジョンに基づいて、製品開発を行っている」と話す。

 例えばIntelligent Edgeでは、Azure KinectとHoloLens 2の2製品を発表。「Azure Kinectは当初ゲーム用の複合センサーだったが、商品管理や在庫管理などの業務で利用されるようになった。一方、HoloLens 2は視野角が2倍に広がり、装着感が3倍向上している」(沼本氏)

 一方、Intelligent Cloudでは、Spatial Anchors (空間アンカー)において、HoloLensやiOS、Androidのデバイスでアクセスできる複合現実アプリを実現。Remote Renderingは高品質の対話型3Dコンテンツをレンダリングし、リアルタイムにストリーミングできる。またDynamics 365 Remote Assistは、HoloLensを活用し、さまざまな場所から共同作業が可能になる。さらにDynamics 365 Guidesは、複合現実ツールによりインタラクティブな学習を可能にしている。

 沼本氏は「こうした製品は、お客様のビジネスにいかに活用してもらえるか、いかに価値を提供できるかという思いで開発している」と話した。

マイクロソフトはIntelligent Edge/Cloudというビジョンに基づいて、製品開発を行っている

電子カルテや過疎地診療など“医療の未来”にAIで貢献

 事例セッションには、きりんカルテシステム 取締役会長の永用万人氏、富士フイルムソフトウエア サービス本部 アドバンストソリューショングループ イメージワークスチーム チーム長の佐藤力氏、オリンパス 取締役専務執行役員 技術統括役員(CIO)兼 技術開発部門長の小川治男氏の3人が登場した。

きりんカルテシステム 取締役会長 永用万人氏

 きりんカルテシステムでは、クリニックのITコストを劇的に下げ、電子カルテを患者のものにする取り組みの一環として、AIの活用に取り組んでいる。永用氏は「現在、予約アプリでAIを活用。診察の予約をすると、順番待ちの患者の診察時間をAIで予測して、精度の高い診療開始予想時間を知らせてくれる」と話す。

 「また現在、自由記述されたカルテや所見データからAIによって自動的に構造化された形でデータを蓄積し、処方の関連性などのデータをもとに、医師の経験則や意図しない効果といった暗黙知を形式知化することを目指す実証的な取り組みを行っている。専門外や過疎地での診療に役立てたい」(永用氏)

 現状では、電子カルテの普及率は35%にすぎない。また、電子カルテを導入済みでも、メーカーごとに形式がバラバラという状況であり、さらにクラウド比率はまだ2%程度のため、データの収集自体が困難である。

 そこで、所見データを正規化して蓄積できる仕組みが必要となる。所見データをAIが自動で抽出し、正規化するエンジンをマイクロソフトと共同開発した。Microsoft Cognitive Servicesの言語処理エンジン「LUIS」を活用することで、1カ月弱という短期間で、電子カルテ構造化技術「きりんカルテDX」をリリースしている。また、紙カルテを電子カルテ化させる仕掛けづくりも必要であり、紙に書いた所見データをそのまま電子化・テキスト化する仕組みの構築では、富士ゼロックスの技術を活用している。

 「AIを活用するコツは、まずは既存のAIエンジンをうまく活用し、“使えるAI”を手早く作り、メドがついたら、より高度なエンジンの開発を検討することだ」(永用氏)
きりんカルテシステム様(事例紹介サイト)

AIを活用して所見データを正規化して蓄積できる仕組みを導入

スポーツの新価値創造へ画像認識AIで写真のタグ付け処理を効率化 

富士フイルムソフトウエア サービス本部 アドバンストソリューショングループ イメージワークスチーム チーム長 佐藤力氏

 富士フイルムソフトウエアは、写真やデザインの管理・共有クラウドサービス「IMAGE WORKS」を提供している。IMAGE WORKSは国内2000サイト以上でサービスを提供。2016年の伊勢・志摩サミットやG7広島外相会合のプレス向け写真提供サービスでも採用されている。このほどAIを活用した“スポーツにおける画像認識”を実現した。

 「IMAGE WORKSを活用している日本野球機構(NPB)では、AIとプロ野球記録データを活用し、プロ野球の試合写真へのタグ付け作業を効率化した。選手名情報自動タグ付け機能により、約4時間かかっていたタグ付けの作業時間が約30分まで短縮できた」(佐藤氏)

 「当たり前のことだが、プロジェクトは目的が先で、AIはあくまでも手段」とし、目的は球団職員の作業負荷を低減すること。そのために画像認識AIを活用し、写真に映っている選手を判別させて自動でタグ付けを行う。画像認識AIとして、Azureの「Cognitive Services」が採用されている。今後はこの仕組みをほかのスポーツにも拡大したいとしている。

 「マイクロソフトのAIを料理に例えると、いい食材だが、生では食べられない。料理を考えるのは利用者だが、いい調理器具や調味料(エンジニアやパートナーなど)はマイクロソフトがそろえているので、それらを活用してさらにおいしい料理を作ることができる。AI時代は複数の企業が協力して新しい価値を生み出していく“競争から共創への時代”。コミュニティー、コミュニケーション、コラボレーションの3Cが重要になる」(佐藤氏)
富士フイルムソフトウエア様(事例紹介サイト)

画像認識AIを活用し、写真の選手を自動判別

AIによる内視鏡画像診断支援など“共創からのサービス創出”へ

オリンパス 取締役専務執行役員 技術統括役員(CIO)兼 技術開発部門長 小川治男氏

 オリンパスはディープラーニングを活用して、走っているレーシングカーのドライバーのヘルメットにピントを合わせたりするなど、被写体に自動的にフォーカスするAI搭載カメラを発表している。また現在では事業の8割を占める医療機器分野では、昭和大学横浜市北部病院、名古屋大学大学院、サイバネットシステムにより開発された大腸ポリープを診断するAI搭載の内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN」の国内における独占販売権を取得するなど、AIを活用した新しいビジネスを市場に送り出しており、これに続くソリューションビジネスの開発を進めている。

 「デジタルカメラ事業において、スマートフォンの登場による破壊的なイノベーションをわれわれは経験した。同じことが医療分野のみならず、全ての分野で起きる可能性がある」(小川氏)

 そこで2年前に「イノベーション技術戦略」を策定。イノベーションのジレンマに陥らないための取り組みを始めた。現在、研究開発費の約10%をイノベーション分野に投資。また、CTO直轄でイノベーション推進室を設立し、自前主義から脱却して企業間連携や産学連携によるオリンパス流のオープンイノベーション「クロスイノベーション=共創」も推進している。

 まだ1年半の取り組みだが、EndoBRAINをはじめ、AIを実装したさまざまなサービスが登場している。ただし、サービスを乱立させてしまうと、サービス間のシナジーが生まれにくくなる。そこで、ICT-AIプラットフォームをグローバル基盤として設計し、そのシステム基盤にはMicrosoft Azureを採用した。

 「医療分野、映像分野、ライフサイエンス分野、産業分野などで、オリンパスが培ってきたさまざまなテクノロジーとAIを組み合わせることによって、社会の課題を多くの皆さまとのクロスイノベーションによって解決し、健康で安心、安全な社会を実現したいと考えている」(小川氏)
オリンパス様の取り組みに関するプレスリリース

イノベーションを目指して次々と芽吹く「マイクロソフトAI活用ビジネス」

 その他、セッションで紹介されたマイクロソフトAIの活用事例を紹介する。

 トライアルカンパニーでは、AIカメラによる店内の認知などを行っている。ウォークスルー型決済、スマホアプリの活用などのプラットフォームとしてAzureを活用している。

 JTBとNAVITIMEは、Hackfestによるアジリティ開発で、AIチャットボットやAPI連携エコシステムの試作版を4日間で完成し、3カ月でリリースした。
JTB様(事例紹介サイト)

 渋谷区では、「Rinna Character Platform」を活用した、AIキャラクター「渋谷みらい」を開発。リアルタイムの会話で「渋谷区基本構想」や行政の施策を啓蒙している。
渋谷区様(事例紹介サイト)

 電通と資生堂は、日本初の「人工知能型 OOH広告」を2カ月間でリリース。センサーで視線を検知し、AIによる分析で属性情報を可視化して、最適なインタラクティブ広告を表示できるようになった。
電通様(事例紹介サイト)

 近畿大学ではIoTカメラでポンプ内の養殖稚魚の供給量を監視し、画像をリアルタイムに解析。稚魚の数と選別者の作業を機械学習させることで、ポンプの流量調節作業の自動化にAIを活用している。
近畿大学様(事例紹介サイト)

 仕事や生活のあらゆる場面でAIの活用が加速している。8社の事例を紹介したが、すでに国内でも多くの業界で活用され、実績が出ている。マイクロソフトはこのようにAI分野でも、さまざまなサービスを用意しお客様を支援している。

デジタル化でやるべきことは、まだまだたくさんある

三井住友フィナンシャルグループ 取締役 執行役専務 谷崎勝教氏

 クロージングセッションには、IT Leaders xChangeの会長を務める三井住友フィナンシャルグループ 取締役 執行役専務の谷崎勝教氏が登壇。「デジタル化というキーワードは、多くの企業にとって今後も重要なポイント。デジタルトランスフォーメーション(DX)を追及していかなければならない」と訴えた。

 三井住友フィナンシャルグループでは、働き方改革を推進する一環としてMicrosoft Azureを採用することで、働き方改革や店舗改革などに取り組んでいる。谷崎氏は「金融機関ではクラウドの活用が“ご法度”なイメージがあったが、Office 365の採用がブレイクスルーとなった。今後はAIも活用し、働き方改革を積極的に推進していきたい」と語る。

 「AIの登場で“無くなる産業”の1つと言われ、いまや銀行は就職先として不人気。しかし銀行は、数字に基づいてお客様にサービスを提供する産業であり、最もデジタル化が効果を生む産業でもある。デジタル化により、ムダな業務をなくし、新たなサービスを創出するためのチャレンジができる面白い業界だと信じている」(谷崎氏)

 その一環として取り組む国内400店舗の改革では、店舗に来ることなくモバイルで簡単に取引ができる「顧客接点の改革」、後方事務をシステム化することで余剰力を顧客向けの事務処理にあてる「事務処理の改革」、これまで7割だった行員スペースをお客様スペース8割にする「店舗の改革」の3つを推進しながら、顧客サービスの向上に取り組んでいる。

 最後に谷崎氏は「デジタル化でやるべきことは、まだまだたくさんある。今後もマイクロソフトをパートナーとし、マイクロソフトの技術を活用して、お客様、企業の皆様、三井住友フィナンシャルグループが“協創”することで、DXを推進し、新たな価値を創出していきたい」と締めくくった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2019年4月30日