ニッポンのDXをグローバルレベルへ底上げ アピリオが目指す最適なDX支援戦略とは?

2021年1月14日(日本時間)に開催された「Helix 2021」は、「新しい価値を導き出し、未来を拓く」をテーマに掲げたバーチャルイベントだ。本稿では、アピリオが実施したHelix 2021での2つの講演内容とともに、代表取締役社長である藤井 一弘氏へのインタビューを踏まえて同社が注力する日本企業へのDX支援戦略を紹介する。

» 2021年03月01日 10時00分 公開
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最先端のバーチャル・エクスペリエンスを体感できる「Helix 2021」

 Helix 2021では、リアルの総合展示会さながらの多種多様なコンテンツが来場者を大いに楽しませた。米州、欧州、そしてアジアをカバーすべく、「メインステージ」では21時間にわたり、基調講演や顧客事例、最新のソリューション紹介などのセッションが繰り広げられた。また、業界別に有益な情報を提供する「インダストリー・ショーケース」や革新的な製品やソリューションを展示する「ソリューション・ギャラリー」、予約制ミーティングルーム「Connect」、休憩時間を有意義に過ごせる「ザ・バー」なども設けられた。

Helix 2021

 同イベントを主催するAppirioは、2006年に米国で創業以来、クラウド技術に特化したコンサルティング事業を展開する企業だ。特にビジネス向けSaaS分野をけん引する「セールスフォース・ドットコム」のグローバルに展開する、「コンサルティング・パートナー」としてクラウドを基盤とする各種のソリューションを提供することで、グローバルで幅広い業界・業種における顧客企業の課題解決を支援してきた。

 初の海外拠点として2008年に設立された日本法人アピリオは、セールスフォース・ドットコムが初めて手掛けた日本での大規模なプロジェクトの成功にも貢献。2020年7月、同社の代表取締役社長に藤井一弘氏が就任し、顧客企業のデジタル変革(DX)に注力する姿勢を打ち出している。

DXへの出遅れ感がある日本、「グローバルレベルに引き上げるお手伝いをしたい」

アピリオ 代表取締役社長 藤井 一弘氏

 35年以上エンタープライズ向けIT業界における経歴を持つ藤井氏。IBMやOracle、Microsoftなどでハードウェアやソフトウェア、SI事業、アウトソーシングなどの要職を務め、ベライゾン日本法人社長やSaaS製品の日本法人カントリーマネージャーなどを歴任してきた。

 藤井氏は「アピリオではお客様に寄り添い、コンサルティングから始まり、アジャイル開発を軸とする実装、さらに保守や定着化までを含めた一気通貫のソリューションを提供しているので、お客様と一緒にビジネスをどう伸ばしていくのかを、間近でお手伝いすることができる。大変なこともあるが、とてもやりがいのある仕事だと感じている」と話す。

 また、このコロナ禍によって浮き彫りになったこととして、藤井氏は「官民を含めた日本全体のDXに対する出遅れ感」を指摘する。「今回のイベントではコロナ禍のネガティブ面だけではなく、それをチャンスだと捉える内容も多く盛り込まれていた。少し大げさかもしれないが、日本企業のDXをグローバルレベルまで引き上げるため、お役に立ちたい」と藤井氏は話す。

実店舗とオンラインを融合させた「シームレス・コマース」とは?

 今回のHelixでは、アピリオ日本法人による2つのセッションが実施された。同社が日本企業のDXをどう支援できるのかについて、具体的な事例を交えながら紹介された。

アピリオ コンサルティング本部 本部長 山田 茂氏

 まず、アピリオでコンサルティング本部長を務める山田茂氏が「マルチクラウドで期待以上のショッピング・エクスペリエンスを実現 〜 シームレス・コマースでお客様満足度を向上するサービスを提供 〜」と題したセッションに登場した。

 経済産業省が2020年7月に発表した「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、2019年(令和元年)の日本国内のBtoC向けEC(消費者向け電子商取引)市場規模は「前年比7.65%増の19.4兆円」に拡大しているという。さらに、2025年の同市場の規模予測は、2019年度比の約1.4倍に相当する「27兆円」と予測されている。

「小売り業界におけるオンライン化は今後必須となり、実店舗との連携によるシームレスな顧客体験を実現することがビジネスの拡大機会になることは明白だ」と山田氏。

 さらに山田氏は、シームレス・コマースの定義として「商品の選択から代金の支払い、購入、そして商品の受け取りまでのプロセスをまったく意識することなく、実店舗とデジタルを融合した購買体験を提供する仕組み」と解説。その実現における最も重要な要素として「お客様を中心としたデータの統合」を挙げた。

 例えば、顧客の嗜好を分析・統合することで、個々人にとって意味のある情報を提供し、より効率的にショッピングを楽しんでもらえるという。また、実際に商品を購入する際には在庫の有無や流通経路、配送時間など、商品の受け取り時に利便性を考慮した配送方法などを把握する必要があると説明する。

 山田氏は「これらの情報を統合するためには、複数のクラウド環境を連携して管理できる仕組みが求められる」とし、その具体的なシステム像として「Marketing Cloud」や「Experience Cloud(旧Community Cloud)」などのセールスフォース・ドットコムが提供するサービス群をデータ連携基盤「MuleSoft」でデータ連携する例を挙げた。

マルチクラウド環境によるシームレス・コマースのシステムイメージ

 実際、国内の小売企業とDXプロジェクトを進めているとみられ、セッションでは顧客のショッピング体験がどのように進化していくのかを紹介するデモビデオも流された。

DXの最初の一歩を支援する「DXアクセラレーションサービス」

アピリオ コンサルティング本部 事業戦略ディレクター 小松 広治氏

 次に、アピリオのコンサルティング本部で事業戦略ディレクターを務める小松広治氏が「デジタル変革を加速するDXアクセラレーションサービスのご紹介〜Salesforce を活用しお客様の取り組みを実現する 〜」というテーマで講演した。

 まず小松氏は、DX推進の一般的なアプローチとして「目指すべき最終形の姿であるゴールを定義し、現場との対比からそこに至るまでの道筋(ロードマップ)を明確にした上で、最初のステップに踏み出すことだ」と解説した。

 しかし、実際には「自社のDXのあるべき姿を明確にイメージできなかったり、その定義づけに時間と労力を要したりするようなケースもある。また、構想はあるものの具体的なアクションにつながらず、その計画が“絵に描いた餅”になるなど、実施に必要なスキルやノウハウ、パワーが不足して結果的に上手に進められていないという声も聞く」(同氏)

 小松氏は、DX推進において特に考慮すべき観点として「将来像の定義」「最初のステップの踏み出し方」「DX成熟度向上への道筋」の3つの方向性を挙げた。

DX推進で重要な3つの観点とアプリオが提供するDX支援サービス

 アピリオでは、これらの方向性をカバーするため「DXアクセラレーションサービス」「DXインテグレーションサービス」「DX Thrive(スライヴ)サービス」を3本の柱として、顧客のDX推進を支援しているという。

 DXアクセラレーションサービスの特徴について、小松氏は「最初の一歩を確実に踏み出し、かつ将来の絵姿を同時進行で明確化していく」と紹介した。同サービスでは、アピリオのアクセラレーションチームがお客様の体制の一部となって、他のベンダーの役割分担や協力のもとで全体アーキテクチャの構成を支援するという。

 続いて小松氏は、実際の同サービスの適用事例として、新規ビジネスの立ち上げを複数の海外拠点で同時展開することを最重要施策として掲げた企業の事例を紹介した。同社では、市場シェア獲得のため、スピード最優先で施策の実現を支える基盤の立ち上げが急務となっていたという。

 小松氏は「Salesforceを顧客接点の中核基盤に位置付け、異なるクラウド・サービスとの連携を行うことでビジネスプロセスを連動させた。それにより、ビジネスプロセスを一貫したSCMプロセスの自動化基盤で短期に立ち上げることができ、参画開始から約半年で新たなビジネスモデルの適用を開始することができた」と話す。

博報堂との戦略的パートナーシップも締結、さらに活躍の場が広がる

 2つのセッションの終了後、バーチャルミーティングルーム「Connect」に場を移して藤井社長にあらためて同社の強みや今後の展望などを聞くことができた。

 藤井氏は、自社が持つ強みとして「グローバルで豊富な人材がいる」「多くの成功事例を持っている」の2点を挙げる。同氏によると、海外を含めた多拠点で事業展開する製造業の場合、拠点ごとに独自の基盤を使用するなどガバナンスが統一されていないことがあるという。「世界各地にいるわれわれのスタッフが現地対応することで、グローバルでの標準化や統一化を支援するプロジェクトにも取り組んでいる。その結果、グローバルで戦う日本企業のオペレーションの質やアジリティの向上にも貢献できている」(同氏)。

 また、「幅広い業種・業態での成功事例があり、グローバル基準によるDXのあるべき姿や最適な施策実施などをお手伝いすることもできる」と自信ものぞかせる。

 アピリオでは今後もDX推進の支援や最先端の顧客体験の創出に注力する方針だ。2021年2月には、博報堂との戦略的パートナーシップの提携を発表した。

アピリオと博報堂による「マーケティングプラットフォーム変革」の全体像

 今回の提携では、Salesforceをはじめとするクラウド基盤によって、ばらばらだったマーケティング施策を一元化してマーケティング効果の最大化を目指す「マーケティングプラットフォーム変革」チームを組成するという。

 同社は現在、Salesforceを軸とするクラウドコンサルティングの他にも、マーケティングやエレクトリック・コマース、レガシーマイグレーション分野なども手掛けている。企業ミッションとして掲げる「最適なワーカーとカスタマーのエクスペリエンスの実現を支援する」ため、また新たな領域での取り組みが始まった。

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提供:株式会社アピリオ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2021年3月31日