ソニーに学ぶ、新規事業で成果を上げる仕組みづくり

経営資源に恵まれていながらうまく活用できていない大企業が、どのようにイノベーションを創出し、新規事業で成果を上げていけばよいのか。そのポイントをソニーから学ぶ。

» 2021年03月23日 10時00分 公開
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ソニー Startup Acceleration部門 副部門長 小田島伸至氏

 「スマートフォン市場が本格化する前の2007年〜2011年、当時シェアがゼロだった欧州市場に液晶ディスプレイを売り込むという事業を立ち上げ、数年で数百億円の事業に成長させることができました。欧州赴任時は、人脈もノウハウもなく、本当に大変でしたが、ゼロからの立ち上げはとても良い経験になりました。このとき、事前に特別なコーチングを受けたわけではなくほぼ独学でしたが、振り返ってみると、成功するという強い意志があったように感じます」

 こう話すのは、ソニー Startup Acceleration部門 副部門長の小田島伸至氏だ。

 幸運もありながら、自身の突破力で大きなビジネスを成功させ、本社の戦略スタッフとして帰国してみると、社内には新規事業を立ち上げるための制度や受け皿がなく、事業開発人材の育成の仕組みも整っていない状況だった。

 大企業は、経営資源には恵まれているものの、事業開発という視点で考えると人材は豊かではない。大手企業の人材採用は、事業開発のための人材を採用するのではなく、業務を遂行するための人材を採用する傾向が強いからだ。そのため新規事業を立ち上げる場合には、外部から実績のある経験者を引き抜いてくることが多いだろう。

 「業務を担当している社員にいきなり新規事業の立ち上げを任せるのは、泳げない人に泳げといっているようなもので無理があります」(小田島氏)。

 企業の将来を考えれば、意図的に新しい事業を生み出すことが必要になるが、大企業には売り上げの柱となる既存の事業があり、これも新しい取り組みを阻害する。新規事業の抵抗勢力となり、しばしばバトルに発展することもある。さらに時代の変化のスピードが速く、かつてのように新規事業の立ち上げに数年もかけていられない。

 「ユーザーは飽きるのも早い。迅速に事業化できないと、グローバル市場で競争に勝ち抜くことはできません」と小田島氏は話す。そこで必要となるのが、企業内の新規事業立ち上げを阻害しているという「ノウハウ不足」「組織や仕組みの欠如」「人材不足」3つの課題を解決するための仕組みづくりである。

新規事業立ち上げの「作法」を「実戦」で学べる場がSSAP

 大企業に新規事業を立ち上げることができる人材が少ないのは、一部の「できる人」しか立ち上げる経験が積めないためだ。年功序列ではなく、能力のある人を登用し、まずは実戦経験を積ませることが新規事業を成功に導くための最大のポイントだ。実戦までに10年も20年も待たせるのではなく、なるべく早くお金の稼ぎ方や事業の作り方を経験させることが組織として重要になる。

 「ソニーでもそうですが、実戦の場を与えないと、僕ならこんなことができるのにという社員ばかり増えてしまいます。彼らはシャドーボクシングはできても、実際のストリートファイトになるとやられっぱなしでパンチひとつ打ち返せません。英語を勉強していても、ビジネスの場では会話すらできない経験をした人は多いのではないでしょうか」(小田島氏)。

 新規事業づくりは、未知への対応と、不確実性への対応でもある。実弾による実践での学びは普段の仕事にも使えるし、さらには収束の見通しが立たないコロナ禍の対応にも指針を与えてくれるだろう。未知のものや不確実性に委縮して、何もせずに立ち止まるのではなく、自分なりに考えてアプローチし、うまくいったものを取り入れていくことはビジネスそのものであり、多くの若い社員がそれを肌感覚で身につけることができれば、組織全体の底上げになる。

 小田島氏は、「新規事業の立ち上げには、ある一定の作法があります。野球のようなメジャーなスポーツと同じです。教え方が確立されていて、それと同じです。才能のある人はすぐに能力を発揮できるようになります」と話す。新規事業立ち上げの作法を学ぶ場として開設されたのが、Sony Startup Acceleration Program(SSAP)だ。

 SSAPは、ソニーが所有する起業のノウハウや開発環境を生かし、新規事業の立ち上げから販売、拡大までをサポートするプログラム。2014年4月より、社内起業用の仕組みとしてスタートし、2018年10月からは社外向けのサービス提供も開始している。SSAPでは、事業が作られていく過程を、以下の4つのサービスに分け、アイデア出しから事業創出、事業拡大までの実践の場として、一気通貫でサポートしている。

(1)Ideation:アイデアの発想と可視化を支援する。

(2)Incubation:アイデアの事業性検証と事業準備を支援する。

(3)Marketing:初期マーケティング活動を支援する。

(4)Expansion:新規事業のさらなる拡大に向けて、協業や資金調達、または戦略的提携を企画から実行まで一気通貫で支援する。

図1:スタートアップを支援する4つのサービス

 SSAPでは、サービスごとの専門のスタッフが、段階的に成長できるように支援する。専門スタッフは、社内外の人材で構成されており、社内のメンバーは、ソニーで実績のある人材で、事業経験を生かしたサポートを提供でき、社外の人材は、ゼロからビジネスを作り上げた経験者だ。

 現在、社外向けのサービス提供を開始して約2年になるが、すでに13業界、85件の新規事業をサポート。SSAPを採用した業界としては、医療・ヘルスケア、教育、素材・繊維、飲料、農業、自動車、銀行、食料品などさまざま。それぞれの業界の新規事業部門、人事部門、R&D部門、事業部門などの担当者がSSAPに参加している。

 「SSAPに参加して、事業部のリーダーになっている社員は、1度リーダーになると、明日もリーダー、1年後もリーダーです。実戦を経験しないと、1年後でもリーダーにはなれません。小さくてもいいから、早めに経験することが重要です。そして、実戦だからこそ成功にこだわり、たとえ失敗してもそれが学びになります。勉強だからと思っていると、勉強のための勉強で終わってしまいます」(小田島氏)。

 SSAPには、新規事業開発に特化したサポートをしてほしいという要望が多く、研修形式もあれば、各社の担当者が集まって、ブートキャンプのように新規事業の立ち上げをサポートすることもある。さまざまな分野の専門スタッフがいるので、アドバイスにもリアリティーがあり、それが高く評価されているという。

京セラ、ライオン、ソニーのコラボレーションで誕生したPossi

 SSAPの事例としては、住宅の玄関を後付けで自動ドアに変えることができるLIXILの「DOAC(ドアック)」や、ブラシを歯に当てると音楽が聴こえる京セラの仕上げ磨き専用歯ブラシ「Possi(ポッシ)」などがある。これらは、約1年でクラウドファンディングによる社会実装を実現した。社会実装までのプロセスは、まずアイデアを「可視化する、次に検証する、社会に出す、さらに黒字化するというステップになる。

 京セラの事例は、1人のR&D担当者がコアデバイスを使ってコンシューマー向け商品を作りたいという提案から始まった。まずは、そのコアデバイスを使って、何が作れるかを議論。コアデバイスは骨伝導の働きを有する圧電セラミック素子だったが、京セラの携帯電話に搭載されたパネル振動レシーバとして、すでに1000万台以上が市場投入されていたことから、いろいろ考えて決定した最終的なアイデアが音の出る歯ブラシだった。

 初期段階の最大のポイントは、期日を決めてアイデアを見える化することだ。期日までに思い付いたら掘り下げ、最終的に思い付かなかったらやめる判断をすることが重要になる。

 Possiではそのアイデアは固まったが、京セラが持っていたのはコアデバイスで、歯ブラシの製造など必要な技術は京セラにはないもの。そこで、歯ブラシはライオンとコラボレーション、ソニーは新しい歯ブラシにふさわしい斬新なデザインや楽曲面などをサポートし実現した。

 「歯に当てると音楽が流れる歯ブラシは、小さい子どもが歯磨きを嫌がるという課題を解決し、楽しく歯磨きをしてくれます。もっとマクロに言えば、ヒューマンオーギュメンテーションという、人間の身体を拡張していくというものにもつながります。ターゲットセグメントは限られますが、重要なのは3社がものすごいスピードで、商品を世の中に出すために取り組んだこと。その成果はお客さまにしっかりと刺さっています」(小田島氏)。

 SSAPのミッションは、スタートアップの育成とオープンイノベーションである。大企業でも、ベンチャー企業でも、人材やノウハウが不足していて新規事業が立ち上がらないという課題を抱えている。そこでSSAPの専門家が、新規事業の立ち上げをサポートする。コラボレーションのセグメントには、大学やNPOも含まれているという。

 「大学には、明日の起業家を育成することを目的に、事業育成プログラムを利用してもらっています。一方、NPOはベンチャー企業の育成を目的にコラボレーションしています。NPOの最大の事例は、ソニーがグローバル企業として世界で初めてイノベーション領域における協業契約を結んだ国連(UNOPS)です。とはいえ、SSAPのコラボレーションの軸は大手企業であり、ベンチャー企業と大手企業の連携も大きな狙いとしています」(小田島氏)

人材育成と事業開発、組織開発の3つを同時に実現できることがSSAPの強み

 SSAPが軌道に乗り、さまざまなコラボレーションが進む中、その目指すべき方向性も次第に明確になってきた。それは社会課題の解決だ。

 「SDGs(持続可能な開発目標)が注目を集めていますが、医療・ヘルスケアの問題、海や森の問題、気候の問題など、山積みの社会課題を解決していくには、持続可能な事業にする必要があります。そのための人材を、とにかくたくさん増やしたいと考えています」(小田島氏)。

 人材が増えても、所属する組織がサイロ化しては、問題解決が困難になる。そこで、企業と企業が有機的に連携することも重要になる。トップ同士が合意するM&Aのような高いハードルではなく、もっと担当者レベルでコラボレーションができる仕組み作りを目指している。

 「SSAPは、当初はソニーの社内向けのプログラムでしたが、社外の人とコラボレーションするときに、なぜコラボレーションするのかを考えると社会課題の解決でした。ソニーだけでは社会課題を解決できません。社外も含めて仲間を増やしていくことを考えなければいけませんし、ソニーとしても、もっと多くのアイデアや人材と協業できるチャンスが生まれることが期待できます」(小田島氏)。

 事業開発と人材育成、組織開発の3つを同時に実現できるプログラムは他社にはないSSAPの強みだ。社会実装できるアイデアがそろっていて、ソニーやベンチャー企業で事業に取り組んでいるメンバーがサポートしてくれるのもユニークな特徴で、それらを紹介する説明会も定期的に行われている。まずは小田島氏の話す通り、「経験する」ことが第一歩となるだろう。

図2:短期間で成果が見込めるSSAP

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提供:ソニー株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2021年4月22日

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