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【第1回】広告の世界を変えたネット――広告代理店のIT部門は今Web2.0時代に挑む広告代理店

インターネットは広告の世界を一変させている。メディアの変化に対応するため、年商1億4400万ドルを誇る広告代理店のIT部門も変身を遂げた――。

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 数年前、広告代理店のアーノルドワールドワイドで副社長兼ITディレクターを務めるグレッグ・フォルサム氏は、インターネット閲覧監視ソフトウェアをテストするため、ポルノサイトへのアクセスを遮断した。

 その約5分後、フォルサム氏の電話が鳴った。アダルトコンテンツを見ることができなくなったという苦情だった。クリエイティブ業務に必要な調査に支障があるということらしかった。フォルサム氏はポルノサイトへのアクセスを復活させた。

 「素晴らしい職場だ。何でも正当化できる」と、フォルサム氏は笑う。


アーノルドワールドワイドの副社長兼ITディレクター、グレッグ・フォルサム氏は、アイデアを迅速に形にするための技術や、広告効果を定量化する技術を導入した。これらは同社がオンライン広告の世界に適応するのに役立っている。

 ボストンに本社を置くアーノルドは、米国の広告代理店上位20社の一角を占め、フォルクスワーゲンやジャックダニエルズといったクライアントで展開している革新的なキャンペーンで知られる。とはいえ、売上規模的には中堅企業。激動の渦中にある、競争の激しい市場だ。その背景には、新しい技術が従来の広告チャネルに多大なインパクトを与えていることがある。

 「広告の技術や運営は、メディアや消費者の動きに大きく後れを取っている。昔ながらの広告のやり方がいまだに数多く見られる。広告代理店はメディアの新しい潮流に適応するのに苦労している」と、ガートナーの広告アナリスト、アンドリュー・フランク氏は指摘する。

 フォレスターリサーチの最近の調査では、広告業界のそうした適応状況に対する評価が、広告代理店とクライアントの間で大きく食い違っていることが明らかになった。例えば「広告代理店はオンライン広告の変化に対応する準備が十分できている」と回答した割合が、広告代理店で90%に上ったのに対し、企業のマーケティング幹部の間では50%にとどまった。

 「この調査結果は、広告代理店の対応が非常に立ち遅れていることを示している」と、フォレスターリサーチのアナリスト、エラナ・アンダーソン氏は語る。

 「マーケティング関係者は技術に関して、10年前よりも格段に高い理解力を求められている。というのも、現在のマーケティング環境には技術の影響が強く働いているからだ。技術は消費者の行動を変えつつある。例えば、消費者はもうテレビにかじりついていない。また、分析などの分野に新しい技術が登場し、マーケティング関係者はそれを活用した方法で視聴者の動向を把握して、的確なアプローチをとることが可能になっている」

 アーノルドは、こうした新しい環境への適応に取り組んでいる。同社は2006年、クリエイティブ体制の再構築に投資し、ダイレクトマーケティングなど縦割りの部門組織に替えて、部門横断型のチーム(アーノルドでは「トライブ=部族、仲間の意」と呼んでいる)を設置した。組織の壁を取り払い、創造性と自由な発想を促進するのがその狙いだ。

 「クライアントの成功がわれわれの成功だ」と、アーノルドのボストンオフィスの社長を務めるパム・ハムリン氏は語る。「広告の成果が測定できることは、クライアントにとってはあくまで2番目に重要なこと。一番肝心なのはアイデアの質だ。本当に問題となるのは、どんな成果が得られるかということ」と言う。

 フォルサム氏とほか16人で構成するIT部門は、成熟企業が必要とする、より標準化されたビジネスプロセスの導入を推進し、ビジネス発展を支援することに取り組んでいる。2007年は新ワークフローシステムの立ち上げなどを行っている。フォルサム氏が取り組んでいる課題は、中堅企業のCIOの多くが共通に抱えているものでもある。

 「会社はどのようなITを求めているか。どのようなツールがあれば、IT部門は次のレベルに進んでいけるか。自分に問いかけている」(フォルサム氏)。

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