日通に見るグローバル物流、生き残りの条件(2/2 ページ)
物流は経済活動の根幹を支える重要機能だ。その重要性は近年にさらに増しており、ユーザーから寄せられる要求も高度化。日本通運の川合正矩社長は「グローバル化への適切な対応は生き残るために不可欠だ」と語る。
業務の可視化に向けRFIDの活用にも着手
物流の高度化にはITの取り組みは不可欠だ。「過去、物流はモノの配送経過が顧客からまったく分からないため“暗黒大陸”と呼ばれていたが、今ではICTが見える物流を可能にした」と、川合氏は言う。
GPSとGISを組み合わせて、配車の自動化や運行管理を行える「Transportation Management System」を構築しており、世界各国の拠点で管理する製品・部品の照会/管理や出荷指示登録機能を顧客に提供する遠隔在庫管理システム「REWARDS」も整備済み。
情報精度の向上に向けてはRFIDも積極的に取り入れている。各種の実証実験への参加だけでなく、実際に利用するコンテナへの添付も進めている。
「この意義は非常に大きい」(川合氏)
物流「+α」で3PLの顧客拡大を図る
包括的に物流業務を委託するサード・パーティー・ロジスティクス(3PL)は、荷主企業に在庫圧縮やキャッシュフローの改善効果をもたらすとして、近年、利用が急速に伸びている分野だという。
日通では、長年にわたって培ってきたオペレーション能力とシステム設計・提案能力を武器に、付加サービスを組み合わせた提案に力を入れている。
例えば、通販業者向けの物流サービスと決済サービスを組み合わせサービスもその1つ。「今後は新たに設立した金融決済サービス会社を活用して、同様のサービスを企業間取引の用途で戦略的に提案していく計画だ」
モーダルシフトへも積極的
グローバル物流企業にとっては、CSRの観点からグリーン化に積極的に取り組む責任もある。
日通では、環境に配慮したハイブリッド車やCNG車も積極的に採用するだけでなく、幹線物流をトラックから鉄道や輸送船に切り替えるモーダルシフトにも本腰を入れており、JR貨物などと共同開発で「スーパーグリーンシャトル列車」も開発した。
この列車は、10トントラックで従来輸送していた貨物を、ロットを変えることなく31フィートコンテナで、毎日シャトルのように往復して運ぶことができる。この新型列車によって、年間で最大8145トンのCO2の削減が見込まれるという。
また、これまで使い捨てだった引越用の資材を繰り返し利用する引越サービス「えころじこんぽ」は、同社のユニークな取り組みとして知られる。この資材は国土交通大臣賞の栄冠に輝いた。
「当社ではこれまでにも、トラックに運行記録計を取り付け、燃費の良い運転をドライバーに促すなど、グリーン化に向け地道な努力を行ってきた。今後は高い提案能力を武器に、顧客に対して共同配送の促進などを勧めることで改正省エネ法への対応を進める考えだ」(川合氏)
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