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「偽表示」「偽公約」――2008年に高まるポストインシデントのリスクコントロールの重要性【年末年始特別企画】コミュニティーリーダーが占う、2008年大予測

「2007年の漢字」に選ばれたのは「偽」だった。どの企業の経営陣も企業不祥事や事故・事件を起こしたい、などと思っている人は存在しないだろう。

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 日本漢字能力検定協会が全国公募した「2007年の漢字」に選ばれたのは「偽」だったそうである。確かに、振り返ってみれば納得がいく。私たちは、テレビ画面で、企業の経営陣がカメラに向かって頭を下げる場面を何度目にしただろうか。

年月 代表的な不祥事
2007年1月 不二家問題。期限切れシュークリーム販売。不二家は山崎パン傘下へ
2007年6月 ミートホープ 牛肉コロッケの材料の虚偽表示
2007年8月 北海道名物「白い恋人」問題。製造年月日を書き換えて販売
2007年10月 赤福 製造年月日偽装表示 冷凍餡の再利用も
2007年11月 船場吉兆 各種食品偽装

 正直なところ「もういい加減にしてくれ」と思った人も多かったと思う。中には「賞味期限が過ぎても食えるんだから良いじゃないか」とコメントしていた著名人もいた。

 しかし、12月になって、今度は、国を揺るがすような「偽」話が持ち上がった。今年はじめに「2008年3月までに終了させる」と政府が宣言していた不明年金記録5000万件の名寄せ作業が、期限までには全く終了しないことが判明したのである。まさに「偽」の締めくくりとも言うべき事態であった。

ポストインシデントのリスクコントロール

 ここで論じたいのは「偽表示」「偽公約」そのものではない。問題は、こうした事件が公になった後の「リスクマネジメント」「リスクコントロール」である。おそらく、多くの人は、赤福や船場吉兆の事件発覚後の記者会見の様子を見て「あの対応が、ますます傷を深くした」と思われたのではないだろうか。

 企業不祥事を正当化するつもりはないが、過去を振り返ってみると、同じような事故・事件を起こしながら、その後の対応、対外姿勢の差で、企業のダメージに大きな差が出ているのに気づく。

 例えば2004〜5年に幾つかのB to C企業で広く知られた事件が起きた。そのうちの1件は、九州に本社を持つ著名な通販会社であるが、元社員が51万件の顧客情報を持ち出していたことが判明したのである。

 ただ、この会社の対応は非常に素早く、事件発覚後、直ちに約2カ月間の販売自粛。自社が確保していたテレビ放送枠で社長自らが連日、謝罪と報告を行った。さらに、迅速な対策委員会の設置と原因究明の開始など、結果として、同社は、むしろ会社としての、そして経営者としての真摯な取り組みが評価される結果となった。

 他方、その翌年、製品価格比較を提供するWebサイトが不正アクセスを受け、ウイルス感染し、サイトを閉鎖する被害に見舞われた。このケースでは、不正アクセスが発覚してから、4日間、情報を公表せずにサイトを運営し続けたこと、不正アクセスを公表した後も会社の対応や技術問題などの情報公開が遅れたことで、長く批判され「Webビジネスを展開するIT先進企業の割にはセキュリティ意識がお粗末」との烙印を押されていた。

 経営陣自らが不祥事に積極的に関与していた、食品偽装の例のようなケースは別にして、一般的には、どの企業の経営陣も企業不祥事や事故・事件を起こしたい、などと思っている人は存在しないだろう。どの会社も「コンプライアンスには万全を尽くしたい」と思っているはずである。

 しかし、企業が人間の集まりであり、人間は「過ちを犯す」存在であることを考えれば、企業の不祥事や事件・事故も尽きることはない。経営に携わる者として言えば「確率的に発生する」と思っておいたほうがよい。だとすれば「事件・事故が起きた後のリスクコントロール」特にメディアやネットへの対応が、今後は企業経営の大きな課題になってくると考えられる。

 2007年は、それを感じさせられた1年だった。そして2008年は、同じことを一層、痛感することになるような気がする。

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