2008年に注目される10のIT戦略テーマ:【年末年始特別企画】コミュニティーリーダーが占う、2008年大予測
ITRの調査によると、2008年のITは、統制と管理のステージを越えて、縁の下の力持ちという存在からビジネス革新の表舞台に押し上げる礎とする企業が増えそうだ。
IT調査会社のITRでは、毎年行っているIT投資動向調査の結果、クライアント企業から受ける質問や依頼されるプレゼンテーションの内容やクライアント企業へのヒアリングを加味し、多くの大手企業にとって重要と考えるIT戦略テーマを選定している。2008年に向けてITRが抽出した戦略テーマは、以下の10点である。
1.事業機会拡大のための戦略的IT適用
2.事業とITサービスの継続性の確保
3.経営と現場の見える化
4.ナレッジワーカーの情報活用力向上
5.データとコンテンツの統合管理環境の整備
6.エンドポイントの管理と保護体制の強化
7.ITインフラの柔軟性と拡張性の向上
8.IT関連契約の見直しとベンダー管理の強化
9.内部統制運用の効率化と自動化
10.IT部門とユーザー部門の人材力強化
2007年は、日本版SOX法への対応準備という観点から、統制と管理の強化が重視された傾向にある。しかし、統制と管理ばかりが重要視され、情報化やIT活用が阻害されることがあってはならない。リスクの低減、コスト削減、統制の強化などどちらかというと「守りの戦略」が支配的な傾向が続く中、先進的な企業ではビジネス環境の変化に適応し、競争を賢く勝ち抜いていくための「攻めの投資」に目を向けつつある。
昨今発表されている、さまざまな国際比較データにおいて、知的生産性、IT投資の増減傾向、新規IT投資比率といった指標において、日本は先進国最下位という結果が示されており、インドや中国を含む新興成長国からの追撃も著しいと言われている。
2008年で抽出した10のテーマの多くは、2007年以前にも取り上げられていたものであるが、新しい動きとしては「1.事業機会拡大のための戦略的IT適用」と「10.IT部門とユーザー部門の人材力強化」の2つがあげられる。
企業の国際競争力を強化する上でも、ビジネスに対して影響度の高い戦略的なIT活用と、長期的な競争優位を確保するためのIT環境の整備が迫られているといえよう。そして、ビジネスとITの連携性を高めていくためには、ビジネス人材とIT人材の交流や異動、マーケティング部門とIT部門の強い協力関係、顧客の声や評判を研究開発や商品企画の上流工程にフィードバックすることなどへの取組みが必要となり、IT部門はアイデアを形に変える人材の育成が急務と考えられる。
「4.ナレッジワーカーの情報活用力向上」では、これまで十分な成功を収めてこなかった公開蓄積型(経験やノウハウを持つ人が知恵を公開し、蓄積されたものを検索して利用するタイプの)ナレッジ・マネジメントに代わって、ブログやSNSなどのWeb2.0技術を活用した仲介型ナレッジ・マネジメントへの取組みが活発化するであろう。
2008年は、統制と管理のステージを越えて、ITは縁の下の力持ちという存在からビジネス革新の表舞台に押し上げるための礎となるなる年と位置づけられる。
内山悟志氏が主催するエグゼクティブ・コミュニティー
ITアナリストの内山悟志が、企業のIT戦略、ITマネジメント、ビジネスとITとの橋渡し、IT人材育成などについて、皆さんとの議論をナビゲートします。
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