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米大統領選挙、夏季オリンピック開催年のジンクスとは?――二分される世界経済・日本経済の読み方景気探検2008年を占う

2008年の景気の見方は悲観論と楽観論とに二分されている。景況感の悪化が昨年に引き続き今年も進み、それが経済の実体面にも大きく影響すると考える人にとって、2008年は景気腰折れの年と予想されるのだろう。

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 サブプライムローン問題、原油価格の高騰、生活必需品の値上げ、建築基準法改正の悪影響などによる景況感の悪化が昨年に引き続き今年も進み、それが世界経済・日本経済の実体面にも大きく影響すると考える人にとって、2008年は景気腰折れの年と予想されるのだろう。

 足元、必要以上に景況感が悪化している感じがするが、ニュース報道の多くが暗い社会現象であることも原因のひとつだろう。毎年年末に日本漢字能力検定協会が取りまとめ発表する世相を表す漢字は、07年は「偽」になった。発表時の清水寺貫主の「このような字が選ばれることは恥ずかしく悲憤に耐えない」という言葉が印象的だった。

 消費マインドなどのデータは弱い。例えば、11月分の消費者態度指数(一般世帯)は前月比39.8と03年12月以来の40割れとなってしまった。GDPベースの個人消費データなどがそれなりに底堅い動きを示しているのとは対照的だ。

 他の分野の明るいデータもある。機械受注は、7〜9月期で3四半期ぶりに増加に転じ10〜12月期も増加の見込みだ。先行きの設備投資の底堅さを示唆していよう。7〜9月分の鉱工業生産指数は前期比2.2%増と3四半期ぶりにしっかりした増加となった。鉱工業生産指数を製造工業予測指数で延長すると10〜12月期、1〜3月期も前期比増加が見込まれる。

 こうした足元のしっかりした実体面の数字は景気楽観論の材料になる。さらにジンクスも楽観論の裏付けになるものが多い。

大統領選と夏季オリンピックは好材料

 サブプライムローン問題への懸念から米国経済の先行きを心配する向きが多いが、米国経済全体でみると、なんとか景気腰折れは回避される可能性が高いだろう。08年は大統領選挙の年だ。ニクソン以降共和党の大統領の下では大統領選挙の年には経済成長率は上向いてきた。

 夏季オリンピックの年には、OECD諸国全体の実質GDP成長率は前年に比べて高くなる傾向がある。オリンピックは外国でも人々を元気づけ、景気を良くするイベントのひとつだ。

 ソウル大会の88年は4.4%増で87年の3.6%増より高かった。91年1.3%増に対しバルセロナ大会の92年は2.2%増。95年の2.6%増に対しアトランタ大会の96年は3.0%増。99年の3.3%に対しシドニー大会の2000年は4.0%増であった。03年の1.9%に対しアテネ大会の04年は3.1%増だ。

 北京大会の08年は、サブプライムローン問題からOECD全体の成長率も芳しくないのではという悲観論が強いが、夏季オリンピック開催年のジンクスが悪影響をどれだけカバーできるかが、米大統領選挙と景気のジンクスと並んで注目される。

 サブプライム問題などのマイナスの影響を乗り越えて、08年に世界経済・日本経済の息の長い緩やかな景気拡張が続く可能性は高いと考える。

たくもり・あきよし

「景気ウォッチャー調査研究会」委員。過去に「動向把握早期化委員会」委員、「景気動向指数の改善に関する調査研究会」委員などを歴任。著書は「ジンクスで読む日本経済」(東洋経済新報社)など。


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