IT活用で「偽」の時代からの転換を:間違いだらけのIT経営 2008年の展望(2/2 ページ)
2007年は深刻な問題が、余りにも多い年だった。2008年はこれらを克服しなければならない。今こそ、ITの出番だ。
一夜にして変化する経営環境
まず、企業の倫理観欠如問題への対応である。企業の倫理観や社会的責任を維持する方法はいろいろ考えられるが、具体的な形となる日本版SOX法を例に挙げよう。対象企業は、内部統制の整備で苦労をしているが、最低限の法対応が間に合ったとしてホッとしているとすれば、それは07年の仕事が辛うじて終わったに過ぎない。
むしろ、遅れているという認識を持つべきだ。SOX法への対応を、本来の意味である企業価値向上の基盤作りと捉えれば、08年の課題として、整備した制度を継続させ、業務標準化・運用コスト削減などの改善を重ねること、さらに収益力を高めるために、業務プロセスを可視化してマネジメント力をつけて行くことが求められる。そのために、ITを効果的に活用しなければならない。
次に、企業が厳しい状況の中で生き残るための施策である。特に08年は、経営は一夜にして変化する状況について行くこと、あるいは変化を先取りすることが求められる。
そのために、進歩するIT技術を積極的に取り入れて行かなければならない。例えば、時空を超えるモバイル端末の利用など、ユビキタス技術の応用に遅れをとってはならない。
SOAが、注目されている。業務システムや機能を部品化し、状況変化に柔軟に対応する考え方である。SOAの活用は、1つの方法である。
インターネット時代に、SaaSは安価で、最新の技術を容易に利用できると言われる。特に、中小企業には利用価値があろう。
環境問題は、ITにとっても無縁ではない。05年のわが国CO2排出量が、基準年の90年比8%増だが、ITシステム関連部門は44%強増と突出している。08年は、グリーンITが注目を浴びる。ベンダーが省電力機器を開発するというだけでなく、ユーザー企業も、電力使用量を削減するという課題を負う。
「情報会計」の制度化を
最後に、全ての基本となる人間重視・良心復活のテーマである。
このテーマを企業経営にフォーカスさせるなら、企業の活動自体が、業績追求だけでなく、従業員の働き甲斐や幸せを満たすことが求められ、さらに社会の公器として社会的責任を果たすこと、しかも積極的意味で社会に貢献することを求められる時代が本格的に始まるといっていいだろう。その基本にあるのは、人間重視と良心の復活だ。
そこに、ITはプラスの貢献をしなければならない。企業経営においてはデータ偏重に陥らないよう、人間の営む現場の直接確認をおろそかにせず、人間関係重視の日本的経営の長所を復活させ、人間とITの共存・融合を目指さなければならない。そのためには、何よりもトップが、それらを経営理念・方針として明確に示すべきである。一方、社会に対しては既に普及している「環境会計」「CSR会計」に加えて「情報会計」(自社内のITによる功罪をバランスシートに表す)を制度化し、社会に公表するくらいのことが求められよう。
08年は、ベンダー・ユーザー企業を問わず、トップ・経営者・CIO・システム部門関係者は、「企業は、世の中の深刻な問題を、ITで解決するのだ」「問題解決の大きな手段の1つは、他ならぬITだ」という強い意識と覚悟を持たなければならない。
ますおか・なおじろう
日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)
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