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【第6回】世にもおかしな日本のIT組織(6)〜「建前」と「本音」、日本企業の複雑怪奇なフロー三方一両得のIT論 IT部門がもう一度「力」をつける時(1/3 ページ)

私はこれまで幾度となく、紙の回付をなくそうとワークフローシステムを構築した。しかし、残念なことに定着させることができなかった。日本企業に適したワークフローシステムはまだすぐには実現できそうにない。

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 大手電機メーカーの情報システム部門に勤めていた私は、これまで幾度となく紙の回付をなくそうとワークフローシステムを構築した。しかし、残念なことに定着させることができなかった。

 ビジネスのスピードが勝敗を分ける時代に、本当に紙と判子の日本の商習慣を標準に意思決定をしていては、世界のスピードについていけるのか、心配でならないが、日本企業に適したワークフローシステムはすぐにはできそうにない。

 私は、日本においてワークフローシステムが紙と判子の回付に負ける原因は3つ考えている。

  1. 紙は見えるが、ワークフローシステムは見えない
  2. 経路が動的に変わる
  3. 非定型な添付書類が沢山ある

1.紙は見えるがワークフローシステムは見えない

 日本人は、紙をトリガー(きっかけ)に仕事を進めるという習慣がある。これだけ企業のシステム化が進んでも、長年の習慣というものだけは簡単には変えることができない。子供のころからPCと慣れ親しんだ20代〜30代の若い世代はPCの方が仕事をしやすいのだと思うが、私たちが入社した1980年ごろは、ワープロもなく手書きが主流だった。コンピュータシステムから出力される帳票は、毎朝、情報システム部門へ取りに行き、その出力帳票が手元に着くとやっと仕事が始まった。

 また、「業務の進捗を確認する」「課題を整理する」「対策を考える」ときには、必要な書類を時系列に整理して、紙をめくりながら理解・認識する。これが最も集中して思考を巡らせることができるスタイルなのだ。

 子供のころから机に向かって紙に字を書いて、考え、理解し、覚え、計算するという行為を繰り返してきた。どうも紙を机の上に並べて考える方が集中できるようだ。だから、電子データでも忘れてはいけないものや重要なものは、必ずプリントアウトして手元に置いておきたくなる。

 この行動はまさしく紙を中心に仕事をしている世代なのだと思う。ワークフローシステムを取り入れようとした私も、まさしくその世代だ。

 そして、会社の部門長以上の脇机の上には、決裁書の受付箱が置いてある。しかも木製でなんと仰々しいことか。その受付箱は「未決」「既決」「保留」という3つに区切られていて、紙文化の象徴している。

 当然、決裁書が回付されてくれば、部長の「未決」の箱に入る。席に戻れば、書類がどれだけ溜まっているかが一目で分かる。誰しも「決裁書を止めてはいけない」という意識はあるから、随時、決裁書に目を通し確認して回付する。すると、書類は「未決」ボックスから「既決」ボックスに移る。これを、定期的に秘書が「既決」ボックスから回収して、次の回付先に届く。遠隔拠点であれば、社内便で送られる。

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