資生堂・弦間氏が語る 価値あるブランド8つの条件(2/2 ページ)
1872年に日本初の洋風調剤薬局として誕生した資生堂。同社では「品質の良いものを適正な価格で」という創業者の創業理念を実践する際の指針「五大主義」の下、CSR活動やブランド価値の向上に取り組んでいる。
「五大主義」でブランド価値を向上させる
資生堂は1921年、社訓ともいえる五大主義を制定した。「品質本位主義、共存共栄主義、消費者主義、堅実主義、徳義尊重主義」から成るものだ。以来、同社は創業者の企業理念を実践するための経営哲学として、この五大主義を用い、さまざまな施策を展開してきた。ブランド価値の向上を図るための各種の取り組みもその1つである。
「消費者に商品の価格は相対的な価値基準であるのに対し、ブランドは絶対的な価値基準。創業者の“魂”と“五大主義”を踏まえ、ブランド価値の向上にとことんこだわってきた」(弦間氏)
もっとも、ブランドは言葉に記すと簡単だが、その本質は捉えにくい。弦間氏によると、高い価値を備えたブランドには次の8つの共通点があるという。
- 歴史や物語があること
- 研究と技術の蓄積があること
- 高品質でふさわしい価格であること
- 人から人に手渡しされること
- ブランドのポジショニングを高めるためにマーケティングに厳しい自己規制を行っていること
- 創業者、経営者の人間性が見えること
- 伝統を大切にしながら、絶えざる革新を行うバイタリティがあること
- 世界的であること
「海外で売れるのは本物の商品のみ。そして、本物の商品を生み出すためにはこれらの条件を満たすための、普遍的なアイデンティティや独自性が企業に求められている」(弦間氏)
五大主義は、まさにブランド価値の向上に向けた同社の基本精神が埋め込まれたものと言える。品質本位主義や消費者主義からは、消費者にとって高い品質の製品を提供にまい進するという同社の姿勢が読み取れる。共存共栄主義からは、ブランド価値を認めてもらい、消費者に信頼して購入してもらおうという考えを見て取れることができよう。
一方で同社は1916年に意匠部を設立し、「商品に美を埋め込むことで、いわゆる“資生堂スタイル”を確立してきた」(弦間氏)。こうした先進的な取り組みも同社のブランド価値を語る上で外すことはできない。
企業が直面する新たな責務
今後、ブランド価値をより多くの人に認めてもらうためには、企業にとってさまざまな責任を果たすことが重要になると弦間氏は強調する。
「ブランド価値を高めるためには“三方良し”の考えが参考になる。これは、買い手と売り手、さらに世間が納得した上で商売を行うこと。これを実践するためには世間、つまり社会に対してより大きな責任を負うことが必要だ」(弦間氏)
そのために、企業は(1)理念的責任、(2)経済的責任、(3)倫理的責任、(4)文化的責任、(5)法律的責任を果たしていくべきというのが弦間氏の考え。ブランド価値の向上を図る上でも企業の責任はますます大きくなっている。
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