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日本のものづくりに死角あり?

「擦り合わせ」「つくり込み」を得意とし高品質な製品を生み出してきた製造業。しかし、市場のその得意領域を生かしにくい環境に変わりつつあるという。

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 「“擦り合わせ”“つくり込み”を得意とする日本のものづくりは、永遠にできるかというと、そうはいかない」――日本の製造業の今後に警鐘を鳴らすのは、シーメンスPLMソフトウェアの代表取締役社長に就任した三澤一文氏。

 前職のコンサルティングファーム、アクセンチュアでは、アジア太平洋地域の自動車業界の統括責任者として、自動車メーカーと部品メーカーの製品ライフサイクル管理(PLM)など数多くのコンサルティングを手掛けてきた。PLMとは、製品の企画、開発、設計、製造、生産、ユーザーサポートといったすべての過程の情報を管理、共有して生涯価値を高めようとする取り組み。

三澤一文氏
シーメンスPLMソフトウェア社長の三澤一文氏

 独自に設計した部品を微妙に相互調整しながら製造を行う擦り合わせや、注文生産のカスタマイズによるつくり込みは、日本の製造業の強さの特徴とされるが、同氏は、環境の変化によって、陰りが出てくる可能性があると言う。

 急速に進むグローバル化による競争環境の激化や、テクノロジーの進化の加速、消費の多様化といった市場環境の変化が、製品のライフサイクルを短くし、投資回収を難しくする圧力となるからだ。

 製品の価値を高めるには、「擦り合わせ」「つくり込み」といった点だけでなく、コストの低減、市場投入の加速化、収益率の向上、生涯価値の延長――とライフサイクル全体で価値を高めていく取り組みが欠かせない。

 その「短期的なポイント」と三澤氏が考えるのが、先行開発のR&Dと生産現場の融合だ。「従来から上流と下流と分けて考える発想があるが、製品と生産を融合化することで、市場投入のスピードが高まり、ニーズにあった製品を提供でき、価値を維持しやすくなる」ためだ。

 「既に日本的なやり方として、R&Dと生産を物理的に1個所に集めるコロケーションを行っているところもある。これは1つの日本的なやり方だと思うが、これをソフトウェアでやることもできる」

 さらにこれまでのものづくりを難しくする圧力に人口のマイナス成長もある。熟練したスキルを持つ技術者が製造業から減り、新たな技術者を国内で手に入れるのはますます難しくなっていく。

 「既にものづくりの現場では、効率化でまかなえないところは、どんどん海外に移転して埋め合わせている。R&Dの上流にリソースをシフトしていかなければ、インドや中国企業の台頭に立ち向かえない。海外企業に比べて、日本の製造業は中長期の抜本改革が必要になるだろう」

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 第4回ITmedia エグゼクティブセミナーは2日間にわたって開催いたします。1日目は、遠藤功氏(ローランド・ベルガー会長)、根来龍之氏(早稲田大学大学院商学研究科教授)にご登壇いただき、強い現場をつくるための最も重要な要素である「見える化」をテーマに取り上げ、それを実現するためのITの生かし方も探ります。

 2日目では、アクセンチュアで自動車業界の総責任者を務めた三澤一文氏(シーメンスPLMソフトウェア社長)に、他の産業よりも頭ひとつ抜け出た競争力を獲得している同業界の強みや死角を分析いただき、経営はもとより、IT部門のリーダーの方々にも意識改革を促す機会としたい。

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