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環境負荷低減とコストダウンを両立 「マテリアルフローコスト会計」で始める環境経営(前編)トレンドフォーカス(2/2 ページ)

従来の原価管理システムの限界を補い、資源消費削減とコスト削減の両面で原価管理を行う「マテリアルフローコスト会計」というユニークな手法に関心が高まっている。

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物量情報と財務情報の統合で新たな視点が

 MFCAの最大の特徴は、標準値を基準とした通常の歩留まり管理では見えていなかったコスト、つまり原材料以外の洗浄剤、溶剤、触媒などの補助材料のマテリアルコストや、労務費や減価償却費、加工費などのシステムコスト、電力や燃料などのエネルギーコスト、さらには廃棄物の輸送費や処理コストなどを顕在化させることにある。


伝統的原価計算の製造工程観とMFCAにおける製造工程観の違い(出典:中嶌道靖・國部克彦『マテリアルフローコスト会計』日本経済新聞社)

 従来捨てられていた廃棄物も「負の製品」としてとらえることで、良品としての「正の製品」の原価計算と分離されることなくコストを積み上げることができ、抜本的なコスト削減が可能となるという。

 長年、MFCAの研究と普及に尽力する神戸大学大学院経営学研究科教授の國部克彦氏は「インプットからアウトプットまでのフローを追うことで、企業の経済活動の現場で環境保全活動を連携させる環境管理会計の基盤システム構築への最も有力な手法ともなりえる」と、その有効性を強調する。

 MFCAは、物量情報と財務情報を利用することから、基幹情報システムの利用が有効となる。MFCAの基礎となる情報基盤は、工程内の資源の流れをフローで可視化したマテリアルフローモデルと、これに情報を提供するデータベースで構成される。


MFCAを取り巻く構成(出典:中嶌道靖・國部克彦『マテリアルフローコスト会計』日本経済新聞社)

 このデータベースは物量ベースのマテリアルバランス情報と財務情報という膨大なデータを扱うことから、大規模な企業ではERPとの連携が不可欠だ。

 例えば、工程別の労務費を実作業時間から算出し、それを原材料が製品になる量とロスになる量との比率から廃棄コストに割り振るといった計算も、実データに基づき行えるようになる。また、小規模企業では、MFCAシステムの雛形として「Excel」などで作ったパソコンツールで利用を始めても効果を出せるという。

後編に続く

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