【第1回】“CIOの手引き”として愛される理由とは:サービスマネジメントに新たな波(2/2 ページ)
ITILがエンタープライズ市場で注目されている。しかし、中堅企業ではまだ実装化の準備が整っていない。さまざまな問題を乗り越えて導入に成功した例に見る、その効果とは?
ライブラリが成功に導く!
ITILについては、詳細な説明なしに議論を始めることはできない。ある人はITILを宗教にたとえるが、決して宗教ではない。最も的確なアナロジーは、IT部門がそれぞれのやり方で効率的なサービスマネジメントを実現できる柔軟性の高いベストプラクティスへの汎用ロードマップというものだろう。
ITILのLはライブラリのLだ。このライブラリ(第2版)は7冊の書籍で構成されていた。いずれも200ページほどの分量で、価格は1冊115ドルほどだ。それぞれの書籍は、サービスサポート、サービスデリバリ、サービスマネジメント導入計画立案、セキュリティマネジメント、情報通信技術(ICT)インフラストラクチャ管理、アプリケーションマネジメント、ビジネスの観点、の7つの異なる領域のプラクティスをカバーしている。
IBMは自社のYellow Booksのほうが先駆的存在だと主張しているが、専門家によると、ITILのフレームワークは1980年代後半、英国政府系機関の中央コンピュータ・電気通信局(CCTA)によって体系化された。CCTA――のちに政府調達庁(OGC)に統合――は、英国政府のIT部門におけるベストプラクティスのカタログ作成を担当していた。そのカタログは最終的に30冊を超える包括的なものになった。
ブライアン・ジョンソン氏は、ITILの作成に携わった6人のチームのメンバーだった。その後、ITサービスマネジメントに特化した専門組織、ITサービスマネジメントフォーラムを立ち上げ、現在はCAのITILワールドワイドプラグティスマネジャーを務めている。ジョンソン氏はITILの最大の効用について、「生産性の最大化」と端的に説明する。ガバナンス問題の顕在化とともに、ITサービスを自動化する手法はあらゆる規模の企業から注目を集めるようになった、と同氏は話す。
「IT部門にベストプラクティスを確立するための手法をまとめたものがITIL」(ジョンソン氏)であり、ITの効率性向上とコスト削減を提言するビジネスコンサルタントが、ITIL普及の火付け役となった。ITへの取り組みは組織によってさまざまであるため、ITILは「あらゆる人々がフォローできるベストプラクティス」(同氏)を提示している。
ジョンソン氏によると、ITILは1990年代を通して米国で広く普及したという。同フレームワークの第2版では、プロセスのガイドラインをマネジメント、アプリケーション、そしてサービスの視点からグループ化し、7冊の書籍にまとめられた(第3版では5冊に再構築されている)。
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