首都高の二の舞い? 枯れた技術を手放せない日本のシステム部門
継ぎはぎ状に膨れ上がったレガシーシステムに頭を抱える日本企業。ビジネス環境の変化が著しい今日において、ITインフラの硬直化は大きな足かせだ。現状の構造を見直し、将来を見据えた「IT都市計画」が必要な時期に来ているという。
ストレージベンダー大手のネットアップは4月17日、ユーザーやビジネスパートナーに向けたセッションイベント「NetApp Focus 2008」を開催した。基調講演に登場したアイ・ティ・アール代表取締役の内山悟志氏は、ITインフラの整備を都市計画にたとえ、先を見通して計画的に実行しないと、ITが日本企業の国際競争力の足かせになると警鐘を鳴らした(関連インタビュー<1><2>)。
内山氏は日本企業のIT環境における課題として、「レガシーシステムの存在」「中長期的なITビジョンの不在」「保守的なIT部門とシステムインテグレーター」を挙げた。
特にレガシーシステムは、構造の複雑さや保守コストの負担増などから昨今企業における悩みの種となっており、システム基盤を再構築するためのSOA(サービス指向アーキテクチャ)などが注目を集めている。既に欧米では1990年代にレガシーを刷新した。新興諸国では最初からオープン系システムの時代であったため、そもそもレガシーは存在しなかった。一方で日本は、「景気低迷期と重なり、レガシーが一新できずに維持・保守の負荷が残った」(内山氏)という。
その上、IT部門やシステムインテグレーターが技術者の教育やR&D(研究開発活動)、新規技術の提案に消極的なことも問題視する。内山氏は「最新の技術なら安くて質の高いものができるのに、リスクの抑制を第一に考えて枯れた技術を使い続けている」と危惧した。
ただし、やみくもにシステム投資すればいいというわけではない。目の前のビジネス環境に合わせただけの改革だと、4〜5年ごとに業務改善・維持費用が膨れ上がり、その都度大規模な再構築が必要になってしまう。
「東京オリンピックに間に合わせるためだけに作った首都高速がいい例だ。開通当時は今のような交通量を想像していなかったため、改修・増設を繰り返すはめになっている」(内山氏)
そうではなく、適切な構造改革計画を立て、一旦システムを単純化し将来の変化に耐えるものを作るのが重要になるという。内山氏は「システムの中でも土台となる部分は、長期的な視点を持って構築しないとだめだ」と強調した。
解決策の1つとして、内山氏は「水平統合型」のシステムを提案する。ITインフラの容易な拡張やダイナミックなリソースの融通が可能となり、変化の激しいビジネス環境の要求にも迅速に対応できるという。
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