丸投げする他部門との対話を【後編】:カジノ業界で経験を積んだ医療CIO(2/2 ページ)
IT化の進んでいないがんセンターに電子カルテやタブレットPCを導入し、業務の効率化を図る新任CIO。コンピュータ作業になじみのない医師たちの反発を受けながらも彼がとった行動とは。
ペーパレスに反対する医師たちを説得
「医師は必ずしもコンピュータになじんでおらず、進んでデータ入力をしようとは思わない」とフェアクロース氏。「われわれは何度か抗議を受けた。その言い分は、『これでは仕事にならない。紙に戻した方がいい。手書きのカルテが必要だ』というものだ。わたしは、すべてを電子化する必要があることを強調して説得してきた。EMRシステムが今後の業務基盤になるからだ」
マンノ氏は、移行時の苦労を次のように回想する。
「多くの医師にとって、新システムを使いこなすようになるまでは非常に大変だった。わたし自身もそうだ」と同氏。「わたしは1977年からコンピュータを利用してきたが、新しいソフトウェアプログラムは微調整が必要だったからだ。ITセンターは最新の機器を導入して整備が進められていたものの、選定されたソフトウェアプログラムに難があった。完全なペーパーレス環境を構築するには、設定が不十分。このため、細かな追加設定を行わなければならず、かなり手間がかかった。今も完全には満足していない」
問題はほかにもあった。ネバダがんセンターは幾つかの音声入力ソフトウェアプログラムを試し、最もニーズに合うものを見つけた。ニュアンス・コミュニケーションズの「Dragon」製品だ。
当初の計画では、医師は無線タブレットPCを用いて多くの仕事を行うことになっていた。しかし、医師が使った感想は、スプレッドシートを見たり、画像を調べたりするには画面が小さすぎる、というものだった。バッテリー駆動時間も十分ではなく、無線タブレットPCはデスクの隅に置かれたままになっていた。
結局、フェアクロース氏は軌道修正し、診察室にPCを置くことにした。だが、そのために壁の配線をやり直さなければならなくなった。
IT部門と他部署との協力体制が成功のカギ
また、ネバダがんセンターは組織体制を変更し、ITを業務に直結させることを目指している。フェアクロース氏は、最初はCFO(最高財務責任者)に直属していたが、現在はプレジデント兼COO(最高執行責任者)のサンドラ・マードック氏の直属だ。そしてフェアクロース氏は、内部顧客に対するIT部門の対応の仕方を変えようとしている。
「彼らはIT部門に丸投げしていた。システムがどのように機能するか、どのように実装されるべきかは、IT部門が把握しているという認識からだ」と同氏。「今では、われわれが業務部門ともっと密接に連携している。以前はこんな調子だった。『一番いい製品を見つけてきて、明日から使えるようにしてくれ』。IT部門はそうすることもできるが、そうすべきではない。製品について事前に意見や要望を吸い上げないと、成功はおぼつかないからだ。たとえ業務部門からそうした話が来ても、すぐには引き受けないだろう。まず彼らとよくコミュニケーションを取るようにしている」
途中の道のりにはさまざまな困難があったが、ネバダがんセンターは順調な軌道に乗っているようだ。
「わたしは多数の施設の立ち上げに携わってきた」とフェアクロース氏。「取るべきステップは頭に入っている。結局、重要なのは、適切な人材としっかりした計画を用意することに尽きる。今では、われわれが受けるサポート依頼の電話は、『東海岸のホテルからホームページになかなかアクセスできない』といったものの方が、システムに関するものよりも多い。これは喜んでいいことだ」
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