美味しいワインをITで造る【後編】:老舗ワイナリーに魅せられたCIO(1/2 ページ)
ぶどうの収穫のタイミングや醸造の温・湿度調整、品質管理など、ワイン造りには繊細さが求められる。ITシステムの導入により業務効率を高め、生産性や収益の向上につなげていくという。
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ERPシステムを再構築
コーベルは02年、初代CIO(最高情報責任者)を外部から採用することを決めた。同社は人材会社を通じて候補者を探し、ロバート・バーンズ氏に白羽の矢を立てた。バーンズ氏はファイナンスMBAを取得しており、IBMに勤務した経験があった。IBMではコンピュータオペレータとして入社後、プロジェクトマネジャーまで昇格した。コーベルから声が掛かったとき、バーンズ氏はニューヨークにある機器流通会社でCIOを務めていた。その会社はJDエドワーズのシステムを導入して間もなかった(JDエドワーズは後にオラクルに買収された)。コーベルもJDエドワーズのERPシステムを導入中だったが、進ちょくは決して順調ではなかった。このプロジェクトは、サポートが終了していたパンソフィックのレガシーERPシステムの置き換えを目的としていたが、混乱に陥っていた。コーベルに採用されたバーンズ氏はその立て直しを託されたのである。
「JDエドワーズのシステムの導入プロジェクトは芳しい状況ではなかった」とバーンズ氏。「予算を超過し、スケジュールも遅れていた。導入しようとしていたモジュールが多過ぎた。そこでわたしは、『一歩退いて、何をしなければならないかを整理しよう』と呼び掛けた。わたしはパッケージソフトウェアに関しては、導入時に手は加えるとしても、拡張はしないという方針を持っている。アップグレードの際に悪夢のような事態になりかねないからだ。一度にあれもこれもと欲張らない、段階的なアプローチが好ましい」
バーンズ氏は、財務と人事管理のモジュールはうまく機能しているが、受注と価格設定のモジュールは作業が必要なことに気付いた。また、流通と製造のアプリケーションはまだ計画段階だった。
コーベルは、導入展開の管理の支援を得るためにコンサルティング会社を雇っていた。しかしバーンズ氏は、プロジェクトをより的確にコントロールする必要があると考えた。「軌道修正の最大のポイントは、プロジェクト管理でコンサルティング会社に頼るのをやめ、われわれが責任を持ってプロジェクトを取り仕切るようにしたことだった」と同氏。
「わたしは経営陣から全面的なサポートを受けていた。プロジェクトで必要とされていたのは、より明確な方向付け、多くの人的リソースの適切な配分、そして計画を実行に移すことだった。われわれは外部コンサルタントにプロジェクト運営を部分的に任せ、内部スタッフがほかの作業を担当していた。最終的には、導入するソフトウェアに関する責任はわれわれが持つのだから、われわれがプロジェクト全体に責任を持つ方が、ずっと理にかなっている。われわれは一部の社内スタッフの担当業務を変更し、彼らを研修に派遣した。社内には、このシステムは『自分たちの』システムだ、という当事者意識が一気に浸透した。それ以来、われわれはJDEのERPシステムのサポートとアップグレードを一貫して円滑に行っており、何も問題はない」
最新BIで問題を解決
バーンズ氏がERPプロジェクトの立て直しを進めていたとき、コーベルのゲーリー・ヘック社長は、もう1つの問題の解決を同氏に依頼した。同社のビジネスインテリジェンス(BI)システムが、まったくインテリジェントには見えないという問題だった。ヘック氏は毎日、コグノスのBIシステムにサインオンしていたが、ボトリングされたワインのケース数が、倉庫に貯蔵されている数と違うことがしばしばあった。「どうしていきなり500ケースもなくなるのか」とヘック氏は憤慨していた。
「数字が合わないのは、レガシーBIシステムのリポーティング機能が老朽化していて、以前のスタッフがかなり手を加えていたためだった」とバーンズ氏。幸い、新しいJDEシステムを導入するとともに、BIソフトウェアをCognos8iにアップグレードし、新BIシステムを8月から稼働させたことで、この問題は解決した。
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