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美味しいワインをITで造る【後編】老舗ワイナリーに魅せられたCIO(2/2 ページ)

ぶどうの収穫のタイミングや醸造の温・湿度調整、品質管理など、ワイン造りには繊細さが求められる。ITシステムの導入により業務効率を高め、生産性や収益の向上につなげていくという。

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“ぶどうのすべて”を把握

 今では、数字の食い違いは過去のものとなり、コーベルは、ビジネス状況を評価するための強力なツールを装備している。「われわれは昔ながらにぶどうを収穫、醸造、ブレンドし、ボトルに詰めている」と、コーベルに勤続20年でワイン品質マネジャーを務めるリサ・ラッセル氏は語る。「しかし、業務状況の追跡はずっと詳細に行えるようになった。ビジネスの動きに加え、ぶどうの契約から最終商品の完成まで、各段階のコストの実態を包括的に把握できる」

 実際、ITは、コーベルのワイン造りのあらゆるプロセスで活用されている。各種ワインの熟成に使われる樽の管理もその1つだ(樽のオークの種類によってワインの風味が異なるほか、一定期間使用した樽は交換する必要がある)。コーベルは最近、イースカイの樽管理システムを使って、樽の耐用期間全体にわたって利用計画プロセスを自動化している。このシステムでは、どの種類のオーク樽が利用できるか、どのワインがどこに貯蔵されているか、個々の樽にワインが何回詰められたか、個々の樽をいつ交換しなければならないかが分かるようになっている。

「このシステムを使った樽の追跡管理は大きな成果につながっている」とバーンズ氏。「われわれは、ワインの熟成プロセスの管理と樽のコストコントロールをより適切に行いながら、商品の全体的な品質を高めることに成功している」

 ワイン造りの中でぶどう果汁を発酵させる過程もWebで監視できる。コーベルはアクロロン・テクノロジーズのTankNETシステムを利用して、貯蔵タンク内の状態を精密に把握している。

 コーベルは、通信インフラも強化しなければならなかった。ロシアンリバー地域は風光明媚だが、冬の嵐が電話回線に悪影響を与える。このため、同社は毎年、回線障害で電子メールやインターネットアクセスが不通になるトラブルに見舞われていた。そこでバーンズ氏は衛星通信を利用して、本社とサンタローザ空港近くの倉庫、そのほかの施設を結ぶ無線ネットワークを構築した。

 「そのおかげで、コストを削減し、通信帯域を広げることができた」とバーンズ氏。「この大容量の新しい無線ブロードバンドデータ回線により、ソノマ郡にあるわれわれの多くの施設が結ばれた。その結果、データ通信コストはそれまでの銅線回線の場合よりも大幅に減少した。この既存データ回線のかなりの部分はアップグレードが必要になっていたため、新しい回線によりデータ通信の信頼性も向上させることができた」

まずは社内の信頼を

 コーベルに入社して2年経ったころには、バーンズ氏は、ITプラットフォーム全体の再構築がかなり進んだという手応えを感じられるようになった。

 「もともと、どうにもならないという状況ではなかった」と同氏。「わたしは優秀なチームを受け継いだ。彼らに必要だったのは適切なトレーニングだ。わたしは、彼らが改革に力を発揮する手伝いをしただけだ」

 コーベルの経営幹部は、平日は大抵、敷地内のプールハウスに集まってケータリングランチを取る。これは同社の役員特典の1つだが、貴重なビジネスコミュニケーションの場ともなっている。「大企業では、ITのアイデアがある場合、書類にまとめてそれを3通提出し、いくつものレベルにわたってチェックを受けなければならない。決裁が下りたときには、タイミングを逃してしまっている、ということになる」とバーンズ氏。「ここでは、わたしはゲーリーに直接話せる。何か言えばすぐに返事が返ってくる」

 それでも、バーンズ氏は、より正式なガバナンスプロセスの導入を図っている。同氏が最初に取り組んだことの1つは、ITプロジェクト運営委員会の立ち上げだ。また、バーンズ氏は四半期ごとに、IT部門の最新の活動報告を社内に発表している。

効率的な組織を目指す

 同氏は、社内の信頼を勝ち取ることが何よりも重要だったと語る。ERP導入の円滑化と、BIシステムの不具合の解消によって、同氏は信頼を得ることができた。「いくつかの成功事例を作りさえすれば、扉が開ける」と同氏。

 「今やITは必要不可欠とされており、IT部門の仕事はキリがない。少しでも成果を上げれば、ぐっと評価が上がる。われわれの場合は、さまざまな領域で安定したIT環境を構築して、業務を効果的に支援する統合システムを提供している」

 コーベルは現在、ERPシステム(JD Edwards release 8.12)とBIシステムのアップグレードを行っている。その一環としてダッシュボードを導入するとともに、流通業者、小売店と販売情報の共有を図ることで、どの商品がどのような価格で、どこで売れているかを、より正確に把握しようとしている。バーコードを光スキャナで読み取ることにより、ボトリングラインからレジカウンタまで各ワインが追跡され、リアルタイムの販売データが提供される。

 「最初の2年間は、ひたすら『問題解決と改善』に取り組んだ」とバーンズ氏。「現在は、より効率的で生産的な組織作りがわれわれのテーマだ。『どの商品を誰に売っているか』『どの商品の収益性が高いか』『誰がどの商品を買っているか』といった分析に非常に力を入れ、それを踏まえて正確な予測をするようになってきている」と同氏は語る。

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