課題の本質が見えない経営陣――接待に明け暮れ給料払えず:間違いだらけのIT経営(2/2 ページ)
企業が抱える課題を明確に理解せずに、見当違いな行動を取るトップがいるとは嘆かわしいことだ。彼ら自身が変わらない限り、その企業に未来はない。
聞く耳持たずに社長が暴走
中堅企業のC社は、取り扱い製品の市場の成熟に伴い売り上げは縮小し、業績は赤字で株価も低迷していた。D社長の取った手段は、「入り」が少なくなったので、出ていく部分を制することだった。規模は小さくても高業績の会社を目指そうという方針は一つの考え方だが、次々と社員を減らし、開発投資や設備投資を一切認めなかったため、コスト削減よりも受注・売上高縮小が先行し、業績はますます悪化した。D社長は周囲の意見に耳を貸さないタイプだったため、事態は悪い方向へ進行するばかりだった。
小規模の高業績企業を目指すという着眼点は良かったが、その過程に対するD社長の課題発見に落ち度があった。
肝心なことは課題をいかに見つけるかだ。それにはまず、トップに課題を見つけるように仕向ける必要がある。トップが何か困っていれば、それが課題発見のトリガーになる。しかし、D社長のように自分のしていることが正しいと思い込んでいる場合は、なすすべがない。同様に、業績が低迷しているのに何とかなるだろうと高をくくったり、当面問題はないとのんきに構えていたりするトップも大いに問題だ。彼らには、衰退する企業あるいは将来のない企業と心中してもらうしかない。
トップ自らが危機感を抱くべき
何かについて悩みを抱えているトップは、まだ救いようがある。例えばB社長だ。従業員の給料を個人資産から負担しているというのは大きな問題である。何が課題なのかをB社長自ら考えることができるならそれに越したことはない。しかしそうでない場合は、外部コンサルタントを利用するなり、商工会議所などの公的機関に相談するなり、外部を大いに利用すべきである。
もう1つの方法は、気の利いた従業員を外部研修に派遣し、課題発見要員として育成することである。ただ、社長自らが「困っているから何とかせねば」と思い立たなければ意味がない。不幸にしてB社長はそこまでの強い思いがない。役員など周囲が、B社長に刺激を与える必要がある。それでもB社長が動き出さない、あるいは周囲に刺激を与える人がいない場合は、会社の未来はないだろう。
トップはためらわず、まず動き出して欲しい。案ずるより生むが易しである。自社で最も困っていること、解決のためにやるべき課題などが見つかると、その先にITの活用が見えてくる。
プロフィール
増岡直二郎(ますおか なおじろう)
日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。
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