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【第8回】商家の歴史から現代企業は何を学ぶかミドルが経営を変える(1/2 ページ)

経営学において、これまで「異端」とされてきた伝統的な日本企業の研究が注目を集めている。数百年と続く長寿企業を分析して現代の経営に生かそうとする動きも多いという。

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 旧知のビジネスマンの方に、「何百年の歴史を誇る会社や同族会社の経営について関心があります」と話すと、「専門は経営学の中でもはやりの戦略論でしたよね。歴史研究にでも変わったのですか?」と言われてしまうことがある。筆者の専門分野は経営学、その中でも経営戦略論(それと関連する企業統治論)のままだ。

 経営学研究の世界でも企業経営の世界でも、第2次大戦以降、米国あるいは欧米発の経営理論は最も進んでおり、後発国の日本は一刻も早く彼らのレベルまで駆け上がる必要があるという支配的な考え方が根付いていた*1(1970年代後半から1990年代にかけては、“Japan as number one”*2とされたが、バブル崩壊後すぐに、「遅れた日本」という考え方に逆戻りした)。

 経営学の伝統的な研究分野に日本的経営に関するものがあった。日本の経営制度や慣行は日本の古くさい歴史を引きずっており、ここからの脱却が日本企業に課せられた重大な使命であるといわれていた(もちろん、日本企業の経営上の特徴を分析しようとした研究もあった)。

「古くさい」企業が持つ経営の勘所

 しかし近年、経営学者の考え方に大きな変化がみられる。従来のように「最先端」とされる経営手法を活用する欧米企業や日本の一部の大企業を研究対象とするのではなく、「古くさい」あるいは「遅れた」存在として見過ごされてきた企業から、経営のエッセンスを探ろうとする研究が増加しているのである。

 例えば、数百年の歴史を持つ長寿企業を対象に、生存し続ける秘けつを探るべく経営の歴史を振り返り、現代の企業経営に役立つ知恵を見つけ出そうとする研究は多い。(以前ならば、粛々と存在しているだけという扱いだった)。

 また、古くさい企業経営の代表とされてきたのが、同族・家族企業である。業績は芳しくなく、オーナーが経営を牛耳っているなどとマイナスイメージが旧態依然つきまとっている。しかし丁寧に分析をすると、業績は至って良好であることが分かった。多くの研究者がこの要因に注目している*3。同族経営については改めて詳しく言及する。

 古くさいとされてきた日本の伝統的な企業の経営をのぞき込んでみると、興味深い慣行が存在していたことが分かる。前回、江戸時代の武家には「主君押込」なる慣行があり、藩主に対して「モノ申す」ことが可能だったと述べた。実は武家同様、商家にもトップである店主に対してけん制の仕組みが存在していたのである。


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