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リーダーのあなたも「Change!」――変革のパイロットとなれ職場活性化術講座

オバマ次期米国大統領のスローガンではないが、大きな変化が日常茶飯で起こる今日、リーダーはチームの中でどう働きかけをすればよいのか。変化を受け止めるだけでなく、マネジメントしていこうという姿勢が問われる。

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チェンジ・マネジメント・コミュニケーション

 今回もリーダーにとっての大きなテーマである「ナビゲーター」、いかに組織を引っ張って目標へ導くか、について考えたい。前回は、その第一弾として「針路設定者」の役割について検討した。スタッフの意識のベクトルを合わせ、聞いていないとブツブツ言う人を減らし、また、あらぬ方向を向いているシニカルなメンバーも巻き込んで、ゴールへ向かわせる役割だ。

 今回は、その中でも特に、変革期のナビゲーションについて考えたい。オバマ次期大統領のスローガンである「change」を待つまでもなく、変革は今日においてもはや日常茶飯である。我々の身の回りでも、パナソニックとサンヨーの歴史的な企業合併をはじめとして、買収、分社化、リストラ、社名変更、ブランド変更、新人事制度の導入など、あらゆる変化が日々起きている。このような変化をうまく乗り切り、効果を上げていくのは、従業員たちしかいない。リーダーが1人ですべてできるはずがない。いかに従業員に変化を理解してもらい、参画し、個々人が当事者意識を持って変わっていくかがキーになる。このリーダーの役割を「変革のパイロット」といい、そこでのコミュニケーションを、「チェンジ・マネジメント・コミュニケーション」という。今回はそのポイントをお伝えしたい。

 その前にまず質問。あなたの会社のトップたちは次のような認識を持ってはいないだろうか。

  • わが社はリストラもなく、社員には不安はない
  • ブツブツ言わない人なんかいない。いつでもブツブツ言うやつだけが問題だ。
  • 社員は、すべての情報が整理されるまで、伝えなくても待ってくれる。
  • 私のリーダーとしての使命感や情熱は自然に伝わっているはずだ。
  • 社員は私の言うことは額面どおり受け取ってくれるはずだ。
  • 曖昧なことや不明確なことを言っても、理性的に判断してくれる。
  • 社内報に書いておきさえすれば十分、情報は伝わり理解してくれる。

 このようなことが通じたのは、終身雇用と年功序列で右肩上がりの経済だった時代だ。古きよき時代ではもはやない。変化の時代には、社員は常に不安を抱えている。高い目標に向かって次々と仕事が降ってきたり、同業他社では合従連衡が盛んに行われているのを、目の当たりにしている社員たちは、話す内容が漠然として、不明確であり、タイミングも遅れていて、一貫性がなく、たまにしか顔を見せないようなトップでは、毎日が心配でならない。

大きなビジョンだけでは社員は納得しない

 そのような不安の根底にあるのは、われわれ人間のある種の「まじめさ」ではないだろうか。いったん組織に入れば、そこで安定を得たいし、そのためには言われたことはきちんと(人によって認識の程度の違いはあるが)何がしか貢献したいと願い、自分としてできるだけのことはやりたいと思う。家庭以外の大半の時間を使う以上、自分の安心を得たい場所にしたい。

 自分なりの世界観を描き、(程度の差はあれ)組織や職場に受け入れてもらい一体化したい、と願っている。こうした組織や仕事へ取り組むまじめさが、変化の際には、「変化への抵抗」となって組織側には映るのだが、実は抵抗というよりも、人間らしい欲求だと思ったほうがよい。きちんと説明されれば、それほど変化に抵抗し、現状に固執する人はいないものだ。むしろ持って行き方で、強制された、先行きが分からない、自分だけが損をするなどの感情を抱かせることで問題が起きてくる。

 それゆえ、リーダーは社員の心を理解し、「言わなくても分かるはずだ」ではなく、変化について丹念に、

  • その内容
  • 理由や背景
  • 効果や価値
  • 結論に至ったプロセス、誰が議論したのか
  • 何が起きるのか、次のステップは何か

 などを説明していく必要がある。社外に漏れることやインサイダー上の問題で、リスクはあるが特に社内には踏み込んで言うべきだ。あるいは、そういうスタンスが採れるように日頃から社員に接し、信頼関係を構築しておく必要がある。

 そして重要なのは、社員に、

  • 「あなたにとってはどういうメリット、デメリットがあるのか」
  • 「何をしてほしいのか」
  • 「何を新たに学んでほしいのか」

 という身近な関心事を明確にすることだ。大きなビジョンだけでは社員は納得しない。

 それゆえ、3つのアクションが大事になる。1つはQ&Aだ。公式のメッセージだけではいろいろな疑問を持つ異なる社員層に向かってなかなか答えられない。Q&Aのセッションを多く持つことで対応できる。2つ目は、MBWA(managing by wondering around)といわれるように、こういう時こそ社内をふらついて社員に語りかけることだ。一対一で語り掛けられると、自然とパーソナルな感情がわいてファンになる。3つ目が、自分の右腕に託すことだ。社長であれば、管理職層に十分理解して職場をまとめてもらうこと。自分の右腕君、右腕さんを多く持っているリーダーは強い。

 こうしたチェンジ・マネジメント・コミュニケーションを適切に行うことで、仕事を停滞させずに、変化を起こし、かつ変化を担う新しい世代を育てていくことができる。やはりコミュニケーションの原点である、相手視点(この場合は社員視点)を大事にしたい。変化という混乱期にこそ、相手の問題意識に刺さるコミュニケーションを丹念に行う必要がある。

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プロフィール

とくおか・こういちろう 日産自動車にて人事部門各部署を歴任。欧州日産出向。オックスフォード大学留学。1999年より、コミュニケーションコンサルティングで世界最大手の米フライシュマン・ヒラードの日本法人であるフライシュマン・ヒラード・ジャパンに勤務。コミュニケーション、人事コンサルティング、職場活性化などに従事。多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所教授。著書に「人事異動」(新潮社)、「チームコーチングの技術」(ダイヤモンド社)、「シャドーワーク」(一條和生との共著、東洋経済新報社)など。


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