「伝説の営業マン」のノウハウを定着させる:社内SNS・Blog活用術(2/2 ページ)
英会話やダイエットと並び、「挫折産業」の1つとされるナレッジマネジメント。企業の永遠の課題ともいえる情報・知識共有の実現に、社内SNSやイントラブログは本当に役立つのだろうか。失敗事例と成功事例から、使い方、考え方のコツを探ってみる。
伝説の営業マンのノウハウがブログで明らかに
一方、成功事例では、IT系SIerのB社は営業のノウハウの見える化と共有を目的に、500名の営業担当者を対象にイントラブログを導入。既存のSFAに補完する形で2007年2月から利用を開始した。B社の場合、常に好成績を収めるベテランの伝説的営業マンが存在し、彼のテクニックを退職前にどうにか形式知化し、知識を後進に受け継ぐことも重要な目的だった。
イントラブログに書き込まれた伝説の営業マンの報告に、全国の営業所から質問が殺到し、知られざるテクニックが次第に明らかになっていったという。営業のプロセス・数値管理に関してはSFAを利用し、メールを併用した報告関連はイントラブログに変更することで、互いの補完関係が成立した。
導入後、各営業担当のセールストークも改善されて着実に受注が拡大。伝説の営業マンが定年退職になっても、ノウハウが明らかになったことで安心だという。ブログは蓄積型ツールでありながら、公開先を限定することでメールと同等の運用が可能であったことや、メールを使用禁止にしてSFA+イントラブログの利用をトップダウンで指示したことが、利用を活性化し、暗黙知を明文化できた要因だった。
ブログを道具と割り切って使うことが成功の秘訣
松本氏はもう1つ成功事例を紹介した。不動産販売会社のC社は、2007年9月より拠点の営業部門を対象に約100名でイントラブログシステムを導入。物件情報の共有による物件回転率の向上、物件検索の省力化による営業効率の向上などが目的だった。それまでグループウェアのDBで管理されていた物件情報は、イントラブログに登録しタグを設定。それにより、顧客の条件をタグ検索にしたことで検索効率が格段に向上し、検索スキルの差を解消することができたという。
また、顧客の条件にヒットした物件は、営業担当がコメントを書き残すことでキープすることができるようにしたことで、営業マンの成約までのプロセスが明らかになり、管理職が部下の行動を把握することができるようになった。さらに、これまでの受注実績による歩合制から、コメントの数も評価対象に加えることで営業担当のモチベーションを向上させることもできたという。
これらのことから、松本氏は、「イントラブログを道具と割り切り、どう使うかを徹底的に検討すること、さらに業務で利用することに必然性を持たせる仕組みを作った企業が成功につながっている」という。
企業で使用できるブログ・SNS・wikiをセットで提供
だが、社内の知識や情報をどうやって取り込むかが大きな壁となる。それができて、可視化・蓄積された情報を分類・要約・分析・関連づけし、さらに既存の業務システムとユーザーインタフェースで連携させ、業務テンプレートと統合させることが可能となる。
「とりわけ、可視化・蓄積する部分をどのように展開していくかが重要であり、それにはブログ・SNS・wikiの各機能が有効」という松本氏。ただし、それらはバラバラに取り入れるのではなく、全て1つに統合された形で利用することが望ましいという。
その考え方を基に開発されたのが、日立システムアンドサービスの情報・知識共有基盤「InWeave」(インウィーブ)だ。企業内でブログ・SNS・wikiを安心して活用できるよう、セキュリティやアクセス制御、組織対応機能を強化し、テキストベースのデータを柔軟に扱うデータモデルを中心に業務への適用や、システム間連携機能などの拡張性にも配慮したという。
スタート時は最低限の機能だけを揃え、必要となった機能を随時追加できるような設計となっているため、当初から高額なシステム投資をする必要がなく、小さく始めて大きく育てるというエンタープライズ2.0のセオリーにも則っている。
基本的な情報共有機能がベースとなり、蓄積した情報から価値のある情報を見出し活用する知識管理機能と検索機能などを追加し、さらには他のシステムと組み合わせるためのマッシュアップアップ機能を加えていくという具合だ。
具体的な製品体系として、ベースは「InWeave Collaboration Basic Edition」(コラボ基盤)で、今年10月から出荷が始まっている。今後、2009年3月には、「InWeave Collaboration Standard Edition」(コラボ基盤+知識基盤)と「InWeave Search」(エンタープライズサーチ)が市場に投入され、来年度中には「InWeave Collaboration Enterprise Edition」(コラボ基盤+知識基盤+マッシュアップ基盤)のリリースを予定しているという。
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