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【第3回】新興国市場を狙うグローバル戦略加速するグローバル人材戦略(3/4 ページ)

かつては低コストで労働力を提供する場に過ぎなかった新興国は、魅力的な市場に変貌するとともに、自らも競争力を高めて大きく経済成長を遂げている。キリン、ナイキ、ネスレなどの事例から新興市場攻略の糸口を探る。

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新興国市場をどのように位置付けるか

 かつて新興国市場とは製造拠点であり、低コストの労働力提供の場でしかなかった。特に1985年のプラザ合意以降、日本企業は円高を背景に製造拠点を移転し、先進国へ輸出することで競争力を獲得した。フラット化時代の現在、新興国市場は有望な成長市場へと姿を変えつつある。鈍化しつつあるとはいえいまだ高い成長率を誇るBRICsを中心に、最近ではNext Elevenとして韓国やインドネシア、メキシコなどの新興国も台頭している。中国ではGDP(国内総生産)成長率8%を目標として、さまざまな政府施策が取られている。

 日本企業にとって、国内市場の深堀りも一案だが、拡大する海外市場を見逃すわけにはいかない。特にアジア地域の新興国へ集中するのは魅力的な選択肢といえる。タイ、インドネシア、マレーシアなどの東南アジア諸国では、高い経済成長とともに新しい中間所得層が生まれている。経済産業省の「通商白書2008」は、欧米諸国など先進国の市場人口が10億人、アジアを中心とした新興国市場人口が30億人、アジア以外の新興国市場が10億人という「50億人市場」をターゲット市場として提案している。

 自国市場の拡大を背景に、新興国市場は新たなグローバル企業を生み出す土壌にもなっている。既に新しい新興国企業の芽はいぶき、花開きつつある。IBMのPC事業部を買収した中国企業のLenovo、相次ぐ買収で世界最大の鉄鋼メーカーとなったインド出身のMittal Steel、欧米企業の業務アウトソーシングを受け持つインドのWiproなどが代表例だ。これら新興国出身の企業は、自国の高い成長性を生かし、あり余る世界の資本を集め、高い成長率を演出することでグローバリゼーションを遂げている。

 「新興国市場こそが成長ドライバー」としてグローバル戦略を掲げるのは、移動体通信キャリア、英Vodafoneである。2006年以降、矢継ぎ早の買収策や出資策を実施することで、成熟する先進国を捨て成長する新興国へのシフトを実現している。2006年にソフトバンクに日本事業を1兆7500億円で売却した後、2007〜2008年には中国移動(China Mobile)、ソフトバンクと提携し、中国市場に向けた新モバイル技術の共同開発を実施した。また中国の中国移動への出資、インドの移動体通信キャリア、Hutchison Essarへの出資などを行ってきた。日本市場を捨て、かつ新興国市場への徹底した攻略により切れのあるグローバル戦略となっている。

英Vodafone 成長する新興国市場へのシフト
英Vodafone 成長する新興国市場へのシフト

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