さらなる進化を遂げるエンタープライズ2.0:【新春特別企画】コミュニティーリーダーが占う、2009年大予測(2/2 ページ)
エンタープライズ2.0は話題先行のバズワードなのか? これに対する答えは「ノー」だ。これまでとは異なり現実的な選択肢へと変化しており、エンタープライズ2.0という言葉自体、もはや目新しいものではなくなりつつある。
システム導入から組織改革へ
「デジタルネイティブ」(子供のころからネットや携帯電話、デジタル機器があり、それらを使いこなしてきた世代)という言葉を米Gartnerが発表したのが2007年。2008年はメディアで取り上げられたこともあり各所で話題になった。今年以降ますます注目されるキーワードになるに違いない。Gartnerは彼らが企業で働くようになることで、企業内システムにもWEB2.0的な性質が要求されるようになると指摘しているが、日本も例外ではないだろう。むしろ日本では就職活動中の学生向けSNSや、内定者向けSNSまで存在しているほどであり、「会社に入った後は従来型のコミュニケーション方法で」などと意識を変化させることは考えにくい。社内でエンタープライズ2.0の導入、定着を進める担当者にとっては、新たな援軍を得ることになるだろう。
デジタルネイティブだけでなく、WEB2.0的なツールに慣れ親しむ社員が増えれば、社内コミュニケーションだけでなく組織のあり方もそれに応じて変化せざるを得ない。もともとWEB2.0が特定のテクノロジーを指す言葉ではなく、テクノロジーを活用する際の思想や態度を示していたように、エンタープライズ2.0もツールを導入して終わりではない。フラットやネットワークなどといった言葉で象徴されるような組織に変化してこそ、ツールの力が最大限に生かされるようになる。エンタープライズ2.0はツールやシステム導入を指す言葉としてだけでなく、新しい組織のあり方、あるいは21世紀型に進化した組織を指す言葉としても意識されるようになるのではないだろうか。
著作権やセキュリティの保護、ひぼう中傷や「炎上」の防止など、WEB2.0でも問題になったことがエンタープライズ2.0でも既に問題になっている。WEB2.0型のシステムを使いこなそうとすればするほど、システム外の問題に注目せざるを得ないだろう。いずれにしても、エンタープライズ2.0の焦点は新しいツールの登場、導入といったハード面ではなく、組織や制度のあり方といったソフト面に移行すると考える。
エンタープライズからコミュニティーへ
最後は若干期待を込めて、エンタープライズ2.0はエンタープライズの境界を越えると予想してみたい。WEB2.0的な発想によりフラット/ネットワーク型組織が実現されれば、そこに参加する人々が社員である必要はなくなる。もっと詳しく言えば、仕事を進める上でのインプットがどこから来ても構わないということになる。そうすれば、社内用に構築されたエンタープライズ2.0が門戸を開放し、社外の人々と交流するためのプラットフォームになる可能性があるのではないだろうか。
社内SNSをグループ企業にまで展開する例は既に存在しているし、セキュリティ面での障害さえクリアできれば、協力会社とのコミュニケーションにSNSを活用することもあるだろう。米国では社員だけでなく、顧客にもWikiを更新してもらい、一緒にナレッジを蓄積するという事例まで登場している。エンタープライズだけでなく、他社や顧客、潜在顧客までも含めた「コミュニティー」と呼べるプラットフォームに進化する――その発芽が2009年に見られるのではないかと期待している。
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