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「顧客やパートナーの声をシステムに反映」――三井住友海上・玉田氏CIOインタビュー(2/3 ページ)

企業の統廃合が進む保険業界。その中にあって企業経営の基盤である情報システムの果たす役割は大きい。とりわけ競争優位を保つためには、ステークホルダーの期待に応えるシステムが重要だという。

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いち早くWeb技術を取り入れる

――損害保険は大きく分けて、自動車保険、火災保険、傷害保険があります。通常は保険ごとに異なったシステムとなっていますが、三井住友海上火災のシステムはいかがですか。

玉田 保険契約を管理する個々のデータベースは分かれています。ただし全体のフローは一本で動いています。契約画面は保険ごとに異なっていますが、それを受け入れる側は1つだと考えれば分かりやすいでしょう。


――三井住友海上火災のIT部門は損害保険業界において先進的な企業として知られています。どの点で優れているとお考えでしょうか。

玉田 1997年ごろにWebベースの社内ポータルを開発しました。当時ほかの企業ではIBMのグループウェア「Lotus Notes」が一般的でしたし、社内ではインターネットがようやく普及してきたばかりでしたから、かなり革新的な取り組みだったと自負しています。このシステムは三井住友の頭文字「MS」と業界1位を目指すという「1」を組み合わせて「MS1」と呼んでいます。

 当初は社内での活用でしたが、現在は保険代理店用のシステムとしても使っています。メニュー画面のユーザーインタフェースやアプリケーションの操作性にも気を配っており、多くの代理店からシステムが使いやすいという評価をもらっています。

 またシステムを構築するにあたり、代理店の要望をできるだけ早く取り入れてきました。例えばシステムのレスポンスが悪いという不満を解消するために、ネットワークにはかなりの投資をしています。

顧客視点のサービスを

――2006年7月に金融庁から保険金不払い問題で行政処分を受けましたが、これは何が問題だったのでしょうか。ITのプロセスやガバナンスに関する問題点はなかったのでしょうか。

玉田 基本的には保険金の不払いがあったということに尽きます。システム側に責任はないと思いますが、業務プロセスの処理には問題があったと理解しています。業務プロセスを改善するためには、必要となるプロセスをサポートするシステムの構築が当然必要です。IT部門としては、使いやすいシステム、間違いの起こらないシステムを目指します。


――顧客に対するコンタクトポイントとして、インターネットの重要性が増しています。IT部門はどのように支援をされているのでしょうか。

玉田 これまでは金融庁や同業他社ばかりに目が向いて、顧客の視点で物事をとらえていなかったと思います。例えば、引越しに伴う住所変更などの諸手続きをインターネットで行うなど、ほかの業界では既に常識となっていることが保険業界ではできていませんでした。それが金融庁の指導を機に抜本的に変わりました。

 インターネットだけに限らず、顧客がより商品を理解しやすく、納得して契約してもらえるようなツールの開発にも力を入れています。例えば、従来の契約では印鑑が必要でしたが、なくても契約を可能にする仕組みを考えています。

 加えて、顧客への支払いに至る業務プロセスをすべて分析し、提供する情報や対応を一元化するシステムを再構築しています。


――IT部門が成長するためには経営者の理解が不可欠です。しかしながら、多くの企業では経営者ならびにビジネス部門とIT部門には溝があるという指摘があります。

玉田 当社の場合、ITに対するトップマネジメントの理解はあると思います。問題は中身をいかに深く理解してもらうかで、その点にIT部門が努力を払うのは当然の任務だと考えます。IT投資にお金がかかるのは間違いありません。経営側は投資効果について明確には理解していないため、きちんと説明することが重要です。

 当社の役員に向けた「システム投資委員会」というものがあります。毎月定例で情報システムに関する説明会を開催しています。年初計画に対する進ちょく状況や、一定規模以上の開発案件の説明などを行っています。

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