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鮮度が絶対条件、品質とスピードに徹した明治乳業の物流改革逆境をはね返すサプライチェーン改革(1/2 ページ)

牛乳やヨーグルトなどの市乳製品は鮮度の保持が絶対条件であるため、注文から納入までのリードタイムをどれだけ短くできるかがメーカーの物流における重要な課題だ。市乳製品が売り上げの多くを占める明治乳業では、いかなる工夫が見られるのだろうか。取り組みを追った。

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本記事は、特集「逆境をはね返すサプライチェーン改革」のコンテンツです。関連記事はこちらでご覧になれます。




 2008年は日本の食品業界にとって苦難の連続だった。穀物などの原材料価格の高騰、中国製品のメラミン混入問題による消費者の食品に対する不信感、9月に起きた米大手証券の破たんが引き金となり世界が未曾有の経済危機に突入するなど、経営を取り巻く環境は厳しさを増している。

東京都江東区の明治乳業本社
東京都江東区の明治乳業本社

 そうした食品業界において、市場や消費者から特に厳しい要求を突きつけられるのが乳業メーカーだ。業界最大手の明治乳業は、牛乳やヨーグルト、クリームなどの市乳製品、チーズやバター、アイスクリームなどの乳製品、そのほか冷凍食品や栄養食品を提供する。特に食品事業部門の売り上げの半数近くを占める市乳製品は、何よりも新鮮さが売り物であるため、受注から納品までのリードタイムの短縮化と、鮮度を長く保持できるような品質管理が不可欠である。

 例えば、菓子類など比較的消費期限の長い食品に見られる逆転出荷、つまり、今日よりも古い日付を明日に出荷するというようなことは、鮮度が絶対条件の市乳製品では決して許されないことである。

納期に遅れると取引停止に

 商品を工場で生産してからスーパーやコンビニエンスストアに配送するまでの時間をいかに短縮するかが重要になる。同社の食品でもチーズやアイスクリームであれば、一定期間は在庫としてストックできるが、市乳製品はそうはいかない。注文を受けてから取引先の共同配送センターに納品するまで平均で4、5時間、最短の場合は1時間のリードタイムしか許されない。スーパーなど量販店における市乳製品の取引では、この要求に対応できることが絶対条件になるため、欠品が出たり納入時間に数分でも遅れるようなものなら警告を受け、最悪の場合は取引停止になる。

 明治乳業が取り組んだのが、市場の需要を正確に把握し、在庫を抱えずに必要な数だけ生産、販売していく物流システムの構築――すなわち、サプライチェーン改革である。

コスト削減だけがSCMではない

 改革プロジェクトの推進役の一人である情報システム部長の田中弘幸氏によると、同社の市乳製品は注文を受けた時点で、その日に予定する出荷分についてはほぼ出来上がっているため、それをベースに顧客の需要に合わせた生産量の増減、必要であればほかの地区からの補填で数を調整する。

 田中氏は「サプライチェーンにおける市乳製品の勘所は、品質や安全の管理にある」と話す。一般的にサプライチェーンは、在庫を縮小してコストを安くすることが目的のようにいわれるが、とりわけ食品の場合では品質や安全を確保し顧客に信頼される仕組みでないと、いくらコストを圧縮できても意味がないということだ。そこで同社では、サプライチェーンマネジメント(SCM)システムとラインのオペレーターの二重チェックで鮮度日付などの品質管理を徹底している。

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