反復学習で社員に情報浸透させるシステム イー・コミュニケーションズ:コンプライアンス教育にも活用
内部統制の観点から、セキュリティやコンプライアンスの社員教育が叫ばれる中、効果的に知識を浸透させることに苦心する企業は多い。解決のヒントは人間の記憶にあるという。
「業務マニュアルを作成しても誰も読まない」、「新しい社内規則が浸透しない」――こうした問題を抱える企業は少なくないはずだ。eラーニングや集合研修などで社員との情報共有を図ろうとするも、時間やコストがかかる割には効果が上がらないことが多々ある。
TOEICや漢字検定をはじめ、さまざまな検定で利用が進むCBT(Computer Based Training)システムを開発するイー・コミュニケーションズは、社員の知識定着を目的にしたASP型の情報ナレッジマネジメントシステム「FALCON」を提供する。FALCONは同社が長年にわたり検定事業で蓄積してきたノウハウのほか、学術的な理論も反映されている。
神経心理学者のラリー・スクワイアによると、人間の記憶は、大きく感覚記憶、短期記憶、長期記憶の3つに分類される。eラーニングなどで社員に情報浸透を強要しても、多くの場合は読み聞きだけの丸暗記なので、短期記憶としてすぐに忘れてしまう。同社で営業本部 営業第2グループ マネジャーの井関英明氏は「長期記憶にするには、考えさせながら繰り返し学習することが重要」だと話す。そうした考え方にのっとり、FALCONは問答形式のドリルで短時間に知識を習得できる仕組みを採用している。
やらされ感ではなくゲーム感覚で
ただし効果的な学習の仕組みが整っていても、社員がやらされ感を持ったり、継続的に取り組まなければ意味がない。そこで成績ランキングなどで学習者自身だけでなく他者の状況もリアルタイムに把握できるようにした。「相対評価にすることで競争意識が芽生え、ランキングを上げるために何回も挑戦する社員も出てきた」と井関氏は説明する。ゲーム感覚で取り組むうちに、いつの間にか知識が定着しているという。
「日本版SOX法施行などの影響もあり、セキュリティやコンプライアンスの教育に活用したいという引き合いが多い。全社員の価値観を統一するために、企業理念を浸透させたいという声も増えている」(井関氏)
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