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ピントはずれ藤田正美の「まるごとオブザーバー」(2/2 ページ)

「日本の傷は相対的に浅い」、「日本だけが良くなるわけにはいかない」などと話す麻生首相。いまだ世界的な経済不況が進行する中、この現状認識の甘さはいかがなものであろうか。

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日本政府の対応はピントはずれ

 こういった景気対策の遅れは、もともと麻生総理がよく言っていた「日本の傷は相対的に浅い」という認識に基づくものだ。しかし、輸出市場の崩壊が日本の輸出産業を直撃し、内需はそれを埋めることができなかった。労働分配率の低下傾向が続いていれば当然のことかもしれない。いわば日本経済は、外からのショックに極めて脆い構造を抱えていたわけで、これこそ内需主導経済への転換を掲げながら、いっこうにそれを実現できなかった自民党政権の失態である。

 小泉改革を続けていれば、日本経済の構造改善が進んだかどうかは、意見が分かれるところだろうが、少なくとも小泉改革以前のままでよかったとは到底思えない。それに安倍政権、福田政権、そして麻生政権と小泉改革とは逆の方向に走ってきたのも事実である。

 この先、景気がいつ回復するのか、見通すのは難しい。少なくとも現時点で言えるのは2009年中の回復はないということである。早くても2010年の後半だとする説も聞いた。しかしハリー・デント・ジュニアという著名なエコノミストは、2009年から10年にかけて株価が暴落し、米国の株が底値をつけるのは12年だと予測している。そうなればまさに1929年以来の大恐慌だ。

 世界の景気見通しが日に日に悪化しているような状況の中で、日本政府の対応はあまりにもピントはずれのような気がしてならない。そう思うのはわたしだけだろうか。


プロフィール

藤田正美(ふじた まさよし)

『ニューズウィーク日本版』元編集長。1948年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、『週刊東洋経済』の記者・編集者として14年間の経験を積む。85年に「よりグローバルな視点」を求めて『ニューズウィーク日本版』創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年同誌編集長。2001年〜2004年3月同誌編集主幹。インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテータとして出演。2004年4月からはフリーランスとして現在に至る。



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