クラウドとSOA、共通する課題とは?:丸山先生レクチャーシリーズ 第6回リポート
企業での関心が強まっているクラウドコンピューティングだが、安易に導入できるものでもない。丸山氏は「クラウドとSOAは通じるものがある」と語る。
4月24日、日本オラクルが主催するイベント「Oracle OpenWorld Tokyo」において、早稲田大学大学院 情報生産システム研究科で客員教授を務める丸山不二夫氏の「第6回 丸山先生レクチャーシリーズ」が開かれた。クラウドとSOA(サービス指向アーキテクチャ)の最新トレンドをテーマに講演した丸山氏は、「企業のクラウドコンピューティング対応とSOA導入における課題は通じるものがある」と考えを示した。
クラウドコンピューティングに対する企業の関心は高まっているものの、現状の情報システムから移行する必要性、新たな技術の可能性などについては、慎重姿勢を崩していない。丸山氏は「クラウドの商用利用はこれからだ。しかし備えは今からすべき」と強調する。
企業内の情報システムをクラウド化するための条件は何か。丸山氏は、システムがサイロ化していないこと、全社レベルでITガバナンスが利いていること、最終的には経営層の意思決定が可能なことの3点を挙げる。「これらはSOA環境を実現する条件でもあり、企業クラウドの導入とはSOAに基づいた企業システムとの再統合にほかならない」と丸山氏は解説する。裏を返せば、SOAの導入が成されていればクラウドへの移行も容易というわけだ。
丸山氏によると、SOA導入を阻害する原因には業務側からの問題とIT側からの問題が存在する。前者は、ガバナンスの不確立、ビジネスを醸成するサービスのモデル化、ビジネスプロセスの抽出の困難、データの重要性の過小評価がある。ガバナンスに関しては「CIO(最高情報責任者)が統制を効かせて、技術やビジネスの決断に食い違いがないようにするべきだが、まだ日本では実現できていない」と丸山氏は語る。IT上の問題については、ビジネス上の価値が見えない、既存のシステムをWebサービスで置き換えただけにすぎない、俊敏性や拡張性の欠如などが挙げられる。
「たとえ導入や運用のコストが安いからといっても、準備なくしてクラウドへの移行はできない。ベンダーやシステムインテグレーターもクラウドの最新技術にキャッチアップしてユーザー企業へ情報提供すべきだ」(丸山氏)
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