中国で食品安全法が施行、不法企業を厳しく管理:中国ビジネス最前線
食品安全の基準があいまいな中国では、不法な企業に逃げ道が多く残されていた。そこで政府は6月1日に新法を施行し、徹底した管理体制を構築する。
▽「食品安全法」を1日から施行
中国で「食品安全法」の施行が6月1日からスタートした。生産現場における生産者の責任を明らかにし、各基準項目を規格化し、政府の監督管理職責制度を完備した食品安全法には新しい理念と制度が盛り込まれており、国民のための厳密な食品安全ネットワークが完成したことになる。
中国の食品安全基準
中国の食品安全基準は雑多で混乱しており、法律を順守する企業が進むべき方向性が明確でなく、不法企業に逃げ道が残されていた。従来の食品品質検査免除制度は、監督管理部門が自らの職責を放棄し、隠れた危険性を食品に植え付ける要因となっていた。
食品安全法では、食品安全監督管理部門は食品の品質検査を免除してはならないと明確に規定し、県レベル以上の品質監督、工商行政管理、食品薬品監督管理各部門に、食品に対する定期、不定期サンプリング検査を実施することを義務付けた。
「食品安全法」の施行
食品安全法は、このような混乱現象の対応措置として、国務院(中国政府)衛生行政部門が現行基準(食用農産物品質安全基準、食品衛生基準、食品品質基準、食品関連業界基準)における強制基準を統合し、食品安全国家基準として統一的に公布しなければならないと定めた。
同法では、国家による食品リコール制度の導入を規定し、食品生産者は自社製品が食品安全基準に符合していないことを発見した場合、直ちに生産を停止し、市場で販売されている食品をリコールし、関連する販売者と消費者に通知を出し、リコールおよび詳細状況を説明しなければならないとした。
このほか食品安全法では、食品生産者の社会的責任が特に強調され、食品生産者は社会・一般大衆に対して責任を負い、食品安全を保証し、社会監督を受け入れ、社会責任を担うことが求められている。
▽中国、銀行業の資産総額60兆元
中国銀行監督管理委員会(銀監会)は6月1日、「銀監会2008年報」を発表した。これによると、銀行業金融機関の資産総額は2008年に初めて60兆元(約900兆円)を突破し、年初比18.6%増の62兆4000億元に達した。この額は国内総生産の207.5%に相当する。
年報によると、商業銀行の平均資本充足率は昨年比3.7ポイント増の12%に達し、基準に達した銀行は前年比43カ所増の204カ所、銀行の資産は商業銀行総資産の99.9%を占めた。
また、中国の銀行業は安定した発展を続けており、不良債権額・不良債権率は共に下がり、2008年末時点で、5段階評価で「不良債権」に分類された債権の残高は5603億元と、年初比7082億元減少している。不良債権率は年初比3.7ポイント減の2.4%となった。
このほか、商業銀行の不良債権引当カバー率は年初比75.2ポイント増の116.4%に達した。収益能力もさらに高まり、税引き後利益は5834億元、総資本利益率は17.1%、総資産利益率は1.0%に達している。
▽商務部、輸出増値税を全額還付へ
2009年4月、中国の実質外資導入額の下げ幅は22.5%まで拡大し、昨年10月からの7カ月連続の低下となった。輸出は引き続き減少し、4月の中国の輸出入総額は累計で5994億700万ドル、前年同期比で24.3%低下、輸出は縮小し続けている。
5月26日に王岐山国務院副総理は公的な場で、全力で輸出企業の利益を守る姿勢を示した。関係筋によると、商務部は、軽工業製品と機械・電気製品を含む、輸出時における増値税の全額払い戻しに関する案を検討しているという。
しかし、貿易企業の資金チェーンのひっ迫状況は一向に緩和されず、輸出時における増値税の全額還付は「命を救うわら」になるか、それとも「焼け石に水」となるか、業界内ではその効果を疑問視する声も出ている。
※この記事は内田総研グループ発行のメールマガジン『士業・net』の一部を加筆・修正し、許可を得て転載しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 逆境をはね返すサプライチェーン改革:鮮度が絶対条件、品質とスピードに徹した明治乳業の物流改革
牛乳やヨーグルトなどの市乳製品は鮮度の保持が絶対条件であるため、注文から納入までのリードタイムをどれだけ短くできるかがメーカーの物流における重要な課題だ。市乳製品が売り上げの多くを占める明治乳業では、いかなる工夫が見られるのだろうか。取り組みを追った。 - 食の安全とITを考える:ギョーザ事件はシステマチックに防げるのか?
今年1月に起きた「中国製ギョーザ事件」は、いまだ解決の兆しが見えない。当初の捜査では、流通工程のどの部分で毒物が混入されたかが争点になっていた。こうした食の安全に対しITがどこまで関与できるのだろうか。 - なぜあの会社は叩かれたのか:危機が重大化する構造――危機の本質とは
企業の周りは、さまざまな危機が存在する。それらすべてを管理することは非常に困難だが、押さえておくべきポイントが存在する。 - 経営のヒントになる1冊:最強の資源に育て上げろ――「コメ国富論」
日本人の主食であるコメを取り巻く環境は深刻さを増している。農業の“ムラ社会”化が状況の悪化を加速させる。今こそ広く門戸を開放し、外部から刺激を受け入れ、潜在的な生産力を高めるべきであろう。