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アスリートを勝利に導く環境づくり小松裕の「スポーツドクター奮闘記」(1/2 ページ)

スポーツ選手が世界の舞台で勝つために最高のコンディションを用意してあげるのがスポーツドクターの責務です。メディカルチェックなど医師としてのアプローチは当然のこと、食堂や風呂場でのちょっとしたコミュニケーションも軽視できません。

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 スポーツドクターの役割は「選手たちが最高のコンディションで練習や試合に臨めるようにするための手伝い」であることを前回書きました。今回は、オリンピック選手たちが日ごろどのようなメディカルサポートを受けているかについて紹介します。

国立スポーツ科学センターの外観
国立スポーツ科学センターの外観

 わたしが勤務する国立スポーツ科学センター(JISS)は、文部科学省の「スポーツ振興基本計画」に基づき、「国際競技力向上」を目的として、2001年に東京都北区西が丘に設立されました。都営三田線の本蓮沼駅から徒歩10分、JRの赤羽駅あるいは十条駅からはタクシーでワンメーターという立地です。「西が丘サッカー場」も同じ敷地内にあります。母体は「独立行政法人日本スポーツ振興センター」で、JISS以外にも、国立競技場の運営や、スポーツ振興くじ(toto)の収益を基にしたスポーツの支援なども行っています。

 JISSにはスポーツ医学、スポーツ科学、スポーツ情報の3つの研究部があり、互いに連携して競技力向上のための事業を行っています。医学研究部はJISS内にクリニックを持ち、日々トップアスリートのためのメディカルチェックや診療、研究などを行います。

世界で勝つためのメディカルチェック

 メディカルチェックとは、オリンピック選手のための人間ドックのようなものです。「最高のパフォーマンスを発揮するために何か医学的な問題点がないか」という観点でチェックが行われます。実際には、内科、整形外科、歯科の診察、アンチドーピングにかかわる問診や婦人科的問題点の問診、レントゲン、血液、尿、心電図、心エコー、呼吸機能などの検査、そのほか科学的な測定、栄養チェック、メンタルチェックなどを行います。そして「世界で勝てる選手になるための問題点」を洗い出し、それを選手にフィードバックします。同時に、競技団体のメディカルスタッフや強化スタッフと連携をとって、その問題点の解決にもかかわります。問題点が解決できているかもチェックするのです。この点がとても重要です。

 トップアスリート専門の外来診療も行われます。ここでは、内科および整形外科の診療に加え、非常勤スポーツ専門医による歯科、皮膚科、婦人科、耳鼻科、眼科、心療内科の外来があります。

 選手たちを診察していると、自分の身体のことやコンディショニング、アンチドーピングなどにどのくらい興味があるか、理解しているのかが分かります。もちろん、オリンピックのメダリストレベルの選手たちはとてもよく理解しています。自分で自分の身体を管理して、よいコンディションで試合に臨まなければ勝てないことを十分理解しています。

 しかし、ジュニアの選手やこれからオリンピックを目指す選手たちは必ずしもそうではありません。例えば、最近受けた治療について聞いても、「治療内容がよく分からない」、「飲んだ薬の名前を答えられない」といった状況です。診察しながら指摘すべきだと感じた時は、「自分の身体を知ることがとても大事なのだよ。オリンピック選手たちは、飲んだ薬の名前をすぐ答えられるし、自分の身体のことをよく分かっている。そういうことも勉強しながらオリンピック選手を目指してね」と投げ掛けると、たいていの選手は目を輝かせながら真剣に話を聞いてくれます。

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