【第12話】沈黙の知恵出し:内山悟志の「IT人材育成物語」(2/2 ページ)
経営企画部の吉田部長の申し出により、今回から阿部と浅賀の2人が勉強会に加わることとなった。4人になったメンバーで組織が抱える課題に対する解決策を洗い出す作業が始まった。
課題を分担する
川口は説明を続けた。「さて、ここで最初の1行目に何を書き出すかが重要となる。前回さまざまな課題を挙げて整理したわけだが、1行目に全員が同じ課題の解決策を書いてしまったら、2行目以降もそれを発展させたアイデアばかりが出されることとなり、解決策が偏ってしまう。これを避けるために、1行目はあらかじめ話し合って課題を分担しておくといい。例えば、4人で3枚ずつだとすると、1行目は12枚となる。この12枚に、前回の課題(イシュー・ツリー)の3〜4レベル目を分担して当てはめる。課題の粒度をなるべくそろえるのがポイントだ。そして、『○○が低下している』と表現された課題に対して『○○を向上させる』といった具合に、表現を裏返して解決策を記述する」
飲み込みの早い奥山が「上から4レベル目にあたる水色のカードがちょうど12枚ありますね。例えば『IT部門に変革のリーダーシップがない』という課題を裏返して『IT部門の変革へのリーダーシップを強化する』という具合に1行目の1枚を設定すれば良いのですね」と発言した。
「そうだ、さすが奥山さん。それでその調子で1行目を分担してみると良い」。川口の言葉に気を良くした奥山が中心となって1行目に当たる課題を分担していった。阿部と浅賀は、最初は奥山の勢いにおされ気味だったが、次第に要領がつかめてきた様子で、徐々に共同作業が進んでいったのだった。
著者プロフィール
内山悟志(うちやま さとし)
株式会社アイ・ティ・アール(ITR) 代表取締役/プリンシパル・アナリスト
大手外資系企業の情報システム部門、データクエスト・ジャパン株式会社のシニア・アナリストを経て、1994年、情報技術研究所(現ITR)を設立し代表取締役に就任。ガートナーグループ・ジャパン・リサーチ・センター代表を兼務する。現在は、IT戦略、IT投資、IT組織運営などの分野を専門とするアナリストとして活動。近著は「名前だけのITコンサルなんていらない」(翔泳社)、「日本版SOX法 IT統制実践法」(SRC)、そのほか寄稿記事、講演など多数。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 内山悟志の「IT人材育成物語」:【第11話】渡りに船
苦労しながらも、何とか課題の構造化を終えた3人はいつもの食事処に向かった。そこでは秦野と経営企画部の吉田部長が彼らを待ち構えていた。 - 内山悟志の「IT人材育成物語」:【第10話】注目の的
第3回目の勉強会で、課題を構造化する作業に取り掛かる宮下と奥村の2人。ちょうどそのころ、情報システム部長の秦野は、経営企画部の吉田部長からある相談を持ちかけられていた。 - 内山悟志の「IT人材育成物語」:【第9話】収束の技法
カードBS法によって約50の課題が洗い出された。問題解決のためには、収束の技法を使ってこれを構造化しなければならない。川口は、構造化のために必要な類型化(グルーピング)と抽象化について説明した。 - 内山悟志の「IT人材育成物語」:【第8話】課題を洗い出す
いよいよ検討テーマに対する課題の洗い出しが始まる。カードBS法と呼ばれる手法を活用し「なぜ、ITが十分に事業に貢献できていないのか」の原因を導き出す。 - 「場当たりな対処」と「問題解決」をはき違えていませんか
その場しのぎの対処を重ねても、組織が抱える根本的な問題を解決することはできない。タスクチームでは、問題の原因を徹底的に究明する姿勢が求められる。