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【最終回】IT経営で成功する経営者の資質21世紀市場を勝ち抜くIT経営(2/2 ページ)

不況の中でも成功する企業の共通項として、美意識を持った経営というものが挙げられる。21世紀経営の潮流は、サイエンスからアートへ、さらに哲学へとシフトしていくことを予感させるものだ。

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絶対君主型ではないIT経営企業

 IT経営の成功企業は、それぞれ個性的である。これは「こだわり」や「独自性」を貫くことで付加価値を獲得しているためである。こうした企業は、「独自の企業文化を共有する集団」であり、「会社は誰のものか」「成功と報酬の関係」「従業員満足度向上とマーケットバリュー向上」などについた明確な回答を持っており、経営者-従業員-取引先-顧客-社会-株主とのバランスのとれた関係構築を目指している。

 中小企業の場合、成功企業の社長は、一般に宗教家のようなカリスマ性を持つが、IT経営企業の場合は絶対君主型ではない。それは経営のオープン化に真摯に取り組んでいることが大きい。経営情報の共有によってトップダウンよりボトムアップ型の経営スタイルが生まれ、これがやる気創造にプラスに働いている。組織も階層が浅くなり責任と権限の委譲が進んでいる。21世紀型の新しい経営スタイルが生まれてきているのである。

 だが、一般企業がこのようなIT経営を早期に成功させることは現実問題としてかなり困難であると言わざるを得ない。それは会社全体の意識改革が必要となるからだ。じっくりと時間をかけて一歩一歩、ステップを上げて長期的に経営を進化させていく取り組みが必要である。わたしは「亀の歩み」戦略と名付けている。米国や中国、韓国などの企業は短期決戦に強い「ウサギ」型の意思決定を持つ特徴があるが、日本企業はじっくりと長期で取り組むDNAがあるはずである。

 「継続は力なり」。こだわり、独自性の経営を長期戦略として実施すれば、強い人材が育ち、それが武器となり諸外国に優位に立てる力を持つ。IT経営の成功はそうした地道で真摯な長期的取り組みから生まれ育つ。


著者プロフィール

上村孝樹(かみむら たかき)

ジャーナリスト/経営・ビジネスアドバイザー

1949年新潟県生まれ。青山学院大学経済学部卒業。日本ビジネスコンサルタント(現日立情報システムズ)を経て、1980年、日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。81年日経コンピュータ誌創刊とともに、同誌編集部記者、同副編集長を経て、93年3月、日経情報ストラテジー編集長。95年5月から同誌発行人を兼任。98年3月にコンピュータ局主席編集委員。2003年1月、日経アドバンテージ編集長、同年3月発行人を兼任。2005年4月、日経BP社を退職し、フリーとしてジャーナリスト/コンサルティング活動開始。2004年から金沢工業大学大学院客員教授に就任。2007年から事業創造大学院大学のIT経営講座・主任教授に就任、同年年5月から「IT経営講座」を開講している。



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