辞めたホステスを部下に呼び出させる ヒラメ部長の愚行:生き残れない経営(2/2 ページ)
にわかに信じがたいことだが、世の中には次々と愚かな行動をとる経営幹部が多数存在するのだ。まったく呆れ返ってしまう。
ヒラメ型
上層部ばかりをうかがうタイプである。徹底したヒラメを紹介しよう。某大企業の常務取締役海外本部長はトップが海外出張するとき、ホテル、食事、送迎車の車種、二次会の場所や内容など細部について、トップの好みに合わせた指示を現地社長にし、絶対に手抜かりがないように手配させた。トップが夫人同伴の際は、夫人の好みに徹底して合わせた。手抜かりがあれば、本部長は激怒し、現地社長にダメ烙印を押した。
ヒラメ型は部下にも同じことを要求する。その海外本部長も例外ではなかった。香港で本部長がなじみのクラブへ案内されたが、お気に入りのホステスが不在のため不機嫌になり、困り果てた現地社長が既にクラブを辞めていた女性を電話で自宅から呼び出し、本部長の機嫌を直して事なきを得たという逸話がある。
この本部長は社内で大いに批判されていたが、トップからの評価が高かったため、誰もどうすることができなかった。こういう人種は、接待だけでなく業務についても上司に絶対服従、己の意見を簡単に殺すことができる。同じく部下にもそれを強いる。自分の愚行に気付かず反省の機会もない。トップも本部長も裸の王様を演じているだけだ。せめて他山の石としたい。
成功体験固執型
某中堅企業の会長は、自分を会社中興の祖であると自認している。たまたまバブルに助けられた面があったのに、自分の経営がすべて正しかったと認識している。その結果、会長になっても人事権を社長に渡さない、膨大な書類作成や頻繁な会議、厚生施設や事業所の豪華な建て替え、超一流ゴルフ場会員券の取得など、良き時代の贅沢な経営に固執した。当然、ムダの集積により業績は下降した。一部役員が改革を試みたが、ことごとく会長に干された。業績が悪化し切ったところで、会長は莫大な退職金をせしめて去った。こういう場合は、心ある役員などが結集して、組織的に改革に取り組まなければならず、個別撃破では限界がある。
公私混同型
世の中には社内接待が多すぎるのではないか。社内のほかの部門や部下との会食は意思の疎通を図ったり慰労をしたりする意味から、社用で費用負担をしても良いとする意見が一部にある。政治の世界でも、身内接待が少なくないようだ。
しかし、それは接待で顧客を帰した後に銀座へ繰り出し、それを接待の延長とする風習にもつながる。かつて顧客接待後、マッサージにかかって、挙句の果て割烹に1泊し、その費用を接待費で落とすトップがいたが、その企業ではすべての規律が緩んだ。
一時が万事、その種の経営者がいるところには、経営や日ごろの管理に甘さが出る。経営者は己に厳しくなければならない。部下との会食、ましてやマッサージ代など、自己負担をしても大した出費じゃあるまい。己に厳しくしなければ、部下に厳しくできない。
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著者プロフィール
増岡直二郎(ますおか なおじろう)
日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。
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