悪しき習慣、昔の職制を持ち込むOB会:生き残れない経営(2/2 ページ)
会社を卒業すれば誰もが一個人に戻るのだ。長幼の序は重んじるべきだが、かつての役職に縛られて自由闊達な付き合いができないのはいかがなものか。
コミュニケーション技術を磨け
筆者は格闘技が好きで、よくTV観戦する。ボクシングでも、柔道でも、大相撲でも、「もっと手数や足技を出せば、もっと押し込んで攻めれば勝つチャンスがあったのに」という試合が多い。例えば、大相撲では下位力士が横綱に簡単に敗れる。下位力士はどうせ99.99%敗れるのだから、あの大きな体を立会いのとき思い切りぶつけて横綱をふっ飛ばせばいいものをと思う。そうさせないのは横綱の技術が相手の力を殺しているからだろう。
同じような技術がコミュニケーションにもあると思う。コミュニケーションに勝敗はないが、相手の言い分を十分聞き取り、当方の言い分をきちんと聞いてもらう、そしてそれを経営に生かすという技術がなければ、相手を前にただ立ちすくむだけになる。そういう意味では、コミュニケーションも真剣勝負だ。
上司は部下の言い分に耳を傾けるという謙虚さと寛大さ、現場の意見を吸収して経営に生かそうとする前向きな姿勢、一方で自分の考えや方針を説いて折伏させるための理論を身に付けて、磨き続けなければならない。下の人間は、上司を説得するために適切な課題を設定し、鋭い状況分析を基に、戦略的、理論的に自分の意見をまとめ、こちらに振り向かせるようにしなければならない。そのためには、常に自己研鑽が必要である。でなければ、ただ自己主張しても、犬の遠吠えになってしまう。
それらを、格闘技の技術と同じく、コミュニケーションの技術と呼ぶなら、上下共に不断の努力で技術を磨いてこそ、コミュニケーションの勝負を制することができるのだ。
マネジメントの特有のスキルの1つが、コミュニケーションである(P.F.ドラッカー「マネジメント」ダイヤモンド社)。望ましいコミュニケーションを、たまたま企業OB会にヒントを得て、さらに格闘技に学ぶ。上にも下にもコミュニケーションの壁がある。それを取り除くには、社内でお互いに「一企業人」として存在を認め、コミュニケーションの技術を磨き続けることだ。そうすれば企業にとって大いにプラスになるのだ。
増岡直二郎氏による辛口連載「生き残れない経営」の過去記事はこちら。
著者プロフィール
増岡直二郎(ますおか なおじろう)
日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。
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