「IT部門のリーダーこそ現場に飛び出せ」――ITR・内山代表:IT投資の新方程式(2/2 ページ)
低迷からの脱却が求められる2010年。企業のリーダーこそが真っ先に現場に出るべきだとITRの内山代表は語る。
収益増に直接つながるIT戦略を
ITmedia コスト削減を進める一方、企業はさらなるビジネス成長に向け、どこに重点を置くべきでしょうか。
内山 今回の調査で「2010年度のIT戦略として最重要視するキーワード」を質問したところ、ITコストの削減、業務コストの削減を上回り、売り上げ増大への直接的な貢献が1位でした。IT活用による省力化や業務の迅速化など、売り上げへの間接的な貢献はこれまでも果たしてきましたが、いよいよITを使うことで今すぐに売り上げを伸ばす、利益を拡大させるという点が求められてきています。IT部門もより能動的なビジネス貢献という領域に足を踏み出すべきだという思いが強くなってきています。例えば、営業、販売、マーケティング系のアプリケーションに関心が高いし、インターネットをいかにビジネスに活用できるかという点もポイントになってきています。
これまで積極的にIT投資をしてきた先進的なCIO(最高情報責任者)の中には、「イノベーション」をキーワードに挙げて、ビジネス革新やビジネスモデルの変革に向けたIT活用を思考している方々が増えています。
例えば、菓子メーカー大手のカルビーでは、コンビニエンスストアやスーパーマーケットに対して、新商品のカタログや事前に印刷したPOPメッセージを配るのではなく、オンデマンドで閲覧、印刷できるアプリケーションを活用したサービスを展開して、営業活動を進めています。アイコンなどの素材がオンラインでデータベース化されていて、エリアマネジャーが店舗の担当者にPC画面を見せながらプレゼンテーションするわけです。
以前は丁寧に印刷したPOPを配布していましたが、一律のキャンペーンしかできなかったり、せっかく作った素材が余ってしまったりという欠点がありました。オンライン化することで地域性や店長の嗜好に合わせたカスタマイズが可能で、店舗ごとのキャンペーンが展開できるようになりました。コスト削減のみならず、業務の迅速化も実現できるため、まさに売り上げ増大に直結したITの貢献と言えるでしょう。
縁の下の力持ちからの脱却
ITmedia 企業が成長を続ける上で、ITおよびIT部門は今後も原動力になり得るのでしょうか。
内山 今後、ITの力を借りずに国際競争力に勝つことは不可能でしょうし、成長のエンジンにしなければ競争力はどんどん落ちていきます。特に日本企業は、高度なデザイン力や調整能力、決め細やかなサービスなどの良い面をたくさん持っているにもかかわらず、市場が国内に閉じていたり、特定の業種だったりといった時代が長く続いていました。そうした強みにITを掛け合わせることで、世界に打って出るような新しい付加価値を作らなければなりません。
その役割を担うのは、ビジネスの最前線で働いている業務部門の方々であり、IT部門のトップであるCIOの存在が重要になってきます。IT部門のリーダーこそ現場に行き、積極的に口を挟んでいくといった能動的な活動をしないと、IT部門はいつまで経っても縁の下の力持ちでしかないし、経営者の期待にも応えられないのではないでしょうか。
トヨタ自動車の経営理念に「現場・現物主義」というものがあります。ITは実体のないものだと思われがちですが、ようやく最近では現場や現物と結び付く存在になってきています。それを最大限に生かすにはIT部門が外に出ることが必要なのです。現場のビジネスリーダーとともに歩いてチャンスを切り開き、社内の下請け的な存在からパートナーへ、さらにアドバイザーへと、ステップアップしていくべきなのです。
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