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企業を生かしも殺しもするプレゼン生き残れない経営(2/2 ページ)

日本人はプレゼンテーションが欧米人と比較のしようもないほど下手くそだ。いざプレゼンとなると、書類の多さこそが内容の充実と誠意を示すものだと誤解する。そうした悪例を何度も見てきた。

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プレゼン資料など不要

 そんな話はやめにして、効率的で自由闊達な議論から企業業績を回復させた優良企業を紹介する(「AERA」2009年2月2日号より引用)。

 飽和状態のコンビニ業界で、「一頭地を抜くのが業界3位のファミリーマート」である。2008年2月期にはコンビニ大手で唯一、既存店売上高が前期を上回った。2008年3〜11月期も前年同期と比べ6.9%伸びている。その背景には、社内意見の巧みな吸い上げ方がある。トップと社員の意見交換会には、(1) 事前にテーマを決めない、(2)資料を一切つくらせない、を厳守する。

 前社長時代は、机上に分厚い資料が積まれ、熱心なプレゼンが要求された。トップの好物を忖度する情報が駆け巡り、行く先々で食事は名物の蕎麦ばかりだった。どこかの企業にも見かける光景だ。その旧弊と上田準二社長は決別した。

「企業の規模が大きくなればなるほど、下から上がってくる情報が滞りやすく、トップが自分の間違いを修正しにくいきらいがある」、「どんなに面白く、わかりやすくても、一方的に話す落語スタイルはとらない。他人とのコミュニケーションの参考になるのは、断然漫才だ。相手との掛け合いで進んでいく」というのが、上田社長の持論だという。

 さらに一歩進め、社内でのプレゼンそのものがない会社が、気象予報情報を提供するウェザーニューズである。設備投資が過剰で、2005年と2006年の2期続けて赤字だった。その後V字回復を成し遂げ、2008年6月には社員給与を平均で15%も引き上げたという。

 プレゼンの代わりが、毎週月曜日午前9時半から始めるミーティング「GSHIGSHI(グシグシ)会」だという。社内組織の頭文字から命名し、アイデアをゴシゴシ練るという意味もあるらしい。

 役員から新人社員まで幕張勤務約350人の誰でも参加できる。ほかの拠点ともテレビ会議システムでつなぐ。最初に部署ごとの報告が30分。長引かないよう全員立ったままだ。続いて車座になり、どんな仕事をやりたいかの提案に移る。参加者の賛同が多く得られ、役員のゴーサインが出れば、その場で新プロジェクトが決まる。JR山手線車内の液晶画面「トレインチャンネル」への天気予報提供も、携帯端末で天気情報を送りゲリラ豪雨の発生を予測するビジネスも、この場で生まれたらしい。

「グシグシ会も、一種のプレゼンではないか」という問いに、石橋博良社長は「プレゼンは自己陶酔だ。どうしても格好をつける。そこからいいアイデアは生まれない。資料やプロジェクターの類を用意しないからこそ、うまく機能している」と答える。

 プレゼンには資料もプロジェクターも必須だという観念に取り付かれているわれわれには耳が痛い話ばかりだ。上例の自己満足の予算会議も設計の資料作りも、工夫の余地がある。そのためには、ファミリーマートやウェザーニューズのように経営陣の考えを改める必要があるのは言うまでもない。

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