自民党のていたらく:藤田正美の「まるごとオブザーバー」(2/2 ページ)
批判ばかりで政策論争もない政党の価値とは何だろうか。過去の誤りを認め、これからの日本のあり方提示しない限り、国民の支持が戻ることはないだろう。役割を果たさない政党が見分けられないほど国民の目は曇っていない。
日本を借金まみれにしたのは誰か
GDP(国内総生産)の2倍近い借金の山を築いてきたのが自分たちであるのに、財政規律がないと言って民主党を責め立てるさまは見苦しい。自分たちだったらどうやって財政を立て直すのかという工程表を示してほしいのである。本来、プライマリーバランスの目標年度があったのに、それを自らぶちこわしてしまったのは自民党だったのではなかったか。
自民党内では分裂に向けて動き出しているようだし、「みんなの党」は自民党から抜ける議員や民主党から抜ける議員の受け皿になろうとしている。どうしようもなければ、そうした政党の「多極化」というのも1つのあり方だとは思うが、時間がどれだけ残されているのかという懸念も決して小さくはない。
政権党としての民主党に政権担当能力がなく、野党としての自民党に魅力がないということになれば、有権者に残るのは深い失望感だけだ。そのほかの政党が参議院選挙までに失望した有権者に希望を与える受け皿になれるかどうか。はなはだ心許ない。
限られた時間の中では、自民党が立ち直るのが最も手っ取り早い。そのためには、建設的な野党の立ち居振る舞いを身に付けることである。建設的な野党とは、一にも二にも党派的な行動を捨てて、日本の将来を形作る政策や理念の論争を鳩山首相に挑むことだ(幸いにして、というか不幸にしてというか、鳩山政権の政策には問題が多いから、突っ込むところはいっぱいある)。本来の国会の姿を国民に見せつけてこそ、自民党には浮かぶチャンスが生まれてくる。
そして、その時に一番重要なことは、自分たちの政策の誤りを率直に認め、日本の将来のあり方について真摯に議論を挑むという姿勢を明確にすることだ。それをやらなければ、いくら賞味期限のラベルを貼り替えても、中身の賞味期限が切れていることを国民は承知している。賞味期限の偽装が悲惨な結果を招くことは、高級料亭でなくても分かるはずだ。
著者プロフィール
藤田正美(ふじた まさよし)
『ニューズウィーク日本版』元編集長。1948年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、『週刊東洋経済』の記者・編集者として14年間の経験を積む。85年に「よりグローバルな視点」を求めて『ニューズウィーク日本版』創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年同誌編集長。2001年〜2004年3月同誌編集主幹。インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテータとして出演。2004年4月からはフリーランスとして現在に至る。
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