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日航、IBMの提携解消に思う戦略コンサルタントの視点(3/3 ページ)

「日航、IBMとの提携を解消 システム開発事業競争入札でコスト削減」という動きから、今回はアウトソーシングについて考えてみることにします。

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情報システム部門 ケイパビリティの具体的な担保方法を

 また、親会社のシステム部門のミッションを、ここでもう一度よく考えることが避けられないでしょう。JITそして日本IBMと健全な緊張関係の創出・維持ができなかった点については多く反省すべきところもあるでしょう。

 日航と同様の形態のアウトソーシングを採用した企業の多くは、日航と同様「本社は企画に専念」というミッションを採用していました。ただ、その「企画力」をどのように担保しているのかという点があいまいな企業が多いのも実態ですし、「本社採用の社員であること」にのみ担保を求めているとしか思えない企業も多いものです。

 もちろん、本社採用であることは、期待できるポテンシャルを有していることを示すかもしれません。しかし、ポテンシャルとケイパビリティはまた別であるのも事実です。鍛錬や教育が必要となるのです。この点については、別途考えてみたいと思います。

最後に 協同利用型のシステムへの議論を

 「日本に航空会社が何社必要なのか」「国際線は一社が妥当か」といった議論にはここでは立ち入りません。

 ただ、各社個別に(航空会社用の)基幹システムを保有している状況については検討が要るかもしれません。

 ITを駆使したオペレーションによって、競争優位を創出することは不可能ではありませんし、まだまだその機会は多く残されていると考えられます。

 一方で「競争劣位の阻止」といった観点を忘れてはなりません。つまりオペレーションをつつがなく回すためにIT・システムが不可欠であるものの、IT・システム処理そのものは他社との差別化の要素にならないという点です。このようなシステムでは、投資額とITコストの管理が最重要の経営課題となります。

 「競争優位の創出」と「競争劣位の阻止」のメリハリをつけ、日本の航空業界としてのシステム協同利用化についての議論は必要性が高いと言えます。

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著者プロフィール:大野 隆司(おおの りゅうじ) 株式会社ローランド・ベルガー パートナー

大野 隆司

早稲田大学政治経済学部卒業後、米国系戦略コンサルティングファーム、米国系総合コンサルティング・ファーム、米国系ITコンサルティング・ファームを経て現職。電機、建設機械、化学、総合商社、銀行など幅広い業界の大手企業において、事業戦略、オペレーション戦略、IT戦略の策定などを手掛ける。


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