日本企業の海外展開で求められる現地人幹部の抜擢:Editor's Voice
ITmediaエグゼクティブ編集部がいま最も注目しているのは、日本企業のグローバル展開です。企業の強み、弱み、文化などさまざまな要因が混じり合うため、とても難しいテーマです。
日本の人口減少を見込み、日本企業の海外展開が業種を問わず目立ち始めています。「需要は世界にいくらでもある」と意気込むファーストリテイリングなど一部の「先進的」な企業はもちろん、いわゆる内需系企業も東アジアを中心とした海外での売り上げ比率を上げようとしています。9月16日の日本経済新聞でも、積水ハウスが中国での不動産開発に参入すると報じられました。事業規模は900億円に上り、その本気度が分かります。
特にこれまで海外での実績がなかった企業は、今後海外展開の難しさにぶつかることが想像されます。産業能率大学の調査によると、日本企業の海外子会社トップに関する基本政策において、現地人を採用するという回答はわずか23.5%にとどまることが分かりました。欧米企業の81.3%と比較すると、考え方が正反対であることが分かります。
以前の取材記事でも、現地化の重要性を書いたことがありました。現地人には現地人にしかできないローカルな経営資源の使い方ができるという点は、業種や業態にかかわらない現実であるようです。
産業能率大学も、「現地人材の幹部層への登用が進まないと現地の実情に即した経営が進みづらい」「現地の有能な人材に見限られて人材の流出を招く危険がある」と警告しています。
実際に、伊藤忠商事は現在、海外法人におけるマネジメント層以上の現地人割合を、2013年までに現在の3割程度から5割程度に引き上げるとしています。合成樹脂成形品と関連製品を製造する三光合成では、英国拠点の社長は英国人というように、現地人が海外拠点のトップになれるキャリアパスが開かれており、全拠点の現地人社員のモチベーションアップと、離職率の低減を図れているそうです。
もちろん、現地の人を経営層に登用する場合は、自社のDNAをしっかりと伝えるなど、十分な工夫が必要になります。その上で、ローカル人材の活用が最大の鍵になりそうです。企業文化など根深いものが絡まりあっていることもあり、「分かっちゃいるけど……」といったように、口で言うほど簡単なものではないのは間違いなさそうです。
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