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Appleが証明した企業DNAの力(4/5 ページ)

一橋大学ビジネス・スクール教授の名和高司氏は、スマート・リーンというキーワードから日本企業ならではの変革の方法論をひもとく。

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「イノベーションの<4+1>Box」


イノベーションの<4+1>Box(出典:ダイヤモンド社 『学習優位の経営』)

 この図を踏まえたうえで、名和氏はAppleのiPodの成功はスティーブ・ジョブスCEOの天才的な才能によってのみ達成できたのではないと説明する。

 「ジョブス氏は、Appleに経営者として返り咲いたくと、かつての黄金時代を築いたかつての同僚、スタッフたちを呼び戻したそうです。かつてユーザーのインタフェースにとことんこだわるモノづくりをしてきた人たちをです。そこからAppleの攻勢が開始されました。日本企業の中には、『うちの会社にDNAなんてない』と答える人がいますが、DNAのない企業などありません。わたしはパナソニックのコンサルティングを行ったときも、同社のDNAについて社内の人たちと3カ月間研究をしました」と名和氏は話す。

 

思考と実践を支えるメビウス運動

 では、重要な組織DNAが組み込まれたマトリックスをどのように活用すれば、スマート・リーンのイノベーションが生まれるのか。もちろん、これは日本企業が自力でイノベーションを実現する試行錯誤の作業だと認識すべきだ。

 名和氏によると、右上の顧客接点から中央の成長エンジンを通過して、組織DNAへと向かい、顧客洞察へと上昇して再び成長エンジンを通って、事業現場に向かうという連続した思考と実践を繰り返すことだという。


(出典:ダイヤモンド社 『学習優位の経営』)

メビウス運動

 「初代iPodが生まれた時点を当てはめてみると次のようになります。顧客接点では、顧客には既存プレーヤーに対する不満がありました。組織DNAでそのことを踏まえたうえでユーザーインタフェースにこだわり抜くことを徹底します。その独自のDNAのフィルターを通した後に『ライブラリをすべてポケットに入れて持ち出せる』ことが新たなブレークスルーを起こす、という確信が生まれます。これが独自の顧客に対する洞察になるわけですね。そして事業現場では、ハードからソフトまですべてをシステムとして統合することを徹底していくのです。この一連の思考と実践という思考錯誤の流れをわたしはメビウス運動と呼んでいます」(名和氏)

 右上から左下に流れ、左上に上昇して……という流れを線でつなぐと確かにメビウスの輪のようになる。メビウスの輪の形を文字にすると無限大を表す。企業は存続している限り、このメビウス運動をとめられないということなのだろう。

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