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マーク・ハードの場合伴大作「フクロウのまなざし」(2/4 ページ)

この夏に注目すべき事件が起きた。今後のICT業界の方向性を決める重要な要素を含んでいるのでちょっと書いておこう。

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Oracle側の止むにやまれぬ事情

 マーク・ハード氏が受け取った退職金およびストックオプションを行使して受け取った金額の合計は諸説あるが、IDGの報道を参考にすると数十億円に上る。これだけ手厚い退職金を貰えば、通常ライバル企業に即座に移るリスクを犯したりはしない。

 そのような一般に考えられる常識を無視し、訴訟リスクを承知の上で、Oracleのラリー・エリソン氏があえてマーク・ハード氏を招へいしたのはなぜだろうか。

、そこにはOracleが抱える深刻な問題とそれを解決できる唯一の人物として、マーク・ハード氏に頼らざるを得ないOracleの事情が垣間見える。

 世界最大の企業向けソフトウエアベンダーOracleの創業者であり、実質上のオーナーであるラリー・エリソン氏は、自身、People Softwareをはじめとして過去に数多くの企業を買収し、Oracleを世界一の座に押し上げた経験を持っている。買収後の企業統合、統治を成し遂げることの困難さを当然熟知している。

 また、彼は2009年、HPと熾烈なオーペン系システム・ベンダーの主導権争いを繰り広げてきたSun Microsystemsも買収した。これは、当時経営危機に陥っていたサンを誰が買収するかで誰もがIBMにと予測する中、突然、買収合戦に参戦し、たちまち同社を買収してしまった。

 Oarcleは長年Sunの良きライバルであり、マーク・ハード氏がCEOを務めたHPと友好関係にあった。HPの掲げるオープンシステムの核にOracle製品があったことは誰もが認めている。Sunを買収すること、すなわち、ハードウエア・ビジネスに参入することはこれまで築き上げたHPとの関係に亀裂を生じさせかねないことは明白だった。

 事実、データウエアハウス専用機としておととし発表した「Exadata」は当初、HPに委託した製品だったが、今年発表された次世代製品はSunが開発、生産したものに置き換わった。

 いまだに僕はOracleがSunを買収した理由が理解できないのだが、1つだけ分かっていることは、エリソン氏がいまだ経験したことのないハードウエアベンダーのビジネスに戸惑っているということだ。

 Oracleが後ろ盾になったことから、一時の混乱からは回復したが、いまだにSunの業績は往時の輝きを取り戻せない状態だ。確かに「Exadata」は売れているが、そのほかの製品は相変わらず低調だ。調査会社が発表するベンダー各社の出荷状況では大手で唯一前年を下回っている。

 この状況を打破するため、エリソン氏は混乱の極地にあったHPを救ったマーク・ハード氏にハードウエア部門の指揮を委ねたに違いない。

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