マーク・ハードの場合:伴大作「フクロウのまなざし」(4/4 ページ)
この夏に注目すべき事件が起きた。今後のICT業界の方向性を決める重要な要素を含んでいるのでちょっと書いておこう。
この大波の正体
コンピュータベンダーが買収や合併で減少するという現象、その一方でオープン系のさまざまなソリューションが提供される、つまり、パブリックなソリューションが増加するという現象、クラウド・コンピューティングに代表されるインフラ化は一見して、それぞれ独立し、何の関係もないと思われるかもしれない。
しかし、これらの現象はユーザーの特異性を許容しなくなるという点で共通している。ベンダーが減少するという事は、それ自体プラットフォーム選定の許容範囲が狭まる事を意味する。
オープン系のソリューション・サービスの増加はタダ、或いは安価なサービス提供でユーザーに満足をもたらす。
また、クラウドのようにインフラ化は、受けるサービス・パターンが限られている点でもユーザーのユニークネスを受け入れない代わりに、安価で手軽なシステム構築を容易にする。
つまり、これら一連の動きは「コスト低下」という点で共通している。その恩恵は単にサービスを受けるエンドユーザーに限られた話ではなく、企業ユーザーのシステム構築、運用コストが劇的に低下する、新しいサービスを提供することにより、さらなる成長を成し遂げることを可能にする。
コンピュータでさまざまな処理が行われる現象は今後ますますわれわれの生活の隅々にまで行き渡るのは疑いのない事実だ。つまり、コンピュータと通信が水道や電気のような「生活インフラ」としての性格を強くするという意味だ。
その場合、当然の話だが、誰もが使える低廉で安定したサービスが求められることは今さら言うまでもない。かつてのように一部の特権階級のみが使うことを許されるものではないのだから、操作も少しの学習で誰もが使えるようにならなければいけない。
全く異なって見える三つのトレンドもそのような視点からみると同じ方向を向いていることが解っていただけるだろう。
さて、今後の流れだが、既にIBM、HP、Oracleの3社はすべてのハード、ソフトを自社でそろえるフルラインアップへの動きを加速させている。それ以外のDELLやEMC、Cisco、マイクロソフトは一部で大手と手を結ぶ、或いは自分の得意分野を生かし連携を深める方向に動いている。つまり、今後はユーザーのさらなる囲い込みが一層進むのだ。
このような世界的な潮流から取り残された日本企業の今後の動きを注視したい。
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