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円高でも負けない企業に伴大作「フクロウの眼差し」(2/3 ページ)

現在進行中の円高は95年のそれと現象面では似ているが、当時と現在とでは大きく違う。まず、世界の経済事情が明らかに異なっている。

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 米国が金融帝国として、生き残っているのは疑いない事実だ。しかし、それは世界中の金持ちや金融機関が自らの資金の運用の場として米国を選んでいるからだ。米国のファンドに資金を委託していて損害が続くようなら、彼らは容赦なく資金を引き上げるだろう。そうなれば、ドルは一挙に暴落する。今回の円高はこの構図と考えるのが自然だ。

 しかし、日本円は当面の逃避先でしかなく、やがて、彼らは高い利回りを目指し、乗り換える。それが資源であり、食料だ。既に、鉱物、食料資源は高騰を始めている。この先、さらに上昇するかもしれない。

 資金の逃避先から投資先への動きを考えると、世界経済の構造変化を考慮する必要がある。世界経済の中心が欧米だったのは20世紀以前の話だ。人口12億を擁する「中国」、それに追いつこうとしている「インド」、急速に地域としての纏まりを見せつつある東南アジア諸国、ブラジル、ロシアなどのBRICs諸国の経済発展は目覚しい。

 彼らに共通している特徴は人口の多さとそれに伴う国内市場の大きさだ。確かに経済基盤は欧米先進国と比べると脆弱ではあるが、今後の成長の余地は先進国と比較にならない程大きい。先進国と開発途上国とを乗せた天秤は次第に先進国の方に傾いている。

勝ち抜けていく企業

 伝統的な産業ではすべてといっていいほど、M&Aが世界的に進行している。鉄鉱石やボーキサイト、石炭などの鉱業から、製鉄、薬品、飛行機や自動車等輸送用機械、通信、インフラ、薬品や製薬、果ては金融まで、すべての産業に及んでいると言える。

 日本の企業はこの世界的な流れに明らかに取り残されている。その結果、国内市場にばかり過度に頼るようになっている。この状態は「鎖国」あるいは「ガラパゴス」状態といえる。

 もちろん、世界の潮流に取り残されないように海外の企業を積極的に買収している企業がないわけではない。世界中に知られるブランド、ToyotaやHonda、Sonyに対し、Westinghouseを買収した東芝は原子力開発で世界のイニシアティブを確保した。ただし、東芝は数少ない例外にすぎない。決して主流ではない。

 なぜ日本の企業は海外の大手企業のように買収により規模の利益を追求しようとしないのだろう。それには、日本企業独特の理屈が背景にある。自社開発を重視するとか、伝統的な企業風土、文化を守りたいとがおおかたの理由だ。つまり、「持ちつ持たれつ」の馴れ合い経済から脱却する気がないのだ。そのような企業が、厳しい世界的な構造変化を乗り切れるのだろうか。生き残りの鍵は前記した開発途上国での存在感が重要なのは誰でも理解できる話のはずなのだが。

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