※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
19世紀後半の欧州を生きたドイツの哲学者、フリードリヒ・ニーチェ。ニーチェについては、これまでに多くの書籍や資料などで紹介されてきているが、その人となりに関しては「暗い」「重い」「難解」といったイメージが付きまとう。なぜか?
その1つの原因として、あの悪名高いアドルフ・ヒトラー率いるナチスの思想の土台となったニヒリズムとの結び付きによるところが大きいのではないだろうか。著者によると、そもそもニーチェはニヒリズムの哲学者ではなく、むしろニヒリズムを批判していた。ナチスがニーチェの文章の断片を自分たちの都合が良いように歪曲したのに過ぎないという。
また、後世の学者たちがニーチェの思想の暗い面をあまりにも強調し過ぎた点も、上述したニーチェの印象につながっているとしている。
本書は、そうした従来の負のイメージから開放し、新たな(あるいは、本来の)ニーチェの姿を示す1冊といえよう。ニーチェの半生を紹介するとともに、代表的な作品やフレーズ(「神は死んだ」など)に対して、初級者でも分かりやすく、できるだけ平易な表現で解説している。
本書はそのタイトル通り、ニーチェを知る上での入門的な手引きにはなり得るが、ニーチェを深く理解するためには、ほかの解説書や評論も目を通す必要があると著者は語る。著者の言葉を借りれば、本書は「お新香」に過ぎず、ニーチェ食堂には「肉」や「煮込み」もあるのだという。
著者はこうも言う。「けれども、お新香には体に良い乳酸菌が含まれている」――。
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
関連記事
- 人間の本質――「ニーチェの言葉」
なぜ今、ニーチェが脚光を浴びるのか。 - 然るべき模範に――「ヨーロッパ戦後史」
混沌とする社会情勢において全世界が優れた先導者を求めている。この21世紀をけん引するのは誰か。アメリカでも中国でもない、ほかならぬヨーロッパである。 - 70年代を壮絶に生きた者たちへ――「歳月の鉛」
三島由紀夫の割腹自殺、あさま山荘事件の勃発、金脈問題による田中角栄の辞任……。激動の1970年代を東大で過ごした著者・四方田犬彦が見てきたものとは? - 真の問題とは何か――「論点思考」
企業は数え切れないほど多くの問題を抱えており、それらをすべて解決するのは困難である。重要なのは企業にとって真の問題を見極め、それに対して施策を打っていくことである。 - あらゆる戦略立案に通じる――「ランチェスター思考 競争戦略の基礎」
航空工学者のランチェスターによる軍事作戦の方程式「ランチェスターの法則」が世に提起されて間もなく100年になる。これを基に考案された経営戦略理論は、松下幸之助をはじめ日本の多くの経営者に支持されたという。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.